「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」作品集

友への手紙

志田先生へ

近藤 里枝(北海道北広島市)39歳

先生、奥さん、天国での暮らしは楽しいですか?
先生と奥さんの事だからそちらでも忙しく人助けなさっているのでしょうね。
「人間にとっての一番の幸せは誰かの役に立てる事だよ」
と、昔おっしゃっていましたね。
「年をとる事がなぜ淋しいのかと言うと、もう年だからと回りも遠慮してたのまれ事も少なくなっていく事、そうやって少しずつ人の役に立てる機会が少なくなっていく事で、自分に自信がもてなくなっていく事なんだよ」
と言っていましたね。
あの頃は本当に何げなく感じていた先生と奥さんの存在。
でもあれから二十年近く時が流れたのに全く色あせません。
本当の優しさ、本当の愛情はたとえ体を亡くしても消えないものなんですね。
私が出会った頃、先生はもう学校の先生を定年退職されていて、
「もう年だから欲しい物は何もないんだよ。毎日一つでも良いから回りの役に立てる事が私の願いなんだよ」
と言っていましたね。
「それが私の願い、それが私の喜びだよ」
と教えて下さいましたね。
見た目は普通のおじいちゃんとおばあちゃんなのに、誰よりも素直で、誰よりも無邪気で、子供みたいに目がキラキラ輝いていて、どんな小さな事でも喜んで下さいましたね。
あの頃は私もまだ子供で、どこにでもこういう人はいるのかと勘違いしていましたが、大人になっても、先生ほど素直で奥さんより優しい人にはまだ出会っていません。
「人間にとって一番大切なのは回りにどう見られるかではなくて心の中なんだよ。大切なのは形ではなくて中身なんだよ」
と言ってくれた先生。
「誰にも気付かれなくても、あなたの行動がどこかで誰かの役に立っているのなら、それだけで人は幸せになれるのよ」
と言って下さった奥さん。
いつか二人のように年を取りたい。それが私の願いです。


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