「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」作品集

母への手紙

母さんから学んだ事

栄 直美さん(48歳) 愛媛県松山市

「『いただきます』は命を頂きますって意味なんよ。」
子供の頃聞いた母さんの言葉を時々思い出します。
「外国の人はフォークやおはしを縦に並べるやろ、おはしを横に並べるのは日本人だけなんよ。あれは結界を意味していておはしの向う側は神様ご先祖様の世界。みんなに感謝して手を合わせるんよ。」
食が細く好き嫌いの激しかった私に優しく悟すように教えてくれましたね。
むずかしくてわからない所もあったけれどそれ以来何でも食べられるようになりました。
女手一つで私を育てた母さんはいつも忙しくてあまり遊んでもらった記憶はないけれど、母さんを思い出す時そこにはいつも食事風景がある気がします。

お正月我家のお雑煮にはおもちが入ってなかったよね。
代わりに小麦粉で作った団子。
元旦の午前中だけが母さんの唯一の休日。
いつも目が覚めると隣の布団はもぬけのカラ。
けれどその日だけは静かな寝息をたてる母さんがいました。
起こさないようにそーっと母さんの布団にもぐり込み、
再び眠りにつくのが最高にしあわせでした。
次目覚めると台所でお雑煮を作る母さんの姿。
まっ白な割烹着がとてもまぶしかったよ。
「お天気が良くてみんなが健康で良いお正月だねー。」
しあわせそうな母さんの顔を今でも覚えています。
おせちも無いおもちも無い訪れる人も無い。
無い無いづくしの我家のお正月は人から見ると侘しいけれど、母さんの笑顔をみていると私はとってもしあわせな気持ちになれました。
考えてみると母さんは人生を楽しむ天才だったかもしれませんね。
つらい時、悲しい時、母さんの笑顔を思い出します。
するとたちまち元気がわいてきます。

「いただきます。」
「ごちそう様。」

 母さん、あなたの孫たちはきちんと手を合わせる良い子に成長していますよ。


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