物置の整理をしていたら昔のアルバムを見つけた。写っているのは私や妹ばかり。お父さんが写っているのはほんの数枚しか無かった

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今は亡き父へ

言えなかった言葉

お父さんへ

その時は突然にやって来ましたね。当日の朝はおばあちゃんの月命日だった。いつものように、自分の部屋の布団の上げ下ろしを、していたお父さん。私が仕事に行って、帰ってきた時には咳込んで体調が悪そうだった……

それでも救急車じゃ無くて、母親と一緒にタクシーでかかりつけの病院に行ったので、少し入院すれば、また退院ができるものだと思っていた。実際、何度かそのような事があったから、今回もそうだと思っていた。いや、思いたかった。と言うのが正直な所だよ。しかしその期待は無駄だったんだ。お父さんは、おばあちゃんの月命日の翌日に亡くなった。天国に行っちゃった。

病院の先生からは家族に「先が短いです」と告げられていたけど、こんなに急だとは……お父さんが亡くなった事に、家族は勿論びっくりした。それにまして、前日の法事で家に来たお坊さんも「えー、どうして……。昨日挨拶した時は、そんな素振りは無かったですよ」本当にびっくりしていたよ。当然過ぎる位の反応だと思う。

生前お父さんとは、余り話をしていなかったね。色々話しかけてくれたりしたけど、私がろくに返事をしていなかった事もあったね。私と妹が子供の頃、お父さんとお母さんは、色々の所に遊びに連れて行ってくれたね。お父さん、余り体が丈夫じゃないのに……ありがとう。

お通夜の時、私が火の番をしていて、うとうとしそうになった時に、しっかり名前を三回呼んでくれたね。お父さん。ちゃんと聞こえていたよ。姿は見えなかったけど傍にいたんだね。

葬式が終わって物置の整理をしていたら昔のアルバムを見つけた。写っているのは私や妹ばかり。たまにお母さんや、おばあちゃんが写っていたっけ……お父さんが写っているのはほんの数枚しか無かった。

お父さん、ありがとう。家族にいっぱい愛情を注いでくれて。私は今、凄く後悔している事がある。生前に何故、ちゃんとお父さんに「ありがとう」と言ってあげなかったのかなと思っている。もし言ったら、お父さんはどう思っただろう。

今年も後数か月で八月が来るよ。亡くなってからちょうど一年が経つね。ねぇ、お父さん。後何十年か数年後になるかは分からないけど……私がそちら側に行った時には、もう少し話をしよう。

その時には必ず「ありがとう」の言葉と気持ちを伝えたいと思う。それまでは、暫しのお別れですね。それでは、また会う日まで。

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。

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