吉川美津子のお葬式あらかると

Vol.18 「ぼたもち」と「おはぎ」で感じる日本の風情

お彼岸の食べ物とのいえば、「ぼたもち」あるいは「おはぎ」を思いうかべる人が多いでしょう。どちらも炊き上げて練ったもち米に小豆でつくった餡をからませた和菓子です。基本的には同じものですが、牡丹や萩の花が咲く時期にちなんで、春は「ぼたもち」、秋は「おはぎ」と名前がつけられています。

花の大きさと比例して大きいものを「ぼたもち」、小さいものを「おはぎ」といったり、「おはぎ」は粒あん、「ぼたもち」はこしあんという説もあるようですが、どちらかというと地域の呼称という色合いが強いよう。(秋に収穫したとれたての小豆は、皮まで柔らかいから粒あんにして「おはぎ」となり、越冬した小豆は、皮を取ってこしあんにして「ぼたもち」となるそうです)
最近では一年中「おはぎ」で通す店が多いような気もしますが……。

ぼたもちとおはぎではなぜお彼岸に「ぼたもち」「おはぎ」を食べるようになったのでしょうか?

日本人の生活の中で、米は明らかに特別な意味を持っています。米をついて固めた餅は、聖なる食べ物であり、福を呼ぶものともいわれ、神仏にお供えして儀式の時に用いたことは古来からの風俗として知られています。
江戸時代に入ると、元旦の鏡餅、雑煮餅からはじまって、五月のちまき、中秋の名月の月見だんごなど、季節の伏目に餅をついて食する習慣が各地に広まったそうで、お彼岸に「おはぎ」や「ぼたもち」を食べるようになったのもこの頃定着したようです。

小豆については、小豆の赤色には邪気を払うとか、病気の鬼が小豆の赤を恐れるという言いつたえがあるそう。小豆は良質なタンパク質、ビタミンB1、B6、カリウム、アントシアニン、葉酸等、バランスのとれた栄養成分を有し、漢方の成分として使われることもありますから、無病を願うにしても理にかなった食材といえるのかもしれません。昔は今と違って甘いものが貴重だったため、人々が集うお彼岸には皆でありがたくいただいたのでしょう。
また、赤い色はおめでたい色として信じられていたので、自分達が身につけたり食したりすることで「パワーを取り入れたい」という願いも込められていたようです。

春が「ぼたもち」、秋が「おはぎ」なら夏と冬は……?それにもしっかり名前がついていました。
夏は「夜船」、冬は「北窓」だそうです。

「ぼたもち」「おはぎ」はお餅と違ってすりこぎで半つぶしにして作るので、ペッタンペッタン音がしません。いつ作ったのかわからないというところから、遊び心満点のこんな言葉がうまれました。

「いつ(餅を)ついたのかわからない」

「(夜の闇で)いつ着いたのかわからない」

「夜船」

 

「いつ(餅を)ついたのかしらない」

「(北向きでは月がみられないため)月を知らない」

「北窓」

昔の人の想像力には脱帽です。季節感を言葉と結び付けている発想はぜひ見習いたいものですね。


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