戸籍謄本は、氏名や生年月日、父母との続柄などの身分関係を記録した戸籍を、原本のまま転写した書類。戸籍をデータ管理するようになってからは、「戸籍全部事項証明書」とも呼ばれています。
家族が亡くなったあとは、相続や名義変更などさまざまな手続きで戸籍謄本の提出を求められます。この記事では、戸籍謄本の種類や取得方法、費用などをまとめて解説します。
戸籍謄本とは?戸籍内の身分関係を証明する書類
戸籍謄本とは、その戸籍に記載されている人全員の身分関係を証明する書類です。本籍地・氏名・生年月日・父母の氏名・出生や婚姻の情報など、戸籍に記載されているすべての項目が原本どおりに写されます。特定の一人だけを写した「戸籍抄本」と異なり、家族全員分の情報がまとめて記載される点が特徴です。
戸籍のデータ管理が進んだ現在、戸籍謄本の正式名称は「戸籍全部事項証明書」に変わりました。役所の窓口や証明書では新しい名称で案内されることもありますが、指しているものは同じです。本記事では読みやすさを優先して「戸籍謄本」に統一します。「戸籍謄本=戸籍全部事項証明書」と覚えておきましょう。
代表的な戸籍謄本の種類
ひとくちに戸籍謄本といっても、証明する範囲や戸籍の状態によっていくつかの種類に分かれます。死亡後の手続きでは複数の種類を求められることも多いため、まずは代表的な5種類の違いを押さえておきましょう。
戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
前述のとおり、戸籍に記載されている人全員の身分関係を証明する書類です。
戸籍抄本(戸籍個人事項証明書)
戸籍に記載されている一部の人だけの身分関係を証明する書類です。戸籍謄本と同様にデータ管理されており、正式名称は「戸籍個人事項証明書」です。必要な人の分だけを証明したいときに使います。
除籍謄本(除籍全部事項証明書)
婚姻・死亡・転籍などによって戸籍に記載されている人が全員いなくなると、戸籍は閉鎖されます。この閉鎖された戸籍について、身分関係の証明が必要になったときに取得するのが除籍謄本です。
「除籍全部事項証明書」とも呼ばれ、かつてその戸籍に入っていた人全員の事項が記載されています。
除籍抄本(除籍個人事項証明書)
婚姻・死亡・転籍などで全員が除籍となり閉鎖された戸籍のうち、一部の人だけの身分関係を証明する書類です。
改製原戸籍謄本
戸籍法の改正や戸籍のコンピュータ化によって、戸籍が新しい様式に作り替えられることがあります。改製原戸籍(かいせいげんこせき)とは、作り替えられる前の古い様式の戸籍のことです。出生から死亡までの戸籍をそろえる際に必要になる場合が多く、相続手続きでは欠かせません。
どんなときに戸籍謄本が必要?代表的な手続き

戸籍謄本が必要となる代表的な手続きは、次のとおりです。
家族が亡くなった後、最初にすべきことは死亡届の提出です。死亡届は、故人の本籍地・届出人の住所地・死亡地のいずれかの役所へ、死亡後7日以内に提出します。死亡届が受理されると戸籍謄本に死亡の事実が反映されるため、それ以降にさまざまな死後手続きを進めましょう。
- 健康保険の埋葬料・葬祭料の申請
- 遺族年金の申請
- 相続税の申請
- 不動産の相続登記
- 銀行預金の名義変更
- 自動車の所有権の名義変更
亡くなった人の戸籍謄本はいつから取れる?死亡届が反映されるまでの目安
死亡の事実が戸籍に記載されるのは、死亡届が受理されてからです。届出後、市区町村での処理を経て死亡日が戸籍に反映されるまで、おおむね1〜2週間ほどかかります。
「死亡の記載がある戸籍謄本」を急いで必要とする場合は、反映が完了しているかどうかを役所に確認してから請求すると確実です。特に、本籍地と届出先の役所が異なる場合は、反映までにさらに数日かかることがあります。
相続手続きで使う戸籍謄本は、「誰が相続人か」を証明するための書類です。そのため、故人の出生から死亡まで途切れなくわかる戸籍が必要になります。本籍を移している場合は、それぞれの役所から一生分の戸籍謄本を取り寄せなければならず、収集に手間がかかります。
亡くなった人の戸籍謄本はなぜ必要?出生から死亡まで必要な理由
相続手続きで出生から死亡までの戸籍が必要になるのは、「相続人が全員そろっているか」を確認するためです。
戸籍には、婚姻や離婚、養子縁組、認知といった身分の変動が記録されています。現在の戸籍だけでは、過去の結婚で生まれた子どもや、認知した子ども、養子などが見落とされるおそれがあります。出生時までさかのぼることで、はじめて相続人を確定でき、あとから相続人が判明して手続きがやり直しになるのを防げます。
亡くなった人の戸籍謄本を請求できるのは誰?
