遺言書があって助かった事例


「遺言書」と聞くと、「まだまだ先のことだし大丈夫」、「うちにはそんな財産はないから関係ない」「私が居なくなってもうちの家族は仲がいいから大丈夫」など、自分とは関係のない人事のように感じる方も多いのではないでしょうか。

しかし、遺言書は残された家族の為にご自身の意志をしっかりと残しておく大切なツールです。もちろん今は健康的な毎日を過ごされていても、将来認知症になり正確な意思表示が困難になったり、突然病にかかったりすることも起こり得ることです。

どのような場面で遺言書が必要になるのか、遺言書があって助かった事例をもとに遺言書がどんなものなのか見ていきましょう。

 

 

遺言書があって助かった事例①:相続人の一人に多くの遺産をあげたい

 

  • 故人:Aさん男性【法定相続人:配偶者(妻)、長男・長女・次女】

晩年介護が必要となったAさんは妻と次女に介護をしてもらい生活をしていました。長男と長女は早くに家を出てしまい、次女は介護によって仕事をパート勤務に変更する前は家にお金も入れてくれていました。Aさんは次女に大変感謝しており、自身が亡くなった際には次女に兄妹の中ではより多くの遺産をあげたいと考えていました。しかし兄妹は仲が良いのですがAさんの死後、気の弱い性格の次女が自身の労を主張するとは考えにくいため、Aさんは心配をしていました。

そこでAさんは専門家に相談をして、次女への感謝の気持ちを明確にした公正証書遺言書を作成することにしました。Aさんの財産は、自宅の土地・建物(評価額3000万円ほど)と預貯金が2000万円ほどでした。遺言書の作成後、10年ちかい月日が経ち、Aさんは亡くなりました。Aさんの葬儀が終わり、一段落したところで相続の話になりましたが、ここで妻が引き出しから、公正証書遺言が出てきました。これを家族全員で確認しました。

遺言書には、自宅で妻と同居している次女に自宅の土地建物を相続させる、預貯金は相続人4人に均等に500万円ずつ相続させる旨が書いてありました。また、付言事項というところには、「私の介護をしてくれた次女に、今後、妻の介護もお願いしたいので自宅を相続させました。現金については、みんなに均等に相続してください。次女には大変お世話になりましたので、このようにしました。長男・長女はそれぞれ持ち家があると思うので色々と世話をしてくれた次女に対する私の感謝の気持ちを尊重してください。家族の健康と幸せを切に望みます。今までありがとう。父より」と。これを確認した家族は、父の想いを尊重して遺言書に沿って遺産分割の手続きを司法書士・行政書士に依頼したため、家族で争う事なく無事に相続手続きを終えることが出来ました。

通常、人が亡くなり、遺言書が見つからなかった場合には遺産は法定相続人(法律で定められている相続人)全員で話し合いをする遺産分割協議によりその分け方を定めます。

また、民法では遺産の分配割合を示した法定相続分というものがありますので、遺産分割協議の際に目安とされることもあります。法定相続分では遺産は兄妹に均等に分配されることになっています。

遺産分割協議では法定相続人全員の同意が必要となりますので、次女が自分の介護の労を主張しても他の相続人に認められなければ望んでいる遺産の割合を得ることは出来ず、最悪の場合裁判などの争いになってしまう事にもなってしまいかねません。

次女の性格によっては介護で苦労をした事実がありながら、それを主張できない事も考えられます。

例え仲の良いご家族だったとしても争いの種を残さず相続人同士が気持ちよく遺産を分割するためにもAさんの意志を残す「遺言書」はとても重要であったと言えるでしょう。

 

 

遺言書があって助かった事例②:お子様がいらっしゃらない場合

 

  • 故人:Bさん男性【法定相続人:配偶者(妻)、甥、姪】

Bさんは87歳で亡くなりました。配偶者の妻は年下で現在70歳です。Bさんにはお子様はおりません。

Bさんは生前自身にもしもの事があった場合、配偶者である妻が全て遺産を相続すると思っていました。しかし、近所で同じようにお子様のいらっしゃらない方が亡くなった際にその方の甥や姪が出てきて大変だったという話を聞きました。

専門家に相談をして確かめてみるとBさんには兄が2人おり、それぞれすでに亡くなっていましたが、一番上の兄に長男・長女がいるため、法定相続人は妻だけでなく甥や姪も含まれることを知りました。Bさんは甥や姪にほとんど会ったことがありませんでしたので、妻に迷惑を掛けたくないと「遺言書」を作成する事にしました。

Bさんの死後、Bさんの妻は遺言書をつかって相続手続きを専門家に依頼したため、スムーズに遺産を受け取ることができました。Bさんの妻は、遺言書だなんて大げさなのでは?と思っていたところもありましたが、実際に、Bさんが亡くなるとBさんの甥姪が自分たち夫婦の自宅など財産の4分の1相当の相続財産を請求してくるのでは?と少し不安な気持ちにもなっていたため、遺言書があって本当に助かったと思いました。

上記Bさんの場合お子様がおらず、ご高齢でご自身のご両親が亡くなられていたので、兄弟が法定相続人となっていました。また、その兄弟が亡くなっていることによりさらに甥や姪に代襲相続が発生し、甥や姪が法定相続人になってしまいます。

相続人には最低限の相続分を受け取ることができる「遺留分権」という権利があります。しかし、遺留分を請求できるのは兄弟姉妹以外の法定相続人となりますので、上記のBさんのようなケースでは遺言書によってしっかり配偶者である妻へ財産を相続させる事を示しておけば残された妻は甥や姪に遺留分を請求されることなく遺産を相続することができます。

相続が発生すると故人の戸籍を収集し法定相続人を調査します。遺言書が作成されていなかった場合には法定相続人全員で行う遺産分割協議を行う必要があるからです。しかし全く連絡をとったことのない遠縁の親戚に連絡を取ること自体が残されたご家族の負担となってしまう事も考えられます。遺言書はそのような手間やトラブルを防ぐことが出来るのです。

今現在、ご自身が困っていなくても、10年後、20年後に相続開始した際に、どんな状況となっているかは誰にも分かりません。家族への思いやりのある遺言書を通じて、残されたご家族の安心を守ることや、スムーズな遺産相続を実現してあげることは遺言書の有益な活用法ではないかと思います。少しでも将来の家族の安心を実現したいと思う気持ちがある方は、遺言書の作成をご検討されてはいかがでしょうか。

 

行政書士法人オーシャン
岡田 大地(おかだ だいち)


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