復氏届とは?死別後の苗字を旧姓に戻す方法とデメリットを解説

小林憲行【記事監修】
小林憲行

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  • 復氏(ふくし)届とは、配偶者の死亡後に苗字を旧姓に戻す手続き
  • 復氏届を出しても遺族年金の受給や遺産相続の権利はなくならない
  • 姻族との関係性や名義変更の煩雑さをふまえたうえで利用すべき

「復氏(ふくし)届」は、結婚して配偶者の苗字を名乗っていた人が、配偶者の死亡後、旧姓に戻す手続きです。また「復氏(ふくし)」は、旧姓に戻るための制度。死別後は旧姓で再出発したい、配偶者の姓を名乗りたくないなど、さまざまな理由から利用されています。

この記事では、復氏届提出による影響やデメリット、手続き方法などを解説します。

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復氏届とは?死別後の苗字を旧姓に戻す方法

復氏届とは、配偶者に先立たれたあと、結婚前の旧姓に戻すために提出する書類

復氏届は、裁判所や配偶者の親族の許可が必要なく、本人の意思で自由に提出できます。また、提出に期限はありません。市区町村役場に配偶者の死亡届を提出したあとなら、いつでも提出できます。提出先は、住所地の市区町村役場または、本籍地のある市区町村役場です。

復氏届を出すとどうなる?年金や相続の影響

  • 遺族年金の受給権=あり
  • 遺産の相続権=あり
  • 配偶者の親族との家族関係=あり

復氏届を提出すると、配偶者の戸籍から抜けて旧姓に戻ります。ただ復氏届は、あくまで姓を変更するだけで、配偶者と離婚したことにはならないので注意が必要。

復氏届を提出しても、配偶者の遺族年金の受給権や遺産の相続権はなくなりません

また配偶者の親族(義父母や配偶者の兄弟姉妹)との家族関係は変わらず、扶養義務も残ります。配偶者の親族を「姻族(いんぞく)」と呼びますが、もともと配偶者には親や兄弟姉妹の扶養義務があり、死亡後は代わりに役割を果たさなければなりません。

死亡した配偶者の姻族と家族関係を解消したい場合は、別に「婚姻関係終了届」を提出しましょう。

復氏届を出すデメリットは?姻族との関係や手続きに注意

姻族との関係が悪くなる

復氏届のデメリットは、配偶者の親族、つまり姻族との関係性が悪くなる可能性があること。

核家族化が進み、ライフスタイルが多様化している現代では、姻族から過度の干渉を受けている家庭は珍しいかもしれません。ですが、年齢が上の世代や地方には「結婚は家と家の結びつき」という考えが根強く残っています。死亡した配偶者の親族からすると、一度姻族になった相手が自ら戸籍を抜くのは、あまり気持ちのよいものではありません。

死亡した配偶者の親族と今後もお付き合いをしていくのであれば、双方の気持ちを考え、理解を得ながら慎重に手続きを進めていくのがよいでしょう。

名義変更の手続きが大変

結婚して相手の姓に入った方は経験していますが、苗字が変わると名義変更が必要です。運転免許証や銀行口座、クレジットカード、生命保険など…。その他さまざまな書類の名義変更をしなければなりません

また、所有している不動産がある場合、法務局で手続きが必要です。個人でも対応できますが、煩雑な手続きなので司法書士に依頼して負担を軽くするのもひとつの方法。費用はかかるものの、時間や手間を省いて、効率よく名義変更できます。

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復氏届はどこで入手できる?手続きと必要な書類

  • 提出期限:なし
  • 提出場所:住所地または本籍地の市区町村役場
  • 必要書類:復氏届、届出人の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)、届出人の印鑑

復氏届は、住所地または本籍地の市区町村役場で手続きします。前述したとおり、復氏届に提出期限はないので、ご自身のタイミングで手続きしましょう。

復氏届の提出には、復氏届と戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)、印鑑が必要です。復氏届は、役所の窓口が公式ホームページで入手できるため、確認してみてください。本籍地に提出する場合は、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)を添付する必要はありません。

復氏届を提出すると配偶者の戸籍から抜けるので、結婚前の戸籍に戻るか、新たな戸籍を作るか選ばなくてはなりません。結婚前の戸籍に戻る場合は、結婚前の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)も必要。結婚前の戸籍に戻らない場合は、「分籍届」を一緒に提出すれば、新たな戸籍を作れます。

復氏届を出すと子どもはどうなる?本人だけ戸籍を抜ける

復氏届は、届出をした本人だけが戸籍を抜けるため、子どもに影響はありません。よって子どもは、死亡した配偶者の戸籍に残ることになります。

子どもが未成年の場合、復氏届を提出するとき、子どもも一緒に自分の戸籍に移す方が多いようです。自分と同じ苗字を名乗らせたい・自分の戸籍に移したいなら、子どもの苗字を変更するため、裁判所に申し立てなければなりません。そして、死亡した配偶者の戸籍から離脱させ、自分の戸籍に移す手続きを行います。

子どもの氏の変更許可申立の方法は?

  • 申立人:子(子が15歳未満のときは法定代理人)
  • 申立先:子の住所地の家庭裁判所
  • 必要費用:収入印紙800円分(子1人につき)、連絡用の郵便切手
  • 必要書類:申立書、子の戸籍謄本(全部事項証明書)、父・母の戸籍謄本(全部事項証明書)

子どもの氏の変更許可申立は、子の住所地の家庭裁判所で行います。

申立費用は子ども一人につき、印紙代として800円ほど。申立書は、裁判所のホームページからダウンロードできるので、確認してください。その他、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)などの添付書類も必要になるため、事前に取得しておきましょう。本人の申立が難しいなら、弁護士に依頼して申立するのもひとつの手です。

家庭裁判所から氏変更許可の審判が下されたら、審判書謄本が交付されます。この審判書を携えて、今度は市区町村役場へ行き、子どもを本人の戸籍に入籍させる手続きを取りましょう。

参考:子の氏の変更許可 | 裁判所

復氏届の提出は十分検討したうえで

葬儀が終わって、これからの人生をどう生きるか考えたとき、配偶者の姓を名乗るか、新たな苗字で再出発するかは悩むところ。とくに若くして配偶者に先立たれたときは、再婚の可能性や仕事への影響を考え、旧姓に戻す方も多いようです。

どのような決定をするにしても、残された方々が「これでよかった」と思えるよう、また、ひとつでも多くの幸せが掴めるような選択ができるよう十分に検討してください。

配偶者が亡くなると、相続や保険、年金など、さまざまな手続きが必要になります。やるべきことが多く、時間の余裕がない中で今後の人生についてゆっくり考えるのは難しいかもしれません。少しでも負担を減らし、より良い選択をするために、手続きの一部をプロにお任せするのもおすすめです。

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