「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」作品集

父への手紙

父の遺言

泉 かおり(徳島県鳴門市)44歳

母の後を追うように逝ってしまったお父さん、お母さんにはもう会えましたか?お父さんの遺言、みんなで守っているから安心してね。
数年前、病気で死期を悟った父は、私たち兄弟や孫たちにあれこれと遺言をしました。
それは涙なしでは聞けないものから、思わず笑ってしまうものまでいろいろです。
「世話になった」
「みんな、けんかせんと仲良うせえよ」
「泣くんは一回でええ、後は笑いよってくれ」
などは、家族全員が涙しながら聞いたものです。
ところが、
「わしは湿っぽいのはすかん。葬式のときは明るうに演歌(村田英雄)をずっと流しといてくれ。ほんで出棺の時は笑って見送ってくれよ」
そう言ったときには、いかにもにぎやか好きの父らしくて、神妙な雰囲気の病室が一変、爆笑の渦に包まれました。
今思えば、最期まで私たちを笑わせて悲しみを和らげようとした父の心遣いだったのかもしれません。
父のお葬式は希望通りにぎやかなものになりました。
会場は村田英雄さんの曲で包まれ、出棺時には、父の十八番「無法松の一生」が大音量で流されました。
誰もが「武ちゃんらしい、いい葬式じゃ」と泣きながら笑って見送ってくれました。
父も喜んでいたでしょう。
遺言は故人と遺族の絆をさらに強くしてくれます。決して最期の言葉ではなく、遺された者への希望と未来への道しるべになると思います。
「お父さん、お父さんの遺言通り、みんな仲良くやってるよ。安心してね」


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