「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」作品集

子どもたちへの手紙

博子さんへ

染矢 美智子(宮崎県延岡市)69歳

あなたが逝って四年目の春が廻ってきました。
あなたのポトスは、今年も春の到来を歓迎するかのように、各部屋の壁際を柔らかに這い廻っています。
あなたが残した植物の手入れをする度に、癌の宣告を受け、闘病の最中にも植物の世話をしていた あなたの痩せた後姿が頭をよぎり、切なく悲しく、しばらくは涙する日々が続きました。
あなたの訃報に駆けつけて下さった方々、通夜に参列頂いた多くの方々の姿に、私達の知らなかったあなたの交友関係を初めて知り、あなたを偲んでおりました。
そんな折、お悔やみに来て下さるあなたのお友達から、あなたの生前の思い出話を聞くことができました。
三人の弟の姉であるあなたは、自分の友達だけでなく、弟の友達からも慕われていた頼りになるお姉さんだったのですね。お弁当の差し入れ、就職のお世話、悩み事の相談にも乗っていたと聞き
博子さんへました。親なのに気づくこともできなかった娘像に、お父さんと泣いてしまいました。
早くに結婚して親元を離れ、二人の子供を授かった後に離婚したあなた。
ハラハラする親の心配をよそに気ままに暮らす、自由奔放な一人娘だとばかり思っていてごめんなさいね。
二年前には、あなた達が暮らしていたアパートの上の階の年配のご夫婦が線香をあげに来られました。子供達が元気でいるのか気になっている様子でした。私達の子供に認知し、あなたの弟たちと兄弟になっていることをお話したら、安心したように涙ぐまれていましたよ。
人より早く結婚し子供が授かったあなたは、自分の癌の状態を受け入れたとき、「子供が大きくなっていてよかった」とつぶやいて、泣きましたね。
あなたの子供、元樹も夕香子も現実をしっかり見据えていますよ。元樹は料理学校に行き直し、今は料理人として修業中。高校三年生だった夕香子は、病院に勤めながら介護の資格を取得中です。
その姿を見ていると、あなたはあの姉ごっぷりで周りのお友達を癒し、私達には形見の二人の孫を残して、四十年の月日をあなたなりに堪能し、走って、逝ってしまったと思えるようになりました。
夜勤から夕香子がもうすぐ帰ってきますよ。「ただいまー」ってあなたそっくりの声でね。
それではまたね……。
母より


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