経過的寡婦加算(けいかてきかふかさん)と中高齢寡婦加算(ちゅうこうれいかふかさん)は、どちらも遺族厚生年金における加算給付。生計を維持していた家族が亡くなったとき、配偶者や子が受け取れるお金で、受給するには一定の条件を満たさなければなりません。
この記事では、経過的寡婦加算と中高齢寡婦加算の受給条件や対象者、金額などを解説します。
目次
経過的寡婦加算とは?中高齢寡婦加算とは?
厚生年金保険の被保険者や障害厚生年金・老齢厚生年金の受給者が亡くなると、遺族に厚生年金が支給されます。
このとき、40歳以上65歳未満で子がいなかったり、遺族基礎年金を受け取れなくなったりした妻には、中高齢寡婦加算が加算。中高齢寡婦加算は65歳になった時点で支給を終了し、老齢基礎年金に切り替わります。ただ妻の生年月日によっては、老齢基礎年金の支給額が少なくなってしまうため、経過的寡婦加算を加えることで差額をカバーするのです。
つまり経過的寡婦加算は、年金額の低下による差を防ぐことを目的に支給されるお金。中高齢寡婦加算の対象で、中高齢寡婦加算の支給が終了した妻の年金額を補填するために支給されます。
中高齢寡婦加算:受給条件・金額・支給期間
中高齢寡婦加算の受給条件・金額
前提:夫の死亡時、夫に家計を維持されていた妻で、遺族厚生年金の受給要件を満たしている
- 夫の死亡時に40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻
- 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻が、子が成人に達する等で遺族基礎年金を受給できなくなったとき
中高齢寡婦加算を受給するには、前提として遺族厚生年金の受給要件を満たす必要があります。
そのうえで上記どちらかの条件に該当する妻は、中高齢寡婦加算の対象者となり、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算が加算。40~65歳の間、年額612,000円が上乗せされます。
遺族厚生年金と中高齢寡婦加算の受給資格には例外もあるため、夫を亡くして当てはまる可能性のある妻の方は一度確認しておくとよいでしょう。
参考:遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)|日本年金機構
中高齢寡婦加算の支給期間
中高齢寡婦加算の支給期間は原則、妻が40歳から65歳になるまでの間です。
ただし、遺族基礎年金が支給されている間は支給されません。妻が40歳になる前に子が成人(18歳になる年度の末日)をむかえると、子の遺族基礎年金受給権が失われ、妻も中高齢寡婦加算を受給できなくなります。
経過的寡婦加算:受給条件・対象者・支給期間
経過的寡婦加算の受給条件・対象者
- 妻が昭和31(1956)年4月1日以前生まれで、65歳以上で遺族厚生年金の受給権が発生したとき
- 妻が昭和31(1956)年4月1日以前生まれで、中高齢寡婦加算の受給中に65歳に達したとき
経過的寡婦加算は、上記どちらかに該当する妻に加算されます。基本的に、妻の生年月日が昭和31(1956)年4月1日以前でなければならず、4月2日以降は対象となりません。
1つ目の条件では、老齢厚生年金の受給資格や受給権をもっている夫の場合、被保険者期間が20年以上必要です。2つ目の条件では、中高齢寡婦加算の対象者でなければなりません。
また、妻が遺族厚生年金と障害基礎年金の2つの受給権を有しているときは、障害基礎年金が支給停止となっている場合を除いて経過的寡婦加算の支給が停止されるため、注意しましょう。
参考:遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)|日本年金機構
経過的寡婦加算の支給期間
中高齢寡婦加算の加算額が支給されるのは、妻が40歳から65歳になるまでの間。妻が経過的寡婦加算の受給要件を満たしていれば、65歳で支給が打ち切られたあと、経過的寡婦加算にスライドします。
そのため、中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算の支給時期は連続していて、経過的寡婦加算に切り替わったあとは、老齢基礎年金に一定の金額を上乗せして生涯受給できます。
ただし、妻が経過的寡婦加算の受給要件を満たさない場合は、65歳で中高齢寡婦加算の支給が終了。同時に老齢基礎年金の支給が開始され、経過的寡婦加算の受給はできません。
経過的寡婦加算の金額は?計算式なし・生年月日で算出
経過的寡婦加算の金額は、老齢基礎年金と合算して中高齢寡婦加算と同額になるよう設定されているので、妻の生年月日にあわせて決まっています。
そのため特別な計算式はなく、日本年金機構のホームページを閲覧すればその年度の支給額がわかります。経過的寡婦加算の支給金額は年度ごとに改定されるので、日本年金機構のホームページで必ず最新の情報を確認しましょう。