故人の戸籍謄本を請求できるのは、原則として配偶者または直系血族です。直系血族とは、故人の祖父母・父母・子・孫にあたる人です。
通常は、故人との関係を証明するために自分の戸籍謄本を取得したうえで、故人の戸籍謄本を請求します。郵送で取り寄せる場合、請求者自身の戸籍謄本はコピーで構いません。
直系血族以外の方が請求する場合は、直系血族からの委任状を提出したり、使用目的を申告したりする必要があります。
兄弟姉妹・甥姪・代理人が請求する場合の注意点
兄弟姉妹や甥姪は直系血族ではないため、原則としてそのままでは故人の戸籍謄本を請求できません。請求するには、相続手続きなど「戸籍が必要な正当な理由」を申請書に記載し、その理由を確認できる資料の提示を求められることがあります。
配偶者や直系血族が請求を委任する場合は、委任状と窓口に行く代理人の本人確認書類が必要です。請求する立場によって必要書類が異なるため、事前に役所へ確認しておくと安心です。
亡くなった人の戸籍謄本はどうやって取る?
戸籍謄本は、本籍地のある市区町村の役所で取得します。故人の最終的な本籍地の役所で「一生分の戸籍謄本をそろえたい」と伝えれば、そろえられる範囲の戸籍謄本を受け取れます。
故人が過去に本籍を移動している場合、1か所だけでは一生分の戸籍謄本はそろいません。最終的な本籍地の役所に、次の戸籍をどこで取得すればよいか尋ねると教えてもらえます。故人の本籍をさかのぼりながら、一生分の戸籍謄本をそろえましょう。
故人が引っ越しのたびに本籍を移していたり、婚姻・離婚で遠方に移動していたりすると、戸籍謄本を一式そろえるのは容易ではありません。遠方への移動が難しい場合や、平日に役所へ行く時間が取れない場合は、行政書士や司法書士などの専門家に依頼するのもひとつの方法です。費用はかかりますが、確実かつ効率的に手続きを進められます。
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2024年3月開始の広域交付なら本籍地以外の窓口でも取得できる
2024年(令和6年)3月1日から戸籍の「広域交付」が始まり、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍謄本を請求できるようになりました。本人・配偶者・父母や祖父母などの直系尊属・子や孫などの直系卑属であれば、遠方の本籍地の分も最寄りの役所でまとめて請求できます。
ただし、請求できるのは窓口に来た本人に限られ、郵送や代理人による請求はできません。また、マイナンバーカードや運転免許証など顔写真付きの本人確認書類が必要です。兄弟姉妹の戸籍は広域交付の対象外となる場合があるため、詳しい取り扱いは請求先の役所に確認しましょう。
本籍地がわからないときは住民票の除票・戸籍の附票で確認する
故人の本籍地がわからないときは、本籍地の記載を求めた「住民票の除票(じょひょう)」を取得すると確認できます。
住民票の除票は、亡くなって住民登録が抹消された人の住民票で、最後の住所地の役所で請求します。あわせて「戸籍の附票(ふひょう)」を取ると、その戸籍にいた間の住所の移り変わりもたどれます。まずは本籍地を特定し、そのうえで戸籍謄本の請求に進みましょう。
亡くなった人の戸籍謄本の請求に必要なもの
戸籍謄本は、窓口・郵送のいずれでも請求できます。用意するものは請求方法によって異なるため、それぞれの必要書類を確認しておきましょう。
窓口で申請する場合
故人の戸籍謄本を窓口で請求するときに、必要な書類と持ち物は次の通りです。
- 市区町村所定の戸籍交付申請書
- 故人の配偶者・直系血族であることがわかる戸籍謄本
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
- 印鑑
- (配偶者・直系血族以外の場合)委任状
配偶者・直系血族以外が申請する場合は、委任状と代理人の本人確認書類も忘れずに持参してください。
郵送で申請する場合
- 市区町村所定の戸籍交付申請書
- 故人の配偶者・直系血族であることがわかる戸籍謄本のコピー
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード・パスポートなど)のコピー
- 定額小為替
