【知っておきたい】遺言の基礎知識


遺言書とは、故人の遺産について「どうしてほしいのか」を遺された人たちへ、意思を明確に表示するためのものです。
民法に定められたルール通りに遺言書を書くことで、法的に効力をもつことができ、その遺産について「誰に相続させるか」、「誰にどのくらい分配するのか」を決めることができます。
通常、遺産については法定相続人(配偶者や子 等)に相続されますが、遺言書を書くことによって法定相続人ではない人へ遺産をあげることもできます。

お元気なうちに遺言書を作成することで、その遺産を巡った「争族」(親族間でのトラブル 等)を防ぐことができたり、お世話になった人に感謝の気持ちを形で残すことができたりと様々な役割を遺言書が担うこともできます。ご自身のお気持ち次第では、ボランティア団体や公益団体等へ寄付することでご自身の遺産を社会貢献に活用いただくことも可能です。

遺言書にはいくつか種類(方式)がありますので、こちらではそれぞれ特性についてご紹介させていただきます。

遺言書の種類

遺言書は、普通方式遺言(3種類)と特別方式遺言(2種類)に分けられますが、現在作成される遺言書は、基本的に普通方式遺言の「自筆証書遺言」「公正証書遺言」の2種類が主流となります。普通方式遺言における秘密証書遺言は、ほとんど使用されていません。年間10万件ちかく遺言書が作成される中で、秘密証書遺言は年間100件前後と言われ、0.1%しか作成されていない状況のようです。また、特別方式遺言はさらに少なく、後述する危急時遺言でさえ、人口900万人超と日本で2番目に人口が多い神奈川県でも年間に2~3件の利用状況という事で非常にレアになるようです。

ここでは、一般的に流通している普通方式遺言の「自筆証書遺言」「公正証書遺言」についてご紹介いたします。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、自筆で書ける手軽さから、最も気軽に作成できる遺言書の形式であると思います。自筆証書遺言を法的に有効な遺言書として作成するには、いくつかルールはありますが、ルールさえ守れば、手間も費用もかけることなく気軽に作成することができます。
また遺言者が遺言書に書いた内容を他人に話したり、見せたりしなければ、遺言書の内容が他人に知られることがありません。
さらに、遺言書を書いたという事実も隠しておくことも可能です。

手軽に書くことができることから、自筆証書遺言が最も着手しやすいことは間違いありませんが、その反面、問題点も多くあります。
まず自筆証書遺言を書くときのルールを知らずに作成してしまったことで、遺言書自体が法的な効力を持つことができずに、相続手続きで使うことが出来なかったり、遺言書の内容に不満をもった人によって勝手に内容を書き換えられてしまったり、他の相続人がしらないうちに捨てられてしまう等の効力が発揮できない可能性があります。
また、あまり知られてはいませんが、自筆でかかれた遺言書はそのままでは効力がありません。自筆証書遺言を発見した場合、開封する前に家庭裁判所に対して、遺言書の検認申立てを行い、家庭裁判所を通じて有効に使用できるように手続きをしなくてはなりません。
もし、遺言書を発見した相続人がこのことを知らずに開封してしまうと過料を取られてしまうだけではなく、他の相続人から内容の改ざん等を疑われてしまい、思わぬところでトラブルの種になってしまうこともありますので、取扱いが難しいところです。

公正証書遺言

公正証書遺言はその確実性から近年、作成件数が増えており、最も利用されている遺言書となります。公証人と証人2名が立会いのもとで作成される公正証書遺言は、自筆証書遺言のように「一人で手軽に書く」ことはできませんが、確実に法的な効力を有する遺言書を作成することができます。
作成された公正証書遺言は公証役場で原本を保管するため、自筆証書遺言のように内容を改ざんされてしまうこともありません。さらに、遺言者の死後に、検認手続きは不要ですので、遺言書を発見した人が煩わしい手続きをする手間を省くことができるほか、すぐに遺言書を使って手続きをすることができます。

