「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」作品集

母への手紙

また来るネ、母の日……

伊藤 伸江(千葉県佐倉市)61歳

拝啓 天国の母ちゃんへ
あなたは、四十二歳でこの世を去りました。
私はその時八歳でした。たった八年間しか私は、あなたと暮らしたことがありません。
だから私は、あなたの事は覚えていません。
でも私の中のあなたの存在は大きく、いつも私を見守っていてくれているのを感じています。
私は、四十二歳の時に思いました。母の年を越えたと……。
その時私は、娘二人の子育てで戸惑うことばかりでした。母の愛情をよく知らない私は、娘達にどう対処してあげたらいいのか戸惑うこともありました。
今娘達は、結婚して母になり、職業をもちながら子育てしています。
私は、時々思うことがあります。私の人生は、あなたができなかった事をやらせてもらっているのではないかと。
あなたは、最初の結婚生活を東京で送り、二十歳代で未亡人となり苦労の多い人生だったと聞いたことがあります。
四十二歳の若さで人生が終わったのは、とてもくやしかった事でしょう。
私は、子どもの頃からいつも思っていました。「負けたくない。母親が死んだのは私のせいではない」って。
母親がいなくても生きていける強い子だから神様はそうしたんじゃないのって、だれかに言われた事があります。私はその宿命を恨んだこともあります。
でも、運は自分で切り開いていくものだということにも気づきました。
社会人になり、結婚、出産、いろんな状況に出会い迷うこともありました。
でもその時、私はあなたが後押ししてくれている勇気と力を感じることができ、不安感をそれほどもたずに前進してこれた事を感謝しています。
今、私はとても幸せです。
去年あなたにとっては曾孫が二人誕生しました。あなたの生きていた証は繋がっています。
私はもう少しこの孫達の成長を見ていたいのでこの世でがんばります。
あの世で会ったら、娘の私の方が老けているわね。
あなたが好きだった夏みかん食べながらこの手紙書きました。


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