- 返信用封筒(切手貼付)
- (配偶者・直系血族以外の場合)委任状
故人の戸籍謄本は郵送でも取り寄せできます。戸籍謄本や本人確認書類はコピーで構いません。手数料の支払いには定額小為替を、返送のために切手を貼った返信用封筒を同封します。
オンライン申請・コンビニ交付で取得できるケース
一部の自治体では、コンビニのマルチコピー機やオンラインで戸籍証明書を取得できる場合があります。コンビニ交付を利用するにはマイナンバーカードが必要で、本籍地の自治体がサービスに対応していることが前提です。
ただし、故人(除籍)の戸籍や本籍地以外の分については取得できないことも多く、対応状況は自治体によって大きく異なります。利用できるかどうか、取得できる証明書の範囲を、事前に本籍地の自治体で確認しましょう。
亡くなった人の戸籍謄本の請求にかかる費用
| 種類 | 費用 |
|---|---|
| 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) | 1通450円 |
| 戸籍抄本(戸籍個人事項証明書) | 1通450円 |
| 除籍謄本(除籍全部事項証明書) | 1通750円 |
| 除籍抄本(除籍個人事項証明書) | 1通750円 |
| 改製原戸籍謄本 | 1通750円 |
戸籍謄本の請求にかかる費用は、おおむね全国一律です。以前は交付手数料を国が一律で定めていましたが、平成12年以降は各自治体の条例で定めることに変わりました。ただし、以前の手数料から変更していない自治体がほとんどのため、実態としてはほぼ全国一律となっています。
念のため、事前に自治体の窓口またはホームページで確認しておくと安心です。
相続手続きで必要な戸籍の範囲はケースごとに違う
相続で必要になる戸籍の範囲は、提出先や手続きの種類によって異なります。銀行預金の名義変更・解約、不動産の相続登記、相続税の申告では、故人の出生から死亡までの連続した戸籍と相続人全員の現在の戸籍が求められるのが一般的です。
一方、遺族年金や埋葬料などの申請では、続柄が確認できる範囲の戸籍で足りることもあります。
原本の提出が必要か、コピーで可か、返却してもらえるかも提出先ごとに異なります。複数の手続きを予定している場合は、必要通数とあわせて事前に確認しておくと無駄がありません。
死亡後の戸籍謄本は何通必要?
故人の戸籍謄本を取得するなら、念のため2通取得しておくと安心です。
死亡後は銀行口座・不動産・自動車の名義変更など、複数の手続きで戸籍謄本の提出を求められます。法務局や金融機関に提出すると、返却まで2週間ほどかかることが一般的です。原本の返却を申請すれば最終的に手元に戻ってきますが、1通で複数の手続きを順番にこなしていくと、返却を待ちながら進めることになり非効率です。
2通あれば複数の手続きを並行して進められ、時間を大幅に短縮できます。
戸籍謄本を集めるときによくある失敗・注意点
戸籍集めでつまずきやすいポイントを事前に把握しておくと、やり直しを防げます。よくあるのは、古い戸籍の手書き文字や旧字体が読み取りにくく、転籍の記録を見落として一部の戸籍が抜けてしまうケースです。郵送請求では、同封する定額小為替の金額が不足して手続きが止まることもあります。
また、提出先によっては「発行から3か月以内」など有効期限が設けられている場合や、返却まで時間がかかる場合もあります。出生までさかのぼれているか、集めた戸籍がつながっているかを一つずつ確認しながら進めましょう。不安なときは、専門家に取得を依頼するのが確実です。
戸籍謄本の代わりになる?法定相続証明情報制度とは

平成29年(2017年)5月29日に「法定相続証明情報制度」がはじまりました。
この制度は、法務局に必要書類と相続関係を一覧にした「法定相続情報一覧図」を提出すると、登記官の認証文が付いた一覧図の写しを無料で交付してもらえる仕組みです。交付された写しは戸籍謄本や除籍謄本の代わりとして各種手続きに利用できます。
法定相続情報一覧図の写しがあれば、相続・名義変更の手続きで戸籍謄本や除籍謄本を何通も取り寄せる必要がなくなり、死後の手続きの負担を大幅に減らせます。
法定相続情報証明制度の手続き方法
STEP1:必要書類の収集
STEP2:法定相続情報一覧図の作成
STEP3:申出書の記入・登記所へ申出
