老衰とは?老衰死のサインと症状・死亡までの期間・家族がすべき準備

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記事を先読み
  • 老衰(老衰死)とは、加齢に伴う身体機能の衰弱による死のこと
  • 老衰の前兆は、身体機能の低下や食事量・体重の減少、睡眠時間の増加
  • 老衰死で意志疎通ができなくなる前に、終活について確認するのが大切

医療の発達と高齢化が進む現代では、老衰で亡くなる方が年々増えています。高齢者と一緒に暮らしている方は、老衰死の意味や兆候を知ることで、より安らかで充実した最期を迎えられるかもしれません。

この記事では、老衰の意味や前兆に加え、家族ができる老衰死の準備やケア方法を紹介します。

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老衰とは?厚生労働省による定義

老衰で寝たきりになった老人

厚生労働省の死亡診断書(死体検案書)記入マニュアルによると、老衰は「高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ」用いると定義されています。老衰から他の病気を併発したり、病気や事故で亡くなったりした場合は、老衰は死因にはなりません。

死因としての「老衰」は、高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ用います。ただし、老衰から他の病態を併発して死亡した場合は、医学的因果関係に従って記入することになります。

引用元:死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル(厚生労働省)

高齢化社会が進む現代では老衰死が年々増加していて、2021年の人口動態統計月報年計では「悪性新生物(腫瘍)」「心血管疾患」に並んで、老衰が第3位の死因になっています。

老衰で亡くなるとは?

老衰で亡くなる、つまり老衰死とは、加齢に伴う身体機能の衰弱による死のこと。

年齢を重ねるにしたがい、身体の細胞は徐々に寿命を迎え、やがて分裂による再生が行われなくなります。同時に、代謝機能の低下から本来の機能を失ったタンパク質が作られるようになり、臓器や筋肉の働きに異常が生じやすくなります。また、老化した細胞から分泌される特殊な免疫物質によって周りの細胞の老化が促進され、全身の細胞や臓器が常に炎症を起こしている状態へ。

こうした要因により、日常生活の中で当たり前にできていた動作が難しくなったり、食事をしても臓器が栄養を吸収しにくくなったりして全身の機能がさらに衰弱していきます。そして、次第に生命活動を維持できなくなっていくのです。

一方で、臓器と同時に感覚器官や脳の機能も低下していくため、老衰死に向かいつつある本人は大きな苦痛を感じることは少ないといわれています。

老衰死は何歳から?

老衰死が何歳から認められるかどうかは、医師によって意見がわかれる様子。前述した通り、厚生労働省の「死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」では、「死因としての『老衰』は、高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ」と定義されています。

一般的には、平均寿命を超えた年齢で自然死したら老衰死とする医師が多いようです。

老衰死の前兆(サイン)と初期症状

  • 身体機能の低下
  • 食事量の減少
  • 体重の減少
  • 睡眠時間の増加

老衰死の代表的な前兆は、こちらの4つ。

身体機能が低下し、食事量や体重が減り、1日のほとんどを寝て過ごす状態が続くようになったら、老衰死を迎える心構えが必要になってくるでしょう。それぞれの症状について詳しく解説します。

身体機能の低下

老衰の前兆として、まず顕著にあらわれるのは身体機能の低下

年齢を重ねるにつれて、筋力や握力が低下したり、歩行速度が遅くなったり、転びやすくなったり…。日常的な動作をするだけで疲れるようになり、行動範囲が自然と狭まる方が多いです。

食事量の減少

身体機能が低下すると、1日の消費エネルギーが少なくなりがち。また加齢によって食べ物を飲み込む嚥下機能が衰えるため、食事が億劫になる高齢者は多いです。

結果的に、食欲が低下して以前より食事量が減少。老衰の場合、食事量が減ったあと改善しないまま、自力で食事をとるのが難しくなっていくのが一般的です。

体重の減少

老衰では、食事量の減少に加えて、食べ物を分解・吸収する消化機能も低下していきます。消化器官が衰えると栄養を吸収しにくくなり、きちんと食事を摂っていても体重が減少しがち。また、高齢者に多い骨密度や水分量の低下も、体重減少を加速させます。

急速に体重が減少したり、見るからにやせ細ったりしたら、老衰を疑って栄養状態に気を配りましょう。

睡眠時間の増加

老衰によって、体力や身体機能が低下すると、脳機能が下がって意識を保つのが難しくなります。昼夜問わず眠くなることが増え、次第に眠りが深くなって、最後には1日のほとんどを寝てばかりで過ごすように。

