「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」作品集

祖母への手紙

お婆ちゃんへ 叔母からの伝言

伊藤 輝美(静岡県浜松市)44歳

お婆ちゃんが亡くなって、もう三年になりますね。
生前、私が出掛ける時、「行ってきます」「行ってこいや」と優しい口調で言ってくれた声が、私の耳に心地よく残っています。
私は、先日、故郷の新潟を訪れ、お婆ちゃんの娘、叔母に会ってきましたよ。
叔母は、お婆ちゃんに、生きている間に、謝りたい事があったと言いました。
「私は、生まれつき体が不自由で、幼少の頃から、障害者施設で育ったから、お盆やお正月位しか、お婆ちゃんとは、ゆっくり話が出来なかった。たまに帰ると、普段、言えない愚痴や弱音を吐いていたの。そんな時、『私、こんな体で生まれてきて苦労するんだったら、生んでくれなくてよかった』と言ってしまった。その時の、お婆ちゃんの、何ともいえない、悲しい表情が忘れられない」
母親として、どういう言葉をかけていいのか分からなかったのか、お婆ちゃんは、ただ背中をさすって、「すまんな」と一言だけ言ったそうです。
「その後、謝る事もなく、今まできたから、あの時、お婆ちゃんが、どういう気持ちでいたのか、今となっては、聞くことも出来ず、ただただ後悔だけが残る」と、言ったのです。
そんな矢先、私の父が、遺品整理をしていた時、一枚の便せんを見つけたそうです。
そこには、あの時、言えなかった言葉が書いてあったというのです。
「お前が苦労していることは、私には、痛いほど分かっているよ。だけど、この世に命を授けてもらって、不自由な体で生まれてきて、思うようにいかない事が多いと思うけど、健康な人でも何かしらの苦労はつきものだよ、自分の置かれている状況の中で、物事を、どう捉えるかで人生が良い方向にも、悪い方向にも向いていくんだよ。出来れば、お前には、物事を、前向きに捉えて生きていって欲しい」
母親としての、精一杯の応援エールだったのでは、と私は思いました。
そんな叔母も、今では大好きな歌手のコンサートに連れて行ってもらう事が最高の幸せだって! 
「人生を、楽しく、豊かに生きてゆく事の気付きを、教えてくれ、私を、生んでくれて、有り難う!」だって。お婆ちゃん良かったね!


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