出版紹介 医療・介護連携で実現する高齢者のための地域医療、他2冊


高齢者、終活関連の書籍を3冊紹介する。

医療・介護連携で実現する高齢者のための地域医療(佐藤 貴久)

高齢者医療と、介護は対象者が同じであることから連携をしていると思われがちであるが、実際にはその連携は不自然なほどにぎくしゃくとしている。その理由の一つが、介護制度、医療制度ともに毎年のように法令や制度が変わり、お互いに相手方の事情がよくわからなくなっていることにある。しかし、対象者(患者・被介護者)及びその家族にそれらをうまく活用し効率よく連携するように立ち回ってもらうわけにいかない。

そういった中で、医師の視点から介護制度について詳しく解説をし、統計や実例を交えながら分かりやすく解説したのがこの本である。患者を家に帰すのが高齢者医療の大前提であるが、そのためには地域医療が有効に稼働していなければ対象者は安心して家に帰れない。地域ごとに、介護予防に尽力できる医療従事者やボランティア要員を育てていくことが重要で、そのために医師がより積極的に関わっていく必要があると筆者は説く。

また、高齢者医療の実態についても分かりやすく解説している。介護従事者にとって、「お医者様」のされることだからと、医療でどんなことをされているのか知らないで良い訳がない。連携をするためには互いに相手のことを知ることが重要だ。

一方で、本書はあくまで医師の視点からの著書であり、介護側で抱える重大な問題の数々、介護施設の経営や、賃金、虐待、家族の負担といった問題については触れられていない。抱く理想を、複雑な現実のなかでどう実現していくのか。より深く考えさせられることになった。

とはいえ、高齢者医療と介護に関わる方にはぜひ一読頂きたい良書である。

https://www.amazon.co.jp/dp/4344913205/

人生を破滅に導く「介護破産」(杢野 暉尚)

上述の「地域医療」が理想を描く良書とすれば、本書は現実の姿を写した本と言える。ただし、「介護破産」と大きく銘打っている割には、そういった生々しい事例が具体的かつ写実的に書かれているかといえば、それほどの内容ではない。実際には、施設や制度について丁寧に説明をしている本である。タイトルとのギャップが大きいと感じた。

1章「親の介護がきっかけで家計が崩壊」2章「介護にかかる費用は月20万円以上」においては、個別具体的な事例を期待したが、実際にはモデルケースではないか?と思われるような内容の紹介で、どちらかといえば、統計データなどを中心になるべく全体像を具体的な数字を用いて示そうとしている。本書の著者が経営者であるためか、マーケットの説明が中心である。逆に言えば、実際に介護が必要な親がいる人などにとって、この部分を読みとおすのはかなり辛いと思われる。介護が必要な人は、「自分は何を選択すればいいのか」だけが知りたいのである。

本書の読み方のおすすめは4章「経済的な負担は大幅に軽減可能」から読むことである。ここには様々な軽減事例が記載してある。しかも、かなり網羅的に書いてあり、通常の週刊誌などでは得にくい情報が分かりやすくかいてある。しかし、当然その中で自分の親が当てはまる事例というのは少ない。そこで次に5章「資金計画に基づいた選択で「介護破産」を回避する」の章をよんでいただきたい。ここには要介護度などの程度によって選ばれるサービス、特に多くの人が関わるであろう在宅介護について詳しく書いてある。実際に参考になる部分は多いだろう。

もし在宅では対応できない、となった時には、3章「複雑な介護サービス・施設の仕組みが問題」に、様々な施設のことが書いてあるのでそこを参考にすれば良い。

本書では「施設介護なら一人20万、両親二人なら40万」ということが繰り返し書いてあるが、これには筆者が施設の運営者であることを差し引いて考える必要がある。実際、親の介護に一人20万、二人40万を支払うというのは、親の年金を組み入れるにしても、大部分の国民にとって相当な負担である。確かに介護付有料老人ホームに入れば、月に15万円程度の負担を覚悟する必要はあるが、これは家賃や食費などもすべて含んだ費用であり、その大部分は施設に入らなくてもかかるお金である。また、グループホームなどであればもう少し安価に済む可能性が高い。いたずらに「介護破産」を煽る一方で、「月20万」を刷り込むことには矛盾を感じた。

また、実際に介護の必要な親にとって、一番知りたいのは「その情報がどこにあるのか?」といったことだ。本書には図表が多く記載してあるが、その一部には出典・引用のないものがある。また、巻末に参考文献や関係省庁・制度の出典についてのまとめがあれば便利に使えたであろう。

これから親を介護するための準備について真剣に勉強したい人がまず手に取る本としては良い内容となっているが、タイトルと本文の乖離があることや、巻末付録(参考文献・出典)の記載が不足しているなど、編集側の行き届かなさを感じた本であった。

https://www.amazon.co.jp/dp/4344912357/

ラスト・ディナー(老寿サナトリウム)

大阪にある療養病床「老寿サナトリウム」で実際にあった、看取りの事例を紹介した本である。いずれも、味わい深い、人の最期について考えさせられるストーリーとなっている。

一方で、この本を手に取る人は一体どういう人であろう?と考えさせられた。仮に自分の家族の最期が迫ってるとして、果たしてこの本を読みたいであろうか?当然であるが、この8人はすべてお亡くなりになる。自分の家族の死を覚悟していたとしても、この本を手にとるのはややつらい。

といって、大切な人の死後にこの本を手に取ったとしてもどうだろうか。もう看取りの時を繰り返すことはできない。「もっとああしてあげればよかった」という後悔だけが募るでのはないだろうか。

もちろん、身近な人の死が迫っていない時に、この本を手にとって読む理由は特にない。人の死や別れについての本であれば、これに限らず、世の中に無数にあるからだ。

唯一考えられる読者層としては、具体的にこの「老寿サナトリウム」に入るかどうか迷っている人、あるいは、すでに入った人、ぐらいであろう。

どうしても強く強く自分の家族の最後をイメージして、何が出来るかを真剣に考え抜きたい人(すごく辛いと思うが)か、もしくはこの施設の検討をしている人以外は特に読む必要が無いのでは無いだろうか。

https://www.amazon.co.jp/dp/4344912322/

※ 本稿の記載にあたり、上記3冊の本について幻冬舎メディアコンサルティング社様による献本(各一部)を頂いていることを表明いたします。


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いい葬儀マガジン編集長 増澤

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