「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」作品集

祖母への手紙

幻の祖母へ

平岡 なをさん(54歳) 神奈川県横浜市

おばあちゃん、私は幼い頃からセピア色の写真の中でしかあなたを知りません。明治時代に写された家族写真の中のあなたは、まだ若々しく、まさかその先、四十代でこの世を去ってしまうなど誰も想像できないくらい健やかで慈愛に満ちた表情を浮かべ、凛とした美しささえ放っています。
あなたが亡くなったときの話は、私が物心ついた頃からずっと、あなたの娘である私の母から詳しく聞かされてきました。
時は昭和二十年。その頃、北海道室蘭市に住んでいたあなたは、銃後の妻として立派に一家を守っていました。
七月十五日。その日の室蘭は、前日から空襲があり、すでに物々しい様子でしたが、あなたは二人の子どもを抱え、気丈に振舞っていました。そこへまた空襲警報が鳴り響いたので、あなたは、私の母とその弟を連れて防空壕へと急ぎました。ところが、途中で大事な位牌を忘れてきたことを思い出して、あなただけ、それを取りに家へと引き返したのです。そして運悪く、自宅の傍に室蘭沖からの艦砲射撃の砲弾が着弾。あなたは一瞬にして散ってしまいました。
爆撃がおさまった後、跡形もなく更地のようになってしまった家の玄関付近にあなたは埋もれていたといいます。遺体を探しあてたのは、当時十六歳だった私の母でした。出てきたあなたの手のぬくもりを母はずっと覚えています。
おばあちゃん、その母も今は八十三歳になりますが、おかげ様で健在です。そして毎日、あなたの写真に手を合わせています。私は年齢を重ねるにつれ、自分もあなたのDNAを受け継いでいることを強く感じるようになりました。

おばあちゃん、この世に母をのこしてくれてありがとうございます。
母がいるから今の私がある。
こうやって命は繋がっているのですね。
感謝を込めてあなたが好きだったキンセンカの花を捧げます。



あなたの孫より

【受賞後のお便りより】
この度は私の排い作品を銅賞にお選び頂き心より御礼申し上げます。

日頃から祖母へ抱いていた想いを吐露する機会に恵まれたことは私にとって大きな幸いでした。

今回の賞を励みに、これからも与えられた「生」を、自分なりに精一杯歩んでいきたいと思います。

本当にありがとうございました。
暑さ厳しき折、皆様くれぐれもご自愛ください。


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