盆提灯の種類と産地

小林憲行【記事監修】
小林憲行

記事監修小林憲行

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お盆の提灯とは、ご先祖様の霊が帰る際の目印となるものです。提灯にはさまざまな種類や形があり、それぞれに意味を込めて作られています。
今回は、提灯についてその種類と意味、有名な産地などをご紹介します。お盆が近づいてきて、提灯を選ぶ際に迷われている方や、提灯について前もって知っておきたいと思われている方は、ぜひ参考になさってください。

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お盆の提灯を飾る意味とは

お盆の提灯は盆飾りの中でも、大切な仏具のひとつです。盆提灯を飾る理由については迎え火・送り火の役割を果たすため、故人の霊が自宅へ迷わずたどり着けるように、帰るべき場所の目印となるようにという意味があるようです。またそれと同時に、故人の冥福を祈りつつ、生前お世話になったことへの感謝をする意味も込められています。

新盆・初盆を迎えた家庭には、親せきや故人と生前親しかった友人などから白い提灯が贈られます。仏前に供えられるお供え物の中でも、特に提灯は最高のお供え物になると考えられており、贈られた提灯の数が多いほど生前の故人の人柄が偲ばると言われています。
提灯はふたつで一対になっているものが一般的であり、飾るときも仏間に一対で飾るのが基本です。しかし、住宅事情などの理由で、片側にひとつのみ飾るケースも増えています。

盆提灯の産地

盆提灯の産地提灯の産地として有名なのは、岐阜県の岐阜提灯福岡県の八女提灯があげられます。この2ヵ所で作られた提灯は、いずれも経済産業大臣指定伝統的工芸品に指定されています。
岐阜提灯は、岐阜で原材料となる和紙や竹が手に入りやすかったことが理由で、18世紀中頃に作られたのが始まりとされています。竹と美濃和紙を原料とし、秋草や風景などが描かれた火袋が特徴です。高度な技法で完成度の高さと美しさを兼ね備え、人々の心を落ち着かせてくれる提灯です。
そして、もう一方の八女提灯。こちらの特徴は、1本の細い竹ヒゴを提灯の形になるよう螺旋状に巻いていく「一条螺旋式」で作られていることです。この製作法は、現代で作られている盆提灯の起源になったとも言われています。材料は、竹や和紙と合わせて、漆や木材も使用されています。

また、岐阜や八女以外に、茨城県の水戸でも盆提灯が作られています。水戸は、かつて岐阜・八女と並んで提灯の三大産地と呼ばれていました。
水戸で作られる提灯の中でも「水府提灯」が代表的です。これは、竹ヒゴを使って輪を多く作り、それを並べて糸で繋ぐ手法をとります。このため、螺旋状に整えていく手法に比べ丈夫で、実用的な仕上がりになります。

お盆の提灯の種類

盆提灯は、吊すタイプと置くタイプの2つがあります。地域の習わしや好み、住環境に合わせて選ぶといいでしょう。

大内行灯

一般的な盆提灯で、床に置いて使用します。3本足で立たせ、その上に火袋を置き、上部に雲手がついています。「大内」とは皇居の内裏を指し、「大切な場所に置く行灯」との意味が込められていると言われています。

御所提灯

壺の形をした、吊す形式の提灯です。この形式のことを岐阜提灯と呼ぶ場合もあります。

切子灯籠

浄土真宗で使われることが多い、角を落とした多面体の火袋が特徴の灯籠です。多面体には、悪霊を祓う役割があると言われています。浄土真宗は、お盆に故人の霊が戻ってくるという考えがないため、盆提灯を飾る習慣もありません。そのため、提灯ではなく灯籠が飾られます。
切子灯籠は、西(本(願寺派)用と東(大谷派)用に分かれていて、地域によって特色や習慣も異なります。故人の魂が休憩するための部屋だという考えの地域もあれば、迎え火として門提灯の役割を果たす場合もあります。また、故人の新盆に豪華な切子灯籠を飾る地域もあるため、地域や宗派の流れに合わせて飾る場所を考えるとよいでしょう。

御殿丸提灯

吊り提灯のひとつです。火袋が球形になっており、手板と下輪に房がついています。

住吉提灯

円筒形の、長細い吊り提灯を指します。もともと、博多の住吉町で使われはじめたためにこの名前がつきました。

門提灯

迎え火などの際、玄関先や縁側に飾り、ご先祖様が帰る道しるべとなる提灯です。多くの場合、中央に家紋が入ります。

お迎え盆提灯

お墓で迎え火などを行ったときに、お墓で故人の霊を迎えるために使われる、持ち手付きの提灯です。

神道用白木盆提灯

白木でできた提灯で、形は大内提灯とかなり似ています。神道用にも使用できます。

上記の他に、地域特有で使われている提灯もあります。

お盆の提灯を飾る時期は

盆提灯の種類提灯を飾る時期は、旧盆、新盆どちらも7月または8月、お盆の月初めからとなります。片付けるのは、いずれの月もお盆が明ける17日以降です。飾る場所は、精霊棚(盆棚)の前または仏壇の前が基本です。

ただし、飾っている期間にいつでも灯りを灯すわけではありません。おおよそ、13日夕方の迎え火から16日夕方の送り火までの間、と考えておくとよいでしょう。

まとめ

お盆の提灯について、さまざまな情報をご紹介しました。盆提灯の飾り方や種類は地域によっても違いがあるので、その地域の慣習に従うようにしましょう。また、現在は多彩な提灯が販売されています。柄や色味、また明かりを灯すと回転するものなどいろいろな種類があります。故人の好みなどを思い出しながら選ぶのも、供養のひとつになるのではないでしょうか。

また、お盆の時期は親族同士で相続の話ができる機会でもあります。

実家の名義変更など、故人のままにして相続登記をせずにいると権利関係が複雑になり、トラブルにつながる可能性もあります。詳しくは姉妹サイト「いい相続」の「相続登記の手続きと必要書類、早めに相続登記した方が良い理由【司法書士監修】」をご覧ください。

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