たとえば令和4年度の場合、妻の生年月日が1955年4月2日から1956年4月1日の間なら年額19,495円、1954年4月2日から1955年4月1日までの間なら38,940円、1953年4月2日から1954年4月1日までの間なら58,385円が経過的寡婦加算として支給されます。
最高額は妻が1926年4月2日から1927年4月1日までの間に生まれた場合で、年間の支給金額は583,400円です。
令和4年度の経過的寡婦加算の支給額一覧
生年月日 | 経過的寡婦加算額(年額) |
---|---|
大正15(1926)年4月2日~昭和2(1927)年4月1日 | 583,400円 |
昭和2(1927)年4月2日~昭和3(1928)年4月1日 | 553,485円 |
昭和3(1928)年4月2日~昭和4(1929)年4月1日 | 525,785円 |
昭和4(1929)年4月2日~昭和5(1930)年4月1日 | 500,064円 |
昭和5(1930)年4月2日~昭和6(1931)年4月1日 | 476,117円 |
昭和6(1931)年4月2日~昭和7(1932)年4月1日 | 453,767円 |
昭和7(1932)年4月2日~昭和8(1933)年4月1日 | 432,858円 |
昭和8(1933)年4月2日~昭和9(1934)年4月1日 | 413,256円 |
昭和9(1934)年4月2日~昭和10(1935)年4月1日 | 394,842円 |
昭和10(1935)年4月2日~昭和11(1936)年4月1日 | 377,512円 |
昭和11(1936)年4月2日~昭和12(1937)年4月1日 | 361,171円 |
昭和12(1937)年4月2日~昭和13(1938)年4月1日 | 345,739円 |
昭和13(1938)年4月2日~昭和14(1939)年4月1日 | 331,141円 |
昭和14(1939)年4月2日~昭和15(1940)年4月1日 | 317,311円 |
昭和15(1940)年4月2日~昭和16(1941)年4月1日 | 304,190円 |
昭和16(1941)年4月2日~昭和17(1942)年4月1日 | 291,725円 |
昭和17(1942)年4月2日~昭和18(1943)年4月1日 | 272,280円 |
昭和18(1943)年4月2日~昭和19(1944)年4月1日 | 252,835円 |
昭和19(1944)年4月2日~昭和20(1945)年4月1日 | 233,390円 |
昭和20(1945)年4月2日~昭和21(1946)年4月1日 | 213,945円 |
昭和21(1946)年4月2日~昭和22(1947)年4月1日 | 194,500円 |
昭和22(1947)年4月2日~昭和2(1948)3年4月1日 | 175,055円 |
昭和23(1948)年4月2日~昭和24(1949)年4月1日 | 155,610円 |
昭和24(1949)年4月2日~昭和25(1950)年4月1日 | 136,165円 |
昭和25(1950)年4月2日~昭和26(1951)年4月1日 | 116,720円 |
昭和26(1951)年4月2日~昭和27(1952)年4月1日 | 97,275円 |
昭和27(1952)年4月2日~昭和28(1953)年4月1日 | 77,830円 |
昭和28(1953)年4月2日~昭和29(1954)年4月1日 | 58,385円 |
昭和29(1954)年4月2日~昭和30(1955)年4月1日 | 38,940円 |
昭和30(1955)年4月2日~昭和31(1956)年4月1日 | 19,495円 |
昭和31(1956)年4月2日~昭和32(1957)年4月1日 | ー |
昭和32(1957)年4月2日~昭和33(1958)年4月1日 | ー |
昭和33(1958)年4月2日~昭和34(1959)年4月1日 | ー |
昭和34(1959)年4月2日~昭和35(1960)年4月1日 | ー |
昭和35(1960)年4月2日~昭和36(1961)年4月1日 | ー |
昭和36(1961)年4月2日~昭和37(1962)年4月1日 | ー |
昭和37(1962)年4月2日~昭和38(1963)年4月1日 | ー |
昭和38(1963)年4月2日~昭和39(1964)年4月1日 | ー |
昭和39(1964)年4月2日~昭和40(1965)年4月1日 | ー |
昭和40(1965)年4月2日~昭和41(1966)年4月1日 | ー |
昭和41(1966)年4月2日~ | ー |
遺族年金制度の不安や疑問は専門家に相談
遺族年金制度は、一家の大黒柱に先立たれ、残された家族が困窮しないよう生活を支える制度。
仕組みや受給条件が複雑なため、すべて理解するのは難しいかもしれません。一生のうちに何度も関わる手続きではないので、不安や疑問がある場合は専門家に相談するのがおすすめです。
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