上記のように公正証書遺言にはメリットが多くありますが、デメリットとしては書いた内容が公証人と証人にはわかってしまうこと、費用がかかること、完成までに時間がかかってしまうことです。
自筆証書遺言とは違って、作成するには公証人と証人が立ち会わなければなりませんので、遺言書を書いた事実とその内容は公証人と証人には知られてしまいます。
基本的に公証人は守秘義務があるため、遺言書の内容等を第三者へ話してしまうことはありません。しかしながら、証人をお知り合いの一般の方にお願いしてしまうと、残念ながら絶対に第三者へ話さないという保証はありません。

もしこの点がご心配であれば費用はかかってしまいますが、証人を専門家(法律家 等)に依頼することで内容が誰かに漏れてしまうことを防ぐことができます。

その他の遺言書

秘密証書遺言

この秘密証書遺言は、「遺言書を本人が作成したという事実だけ」を証明する方式です。
内容を誰にも見せたくない という場合には大変有効な作成方式ですが、内容については保証されません。
そのため、自筆証書遺言と同じように開封する前に家庭裁判所で検認の手続きをする必要があります。手間と費用がかかるわりにメリットが少ないことから、あまり作成されることがありません。

特別方式の遺言書

特別方式の遺言書の種類は、一般危急時遺言や難船危急時遺言があります。
どうしても普通方式遺言での作成ができない場合のみ許されている方式ですので、特別方式の遺言書はほとんど作成されません。。

 

遺言書は、故人の最後の意思表示ですので、遺言書があれば遺産の分割については遺言書にかかれた通りに財産を分けるのが一般的です。
そのため、遺言書の内容がひどく偏ってしまっている場合等は余計なトラブルを引き起こしてしまうこともあります。
はじめに申し上げた通り、決められたルールに従って作成された遺言書でなければ法的に効力を持つことができず、相続手続きに反映させることができなくなってしまいます。

遺言書の作成をお考えになっている方は、遺言書の種類によって違うメリット・デメリットを確認し、一番自分に合う形式で作成しましょう。

遺言書の書き方

遺言にはいくつか種類があり、それぞれの遺言書は法律により書き方が定められています。正しい書き方をしていなければ、大切な家族へとの思いで作成した遺言書も全く意味を成さないものになってしまいます。
今回は、遺言書の中でも一般的な形式である、自筆証書遺言と公正証書遺言の書き方について説明をしていきますので、それぞれ要点を確認していきましょう。

自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)

自筆証書遺言とは、「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と、民法で定められています。ペンと紙があれば書く事ができ、特別な手続きも必要としないため、一番手軽に書くことができる遺言書になります。費用もかからず手軽な反面、遺言書を見つけた遺族は、その遺言書の内容を実現するために、家庭裁判所での「検認」という手続きを通じて遺言書を有効にする必要があります。この検認の手続きは、およそ2ヶ月ちかく掛かりますので、少々手間になるかもしれません。

自筆証書遺言の書き方のポイント

1:内容は全て自書をする事

パソコンやワープロで作成したもの、また代筆してもらったものは無効となります。音声やビデオ等の映像での遺言も無効になりますので、注意が必要です。

2:作成した日付を明記する事

作成日の特定が出来ないものは無効となります。日付印等も無効となります。ときどき、○年 ○月 吉日としてしまう方もいらっしゃいますが、作成日が特定できませんので、遺言書全体が無効になりますので注意が必要です。

3:内容の訂正、加除は決められた方法に従い記入

書き間違いの訂正や、文言の追加には法律で決められた形式があります。間違った内容の場合は無効となりますので、訂正の仕方にも注意が必要です。

4:署名、押印をする

戸籍通りのフルネームで記入する事が望ましいでしょう。印鑑は認印でも構いませんが、実印での押印であれば、より確実に本人が特定できますので望ましいと言えるでしょう。

5:その他

記載する項目や内容は、具体的に書きましょう。曖昧な表現や記載内容に不足があるとその後の手続きがスムーズにいきません。
不動産については、登記簿謄本の通りに記入し、土地については所在地、地番、地目、地積までをすべて詳細に記載しましょう。
銀行に預けている預貯金や金融資産については、その金融機関名、支店名、預金種類、口座番号まで漏らさずに記載しましょう。