法定相続情報証明制度の具体的な手続きは、こちらの3STEPで完了します。法務局の「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」に詳細が記載されているので、あわせて確認してください。
STEP1:必要書類の収集
- 故人の戸除籍謄本(出生から死亡まで)
- 故人の住民票の除票
- 相続人全員の戸籍謄抄本(故人の死亡日以後の証明日付のもの)
- 申出人の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード・住民票の写しなど)
法定相続情報証明制度を利用できるのは、故人の相続人です。
まず上記4点の書類を収集します。相続人に養子や認知した子が含まれる場合など、状況によっては追加書類が必要になるため注意してください。
STEP2:法定相続情報一覧図の作成
故人と相続人の関係を図にまとめた「法定相続情報一覧図」を作成します。法務局の「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」に家族構成に応じた様式と記載例が掲載されているので、参考にしてください。
STEP3:申出書の記入・登記所へ申出
法務局の「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」に掲載されている申出書に記入し、STEP1で収集した書類一式およびSTEP2で作成した法定相続情報一覧図とあわせて登記所へ申し出ます。
申し出る登記所は、下記4か所から選択可能です。
- 故人の死亡時の本籍地
- 故人の最後の住所地
- 申出人の住所地
- 故人名義の不動産の所在地
戸籍電子証明書提供用識別符号とは?オンライン手続きで使える新制度
戸籍のデジタル化に伴い、戸籍証明書を紙で提出しなくても行政手続きで戸籍情報を確認できる仕組みが整えられています。その一つが「戸籍電子証明書提供用識別符号」です。
これは戸籍の内容をオンラインで参照するための番号で、対応する手続きでこの符号を提示すれば、戸籍謄本の添付を省略できる場合があります。利用できる手続きや取得方法は今後拡充される見込みのため、最新の対応状況は本籍地の自治体や提出先の窓口で確認しましょう。
戸籍謄本から家系図を作成するには?

家系のルーツを調べるには、戸籍を一つずつさかのぼって取り寄せるのが確実です。戸籍は何らかの理由で抹消されていない限り、本籍地を管轄する自治体の役所に保存されています。本籍地をたどりながら戸籍謄本を一つずつ入手することで、家系図を作成できます。
2010年の戸籍法施行規則の改正によって、除籍謄本の保存期間は80年から150年に延長されました。また、2010年以前は廃棄の判断が各自治体に委ねられていたため、保存期限の80年を過ぎていても廃棄されずに残っている戸籍もあります。
保存期間より古い戸籍でも、さかのぼって家系を調査できる可能性があります。まずは本籍地の役所に戸籍交付を請求してみることをおすすめします。
亡くなった人の戸籍謄本に関するよくある質問
最後に、記事内で触れきれなかった疑問をまとめました。手続きの前に気になりやすいポイントをあらかじめ確認しておきましょう。
亡くなった人の戸籍謄本に有効期限はありますか?
戸籍謄本そのものに有効期限はありません。ただし、相続登記や金融機関の手続きでは「発行から3〜6か月以内」などの期限を求められることがあります。提出先ごとに確認しましょう。
取得までどのくらいかかりますか?
窓口請求ならその場で受け取れることが多いですが、郵送請求では往復で1〜2週間ほどかかります。出生から死亡まで複数の役所にまたがる場合は、さらに日数を見込んでおきましょう。
代理人でも取得できますか?
委任状と代理人の本人確認書類があれば取得できます。ただし、2024年3月に始まった広域交付は、代理人・郵送では利用できません。
まとめ:戸籍謄本の取得や手続きは「いい相続」へ
ただ、故人の出生から死亡までの戸籍謄本を集めるのは、時間も労力もかかります。ご自身での収集が難しい場合は、専門家への依頼をご検討ください。
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