「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」作品集

祖父への手紙

あなたの孫です

ぴっぴちゃん(東京都中野区)29歳

私は、あなたの顔を写真でしか見たことがありません。
あなたは私が母のお腹の中にいる時に亡くなってしまったから。
ですが、祖母や母からお話はよく伺っています。
どちらかというと家族と出掛けることが少なかったあなたが、幼かった私の姉を連れて二人だけで動物園に行ったこと。無口だったこと。少し亭主関白だったこと。そして頑固だってこと。これは母に受け継がれています。
色々な話を聞きましたが、一番心に残っているのはこのお話です。
そんなにお給料が多かった訳ではないのに、毎日休むことなく誰より早く会社に出社して、暑い夏には窓を開けて涼しい部屋に、雪の降る寒い日にはストーブに火を入れ、暖かな部屋に皆を迎えていたそうですね。
そして、あなたのお通夜が行われた日のこと。家族でこじんまりとお通夜を行っていると、あなたの人柄を偲んで社長を含めた社員全員が仕事を中断して駆けつけてくださったそうですね。
祖母は涙が込み上げてきたそうです。その様子、棺の中から見えていたでしょうか。
あなた亡き後、社長さんが祖母に大変良くしてくださり、そのおかげで祖母は九十歳を迎えた今も何不自由なく元気に暮らしています。
そして、私は尊敬している人を聞かれると迷うことなく、あなたの名前を挙げています。
私にもあなたと同じ血が流れています。私もあなたのような人になれるでしょうか。
あなたの御墓は遠いけれど、近いうちに会いに行きます。
追伸 祖母のことは任せてください。曾孫も産まれ、九十歳にしてはなかなか元気です。話すスピードだって若者に負けていません。どうか安心してください。


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