吉川美津子のお葬式あらかると

Vol.21 遺品整理業にスポット「アントキノイノチ」

アントキノイノチ今月は映画「アントキノイノチ」が全国で公開されました。舞台は遺品整理業の現場。この映画に登場するクーパーズという会社は、実在する遺品整理会社がモデルとなっていて、現場の様子や働く人達の描写がリアルに描かれています。原作者のさだまさしさんは、遺品整理業が取り上げられたテレビのドキュメンタリー番組を見て、この仕事を題材に小説を書きたいと思ったそうです。

遺品整理業の歴史はそう古くなく、ビジネスとして成立するようになってせいぜい15年ほど。葬儀費用の明瞭化が叫ばれ、そろそろ葬儀業界にもIT化の波が押し寄せてくるかどうか……という時代で、それまでタブー視されていた葬儀についてメディアで少しずつ語られるようになった頃でもあります。

遺品整理業者を活用する理由としては「残された遺族が高齢のため独力で片付けるのは難しい」「大きな荷物を運び出すのに人手が必要」「仕事などの都合で時間がとれない」「部屋をすぐに空け渡さなければならない」など理由はさまざま。他に、ひとり暮らしの方の孤独死、自殺や事件性に絡む後処理の依頼も少なくありません。核家族化、高齢化を背景に利用者のニーズは多様化しています。

映画のホームページには次のような言葉が書かれていました。
「失われた命や、遺されたモノの息吹に触れることで、少しずつ生きる勇気を取り戻していく」
10年ほど前、私が仏壇の営業マンをしていた時代に出会った、あるおばあちゃんを思い出しました。そこは都内高級住宅地、周辺の建物とは一線を画した木造2階建ての古いアパート。ご主人を亡くして一週間ほどのその室内には猫が7〜8匹いて、餌やトイレの砂が散らばり、悪臭が立ち込めていました。それでも 「もう何もやる気がしなくなっちゃって」 と言いながらも、ご主人の洋服をゴミ袋に入れていた様子が瞼に焼き付いています。ご主人のモノだけは整理しなきゃ、という気持ちだったのでしょうか?それともご主人に触れていたいという心境だったのでしょうか?それとも……。


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