【プロが語る!】会社員はギリギリにならないと勤め先に家族の介護について相談しないので、既に手遅れ状態になってしまっているという現状について…


以前、介護離職について記事を書きましたが、今回はさらに一歩踏み込んで「会社に介護相談ができるか?」ということについて、お話をしたいと思います。

ここでいう介護離職とは「家族などの看護・介護を理由に、働き盛りの社員が会社を辞めること」の意味で使っています。

 

会社に介護の相談をするときには、すでに手遅れになっている?

さて、これまでも介護離職についてはいくつも記事を書いていますが、親や親せきの介護をするために、働き慣れていた職場を辞めるという方は大勢いらっしゃいます。こうした現状の中で、「本当にその選択肢しかなかったのか?」というテーマでご説明させていただきました。

ポイントは、「介護のことで困ったら、とにかく1人で悩まないこと!」。さらに、具体的に、以下のことを試してみてはいかがでしょう?とご提案してきました。

  1. 介護に困ったときに読む本やホームページがあるので、情報を集める
  2. 親族に1人くらい、介護関係の仕事に就いている人がいるので、その人に助けて!と電話してみる
  3. 友人や近所の人で、すでに介護を経験している方に相談して、介護の注意点や近隣の社会資源を、リアルに聴いてみる
  4. 病院の相談員や、地域包括支援センターや行政に相談に行く
  5. 家族会議を開き、今後の介護について話し合う

 

ただ、もうお気づきの方もいるかもしれませんが、この提案の中に、「(自分が勤めている)会社に相談する」というアクションが入っていません。前回の記事中でも、会社については軽く触れた程度でした。

というのも、多くの会社勤めの方にとって、会社の総務や人事に介護について相談をする場面というのは、すでに問題はかなり大ごとになっていて、「退職しないといけません…」「介護休業をとりたいのですが…」という話になることが多いのです。サラリーマンにとって会社は、介護に不安を感じ始める初期の段階に相談する相手というよりは、ある程度自分自身で動いてみて、介護の方向も定まり、「今後の生活スタイルをどうするか?」という段階になって、はじめて相談する相手になっているようです。

しかし、会社側としても、話が大ごとになってから相談されても、打つ手は限られてしまいます。

本音を言えば、さまざまな制度が活用できる・できないは別としても、「もっと早い段階で相談してもらえれば、もう少し打つ手があったのに…」と、大切な社員を失い、残念に思っている会社も多いと思います。また、仮に現状でそのような方のための救済方法はなかったとしても、社員からの相談を受けることで、社内制度を構築する「きっかけ」になることもあるでしょう。

これを裏付ける調査結果があります。

 

平成24年度厚生労働省委託調査(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」の9番目の質問、「介護についての相談先は?」という質問に対して、以下の解説があります。

『介護について相談した人としては、就労者・離職者ともに「家族・親族」が最も多い。ついで、「ケアマネジャー」が多くなっている。特に、就労者では、離職者よりも「ケアマネジャー」の割合が高い。離職者では、「介護が必要な本人」、「友人・知人」など、身内の割合も高い。
勤務先への相談は、就労者で7.6%、離職者で12.9%といずれも低い。職場で、介護について知られることについての抵抗感は低かったことから、勤務先で相談をしないのは、知られたくないからではなく、相談先としての有効性について認知が低いなどの理由があるのではないか。』

 

この調査を受けて、厚生労働省は、会社内に、この介護や育児について、初期段階から相談できる体制を作ることが、介護・育児離職を防ぐ有効な対策になると、ここ数年、さまざまなサポートや助成金を設けています。

その一例をご紹介します。

 

知ってると得する「介護休業」

ここ最近は、「ワークライフバランス」というキーワードで、さまざまな制度が提案されています。みなさんも新聞・雑誌などでご覧になっているのではないでしょうか?

働いている社員さんが、家族の育児・介護の問題に直面した時に、会社内でも、初期段階からさまざまな相談にのり、実際にその社員さんが、仕事と介護を両立できるように、社内の制度を活用してもらいながら(介護休業、介護休暇、労働時間の短縮、残業の免除等)、離職を防止するような流れを構築することを目的としています。

この社内で使える制度の中には、平成29年1月に、改正のあった育児休業、介護休業も含まれています。

会社で使える介護の制度の代表格と言えば「介護休業」があります。育児休業のように、雇用保険からの給与の2/3が93日間支給される制度です。

今までは、要介護3・4・5の方が対象者でしたが、要介護1・2の方も可能になっています。

この制度、名前を知っているという方は多いと思いますが、この目的まで知っているという方は意外と少ないのかもしれません。

育児休業のイメージがあるため、介護休業も、「親などの介護に専念するために、(自分自身が)休業できる」と考えているのではないでしょうか?しかし、育児休業が1年あるのに対して、介護休業は93日です。期間が短いですよね。これはどういうことなのでしょうか?

介護というのは育児と違い、始まりは突然で、いつ終わるかもわかりません(平均介護期間5年)。しかも、介護状態によって介護の中身が変わるため、だいたい1~2年間でプランが変わります。

となると、介護者1人がすべての介護を提供することはできません。もちろん、それができる方も居ると思いますが、ほとんどの方にとってはなかなか難しいことなのです。そのため、1人で悩まずに、たくさんの人に一緒に動いてもらう体制ができると良いと思います。

さて、この介護休業の目的ですが、「仕事と介護の両立の準備(社内の両立支援制度の確認介護認定の申請、介護施設の見学など)をするための期間」として位置付けられています。また看取りのために、この休業を活用することもできます。

介護休業は、みなさんに、介護を専念してくださいという休業ではなく、自分自身の生活を守るために、仕事と介護の両立を検討しながら、実際の準備や手続きなどを行なうことが趣旨なのです。

ちなみに、この介護休業の取得率はまだまだ数%程度ですが、この制度を使うことで、両立への第一歩が踏み出せるかもしれません。

 

経営者が押さえておくべきポイント

最後になりますが、この記事を読んでいる、社長さん向けの情報です。

現在、厚生労働省は、株式会社パソナに「平成29年度 中小企業のための育児・介護支援プラン導入支援事業」を委託しています。

中小企業に育児・介護の相談窓口を作るための導入支援をしています。介護プランナーが会社に伺って、さまざまな相談にのり、企業内の介護・育児離職を防ぐ体制を作りのお手伝いをするサービスです。

 

ご興味がありましたら、下記ホームページをご覧下さい。

 

ということで、先ほどの5つの提案に追加して、6つの提案とします。

  1. 介護に困ったときに読む本やホームページがあるので、情報を集める
  2. 親族に1人くらい、介護関係の仕事に就いている人がいるので、その人に助けて!と電話してみる
  3. 友人や近所の人で、すでに介護を経験している方に相談して、介護の注意点や近隣の社会資源を、リアルに聴いてみる
  4. 病院の相談員や、地域包括支援センターや行政に相談に行く
  5. 家族会議を開き、今後の介護について話し合う
  6. 会社の総務人事に、仕事と介護を両立できるように相談しよう。
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橋谷創(スクナクリエイト代表/社会保険労務士・介護福祉士)

橋谷創(スクナクリエイト代表/社会保険労務士・介護福祉士)

医療法人で人事・総務・行政対応等、総務人事全般を経験。実地指導や監査対応も場数をこなし、対応策などについては独自の視点も交えながら的確なアドバイスに定評あり。また、ディマティーニ・メソッドの導入により、介護現場のモチベーションアップを後方支援。マネジメント研究に日々取り組んでいる。