6:遺言執行者

遺言書での遺産分割を円滑に進めるためにも、遺言書の中で遺言執行者を指定しておくとよいでしょう。遺言執行者とは遺言書の内容を実現する担当者で、相続人を代表する地位となります。兄弟相続などで、兄が執行者の場合、相続手続きを通じてケンカになってしまう場合もありますので、第三者を立てる事が望ましいと言われております。遺言執行者は遺言書でのみ指定できます。

7:封筒に入れ、封印をして印鑑を押す

改ざんされる事を避ける為に、書き終えた自筆証書遺言書は封筒に入れ封印をしましょう。封印に使用する印鑑は、遺言書で使用したものと同じものを使用します。
完成した自筆証書遺言は紛失を防ぐために、家族が見つけやすい場所へ保管するか、銀行の貸金庫など安全な場所へ保管することがポイントになります。しかし、利害関係のある家族が見つけてしまって、破られてしまうとその時点で遺言書は無くなってしまうほか、亡くなった方名義の貸金後は相続人全員の実印をもらって手続きをしなければ、開錠できないなど、実務上の取扱いは難しいところもあります。専門家に相談して管理してもらう事も検討してみましょう。

公正証書遺言の作成のポイント

公正証書の場合は、本人が実際に全文を作成するのではなく、公証役場にて予め遺言書の文案を送付してチェックしてもらい、当日は印字された遺言書に署名するだけとなりますので、全文を自筆で作成する遺言書とは作成方法が異なります。

1:遺言の内容を予め整理し、原案をまとめる

相続財産をまとめたリストを作成し、誰に何を相続させるのかを明確にして原案を作成します。

2:証人となる人に依頼する(2人以上)

公正証書遺言の作成には、証人2人以上の立ち会いが必要になります。相続トラブルを避ける為、利害関係のない第三者(行政書士や司法書士など)へ依頼をしましょう。有料となりますが、公証役場で証人の紹介をする事も可能です。

3:証人を2人以上立ち合いのもと、公証人役場へ出向く

必要なものを揃えて公証人役場へと出向き、遺言書の作成をします。
必要なものとして、遺言者の印鑑証明書、遺言者と相続人との関係の分かる戸籍、遺贈する場合は、その方の住民票(会社へ遺贈する場合は、法人の登記簿謄本)、不動産の登記簿謄本、固定資産評価証明書、通帳の写し。
また証人となる方の住民票も用意をしておきましょう。

4:公正証書遺言の作成

公証人が予め作成していた遺言書の原文を遺言者と証人2人に読み聞かせ、また閲覧させて内容に間違いないことを確認します。(※聴覚・言語機能障害者は、手話通訳による申述、あるいは筆談により口述に代える事が可能です。)
内容に問題がなければ、遺言者と証人2人は署名捺印をします。その後に、公証人も署名捺印をしたら、公正証書遺言の完成です。
公正証書遺言書は、原本とその写しである正本と、謄本の3通が作成をされます。そして、原本は公証人役場に保管をされ、遺言者には正本と謄本が渡されます。

以上が遺言書の書き方になります。遺言書をご自身で作成されることも良いですが、間違っていたでは済まされない重要な法律行為になりますので、行政書士・司法書士などの専門家にチェックしてもらう事をお勧めいたします。

 

行政書士法人オーシャン・司法書士法人オーシャン
代表行政書士 黒田 美菜子(くろだ みなこ)
行政書士 鎌田 昴伺(かまた こうじ)
https://www.ocean.jpn.com/


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