吉川美津子のお葬式あらかると

Vol.12 遺影写真は生前に準備する時代

明るい遺影写真展新宿駅の地下の一角、行き交う人が足を止めて視線を送っている先にはライトアップされた額入りの写真がズラリ。

「明るい遺影写真展」

一風変わったこのイベントは、日本写真協会とアスカネット共同開催によるもの。展示されている写真のほとんどは、やさしい笑みを浮かべる高齢者で、全国各地の写真館や学生応募によって集められたものだそうです。
ある人はギター片手に、またある人はワングラスで乾杯のポーズ、さらに別の人は自分の畑で収穫された野菜とポーズ。そこにはいわゆる”遺影”らしさは全く感じられない。ごくありふれた、でも誰にもマネできないその人らしい表情が輝いていました。

最近どうやら巷では遺影写真への関心が高まっているようです。喜寿や米寿などの記念日や家族の行事をきっかけに「いずれ遺影に使えるように」と意識的に撮影する人だけでなく、遺影カメラマン、遺影写真館といった遺影の専門家に直接アプローチする人も増えているとか。

今でこそデジカメの普及で、高画質の写真がデータとして残っている場合が多く、四つ切サイズに引き伸ばしてもそこそこ見栄えの良い遺影写真になりますが、ひと昔前はかなりお粗末なものでした。
紙焼きの場合、顔の大きさが小指の爪ほどあれば物理的には可能であるけれど、どうやってもピンボケは避けられず、さらに背景画像を消したら自然になるかと思いきやますます表情が不自然になることも……。
本人が気に入っていた洋服をわざわざ喪服に着せ替えて(合成して)遺影写真にすることも珍しくありませんでした。

遺影写真は故人を身近に感じる最強アイテムのはずなのに、取り急ぎ作ったものが今後長く飾られてしまうのは、なんだか残念でなりません。

 

かれこれ10年以上前の話になりますが、某葬儀社が大規模葬の際に大きく引き伸ばしてパネルにした遺影写真を3枚並べたところ、
「ビジネスシーンでは見られない表情が見られた」「別の一面があることを知った」
など参列者と故人との間の距離感、会場の空気がいつもとは違っていたそう。以来、遺影3枚使い手法は別の葬儀社にも飛び火し、度々使われるようになっているようです。

今はデジタルの時代ですから、液晶フレームを祭壇に設置し、画像処理をした遺影を表示するケースも増えているようです。その場合は別にプリントのサービスも行っているようですが、四つ切サイズではなく普通サイズ(L版)を希望する人が多いのだとか。遺影写真にも変革の波が来ているようです。


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