睡眠が増えると、食事を摂ったり活動したりする時間が短くなり、ますます老衰が進んでいきます。

寝てばかりなのは老衰以外の原因がある可能性も

睡眠時間の増加には、老衰以外の原因が潜んでいる可能性があるため、注意が必要。

  • 薬の副作用
  • 脱水症状
  • 認知症
  • 慢性硬膜下血種
  • 内臓疾患
  • 感染症

など、他の理由から高齢者が寝てばかりいるかもしれません。睡眠時間の変化はもちろん、気になる症状があるなら、早めに医療機関を受診するよう意識しましょう。

老衰の経過と死亡までの期間

老衰の経過と亡くなるまえでの期間

老衰が進むと、食べ物を飲み込む力が弱まり、通常の食事を摂るのが難しくなります。食べ物を小さくカットしたり、ペースト状にしたりと、飲み込みやすい形状に変えて食事をするのが一般的。自分で食事をとれない場合は、介護食に切り替えて食事介助を受ける方も多いです。

口から食事を摂れなくなったら、「経鼻経管(けいびけいかん)栄養」「胃瘻(いろう)栄養」で栄養を補給します。「経鼻経管栄養」は鼻から胃へチューブを通す方法。「胃瘻栄養」は、胃に穴をあけてチューブを通し、栄養剤を入れる方法です。また「経鼻経管栄養」「胃瘻栄養」を行わない場合、点滴で栄養を補給するケースもあります。

口から食事を摂れなくなったあと、経鼻経管栄養・胃瘻栄養・点滴などを行わない場合は、1週間前後のうちにご逝去する方が多いようです。

老衰の死亡率は季節によって変わる?

社会実情データ図録が調査した主要死因別の月別死亡率によると、老衰死は冬の1月がピークで、夏の6月~7月がボトムとなるケースが多いようです。

気温の低い冬は、体力を奪われやすく、免疫機能が低下する傾向があるため、死亡率が上がっているのかもしれません。

老衰・死期が近づくと復活する?中治り現象とは

中治り(なかなおり)現象とは、死期が迫っている人が一時的に元気になる状態です。欧米では「last rally(ラストラリー)」と呼ばれ、世界的に認められている現象。死が間近になると、脳が寿命を伸ばそうとしてドーパミンやセロトニンなどの物質を分泌するため、起こると考えられています。

中治り現象では、もうろうとしていた意識が突然ハッキリしたり、食べ物が食べられなかった患者さんがアイスや水を欲しがったりすることが多いようです。

老衰死に備えて家族がすべき準備

  • 延命治療の意志を確認する
  • 遺言状の準備をする
  • 葬儀の希望を聞いておく

老衰で意思疎通ができなくなったり、亡くなったりする前に家族がすべき準備はこちら。

延命治療、遺言状、葬儀と、どれも終活に関する確認事項です。相手が元気だと切り出しにくい話題ですが、確認しておくことで、きちんと故人の意志を反映できます。

最終的に全員が満足いく結果になることが多いので、事前に確認しておくのがオススメ。
ここからは、具体的な確認事項や準備の方法をご紹介します。

延命治療の意志を確認する

延命治療とは、生命の維持が難しい状態に陥ったとき、医療措置で一時的に命をつなぎとめる行為。回復ではなく延命を目的にした医療行為のことで、人工呼吸・人工栄養・人工透析が主な内容です。

老衰で本人と意志疎通ができなくなった場合、代わりに家族が延命治療の判断をします。延命治療をすると寿命が伸びる一方、意識がないまま生きている状態に疑問を感じたり、費用面を心配したりする方も少なくありません。また昨今の終末期医療の現場では、患者本人の「QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)」を優先する考え方が重んじられるようになっています。

そのため、日頃から家族間で延命治療についての考えを話し合い、統一した見解を持っておくのが重要。可能であれば、延命治療に関する意志を「事前指示書」と呼ばれる文書で残しておくと、家族や親族にとって助けになるでしょう。

事前指示書には決まったフォーマットがなく、延命医療の判断をする代理人指示と、受ける治療の判別をする内容的指示の記載が必要です。

事前指示書の内容例

  1. 心臓マッサージなどの心肺蘇生
  2. 延命のための人工呼吸器の使用
  3. 抗生物質の強力な使用
  4. 胃ろう増設による栄養補給の可否
  5. 鼻チューブ(経鼻からカテーテルを挿入し経管栄養材を投与する)からの栄養補給の可否
  6. 点滴による水分補給
  7. その他の希望

引用:事前指示 | 健康長寿ネット

遺言状の準備をする

本人と意志疎通ができるうちに、遺言書の作成も進めておきたいところ。

遺言書がないと、法定相続人全員で故人の財産をどう分割するか話し合わなければなりません。遺産の分配や負債の返済などが原因で、家族・親族間トラブルに発展する可能性があります。

遺産の分配や生命保険の受け取り、負債の対応などが遺言書に記載されていれば、トラブルを回避できるのはもちろん、手続きがスムーズです。

葬儀の希望を聞いておく

お葬式は、大切な人と最期のお別れをする大切な儀式。
老衰の兆候が見えてきたら、どのような葬儀を行いたいか確認しておくのがベターです。

  • 宗旨宗派
  • 葬儀の形式
  • 葬儀の規模
  • 葬儀の参列者

などの希望がわかっていれば、いざというときスピーディーに葬儀の手配を進められます。また事前に葬儀社に相談できるため、遺影やBGM、メモリアルコーナーなど、細かな要望を通しやすいのもメリットです。

高齢化社会が進む現代では、生前に葬儀の手配をする方が増えています。家族間で話し合っておけば、スムーズに準備ができるうえに、全員が満足ゆくお葬式をあげられるでしょう。

老衰で死ぬ直前まで家族ができること

看取りの準備について
  • 積極的にコミュニケーションをとる
  • 快適な環境を作る
  • 身体を清潔に保つ
  • 転倒・転落に注意を払う
  • 食事や飲み物を工夫して出す

老衰で意識が曖昧になったり、運動や食事が思うようにできなくなったりしたとき、周囲にいる家族ができることはあるのでしょうか。

一緒に過ごす残りの時間をより充実させるために、老衰で亡くなる直前まで、家族ができる具体的なケアの方法を確認しておきましょう。

積極的にコミュニケーションをとる

会話やマッサージなどのコミュニケーションは、気持ちを和らげる効果があります。残りの時間を悔いなく過ごせるよう、積極的にコミュニケーションをとりましょう

ちなみに人間の五感のうち、最後まで残るのは聴覚だと言われています。睡眠時間が長くなったり、意識レベルが低下したりしても、耳だけは聞こえていると覚えておくこと。

感謝の言葉を伝えたり、思い出話をしたりするのはもちろん、不用意にネガティブな発言をしないように気を付けてください。また手を握ったり、手足をさすったりしながら話しかけることで、心だけでなく体のケアにもつながります。

快適な環境を作る

老衰が進むと、ほとんどの時間を寝て過ごすようになり、意志の疎通が困難になります。温度や音、居心地などの希望を伝えられないので、家族が快適な環境を整えてあげるようにしてください。

また好きな音楽やラジオ、DVDなどを流すことで、リラックスできる方も多いです。本人も家族も穏やかに過ごせるような環境を作って、より充実した時間を過ごしましょう。

身体を清潔に保つ

身体機能や意識レベルが低下すると、自分でお風呂に入ったり歯磨きをしたりするのが難しくなります。環境作りと同様に、家族が身体を清潔に保つお手伝いをしてあげましょう。

まだ意識がハッキリしている段階であれば、お風呂に入るのを手伝う程度で大丈夫。徐々に意識レベルが低くなってきたら、蒸しタオルで身体を拭いたり、口腔ケアティッシュで口の中をキレイにしたりします。

家族だけで毎日介護をするのは負担が大きいので、役割分担したりホームヘルパーを雇ったりと、ムリのない方法を選択するのも大切です。

転倒・転落に注意を払う

老衰によって身体能力が低下すると、ベッドや椅子から落ちたり、段差でつまずいたりしやすくなります。また転んだ拍子にケガをしたことで寝たきりになり、老衰が進行する方も少なくありません。

  • つまづきやすい物を床に置かない
  • ひっかかりやすいコード類はまとめる
  • 必要な物は手に届く範囲に配置する
  • ベッドの高さを低くする
  • ベッドに柵を設置する

など、転倒・転落のリスクを少しでも減らせるよう、部屋の状態や家具を見直しておくと安心です。

食事や飲み物を工夫して出す

老衰が進行すると、嚙む力や飲み込む力が弱まり、徐々に通常の食事を摂るのが難しくなります。食べ物を細かくカットしたり柔らかく煮たり、調理方法を工夫するのが重要。本人の状態や好みにあわせて、ムリなく食べられる食事を出してあげてください

また、最終的に食事を摂れなくなったら、ガーゼや綿棒で唇を湿らせてあげましょう。水だけでなく、好きな飲み物やアイスクリームなどで湿らせるのも問題ありません。

老衰についてよくある質問

老衰とはどんな意味?

老衰で亡くなる、つまり老衰死とは、加齢に伴う身体機能の衰弱による死のこと。日常的な動作が難しくなったり、栄養を吸収しにくくなったりして、全身の機能が衰弱し、次第に生命活動を維持できなくなっていきます。

ちなみに厚生労働省の死亡診断書(死体検案書)記入マニュアルでは、老衰は「高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死」だと定義されています。

老衰死の前兆(サイン)となる初期症状は?

  • 身体機能の低下
  • 食事量の減少
  • 体重の減少
  • 睡眠時間の増加

老衰死の代表的な前兆や症状はこちらの4つ。身体機能が低下し、食事量と体重が減少し、寝てばかりいるようになったら、老衰の前兆として受け止めましょう。

老衰で亡くなる前に家族がすべき準備は?

  • 延命治療の意志を確認する
  • 遺言状の準備をする
  • 葬儀の希望を聞いておく

意思確認ができるうちに、延命治療・遺言状・葬儀について話し合っておきたいところ。

老衰が進むと、意識レベルが低下したり会話できなくなったりする可能性が高いです。相手が健康だと切り出しにくい話題かもしれませんが、事前に確認しておくと本人の意志を反映でき、後悔が少なくなるかもしれません。

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