事前準備

長年にわたり会社を支えてきた重要な人物を失くすことは、組織の根幹を揺るがすリスクを伴います。社内外に不安をもたらし、混乱やトラブルを招く可能性も否定できません。そうした深刻な事態を避けるために社葬は有効ですが、社葬の準備にかけられる時間は限られており、社葬執行のために決めなくてはならない事項は数多くあります。ご逝去されてからでは対応が間に合わず、最悪の事態を引き起こしてしまうかもしれません。重要な役割を担う社葬を効果的に活用するなら、危機管理として万が一に備え、事前に準備しておくことが、会社組織としてできるリスクマネジメントでもあるのです。

社葬の企画と準備

社葬を怠りなく進めるためには、前準備として「規定」化しておくべきでしょう。実際に不幸があった場合は、内密にしかも細心の注意を払って準備することが大切です。

危機管理という企業としてのマネージメントから発想を

社葬は、危機管理という企業としてのマネージメントから常に発想すべきである最重要課題といえます。トップの死という不幸を乗り越え、新たな体制を万全にスタートさせるためには、社葬は必ず成功させなければならない儀式です。
社葬を行うにあたっては、しなければならない手続きや用件・課題が多々あります。
社葬の執行は総務部(長)の職務です。慶弔の弔の行事として、とりわけ社葬は周到に万全な準備と体制を敷いて、滞りなく運営をしていかなければなりません。

運営本部の設置

実行委員会で組織する運営本部を中心に、受付(受付係、来賓確認係、案内係、礼状配布係などが置かれます)、接待(接待係、遺族係、僧侶係)、式場(式場内係、下足係、会葬者誘導係、救護係)、会場外(場外案内係、自動車係)、記録(記録係)などの各セクションに分かれ、当日は運営していきます。各セクションには責任者を置きます。

当日は、責任者の指示に従って、現場で最終の打ち合わせ後に点検します。その確認が終わったら、各セクションの責任者は実行委員長へ準備完了の報告をします。社葬が始まってからも各セクションでは、進行表を確認しながら会場に注意を払います。

もしも突発の出来事があった場合は、各係から責任者へ、そして責任者から実行委員長に素早く、的確に情報を伝達します。本部にはすべての情報を集約させることが肝要です。どのような対応を取るかの判断は、本部長に委ねられているからです。予定していなかった来賓や重要な弔電が届くことも多々あります。

また近年は、自然災害が多発しております。直接的な被害を受けなくても、道路や鉄道などの交通網が寸断されることも考えられます。そのため会場の外の情報なども入る組織づくりも必要です。とくに当日は地震などの備えは十分にしておきましょう。これもリスクマネジメントの一つといえます。

規模が小さい場合や会場によっては兼務したり、必要ないセクションもあります。適宜考慮しながら、よりよい運営組織を構築してください。

社葬実行委員会

社葬を実行する委員が文字通り社葬実行委員です。この社葬実行委員をまとめるのが社葬実行委員長で、日ごろから経営トップをサポートし実務に強いという立場から、総務部長が務めることが多いようです。 ただ社内事情などから総務部長が引き受けられない場合は、総務部の次長や秘書課関係の部署のトップが選任されるのが一般的なようです。

実行委員会と各責任者の決定

社葬実行委員長は社葬実行委員を選任します。社葬実行委員は社葬業務の各セクションの責任者を兼ねており、各セクションの下にそれぞれ各係の担当者を選任します。
社葬を担うセクションには規模によっても違いますが、例えば本部や受付、接待、式場、場外、記録などに分かれ、その下に各係を設置します。
各セクションの責任者が実行委員であり兼務したりしますが、おおむね4~5人の編成となります。それぞれの企業での実務に近いセクションの責任者となります。

実行委員会の役割

社葬実行委員会は葬儀場所と日程の決定、宗旨の決定、ご遺族側の参列人数、葬儀費用の負担の仕方、供花・供物・香典の受諾の有無などを決定していきます。社葬当日は、各係への指示伝達や各係からくる連絡の中枢を担う事務局的な立場の実行本部を組織します。
このように社葬の基本方針を練り上げていくとともに、喪家との綿密な打ち合わせも行います。ご遺族が社葬の辞退を申し出た場合はその意見を尊重します。しかし、企業人としての故人の業績などを知らず、遠慮をして辞退する場合もないとは言えません。故人の企業への貢献や、企業としての立場、またご遺族のメリットなどを説明することで、納得いただけることも多いようです。まず喪家に社葬の意味などを丁寧に説明する必要があります。

事前に準備しておくべき社葬取扱規定について

社葬の事前準備として、最も重要な核となるのが、社葬取扱規程です。これは、社葬執行対象者や葬儀を運営する葬儀実行委員、それをまとめる葬儀実行委員長などを決め、社葬に必要な役割や配置を明確にし、費用を策定する助けとなるものです。
費用面においては、社葬費用を福利厚生費として損金処理するために、会社負担となる費用をあらかじめ規準化し、社葬取扱規程の中に明文化しておくことで、事後処理をスムーズに行うことができます。
実務面においては、社葬の規模や形式、葬儀社の選定、会場や日程、概算予算、葬儀委員などを明確にし、可視化していくことで、社葬の骨子が固まります。
また、社葬は会社の業務として行われるため、社葬執行対象者や費用の決定などについては、税法上、取締役会の決議を得て、その際の議事録を残しておくことが求められます。また社葬費用を経費として計上するためにも、取締役会の議事録が必要不可欠です。

<社葬取扱規程内容の一例>

総則 社葬執行対象者を規定する
定義 社葬の主催者、喪家と会社の費用の取決めを定義する
決定 社葬の実施を取締役会にて決定することを明記する
名称 取締役会にて実施が決定した葬儀の名称を明記する
基準 現職の会長、社長、相談役など、社葬を行う対象の規準を規定する
費用 会社が負担する社葬費用の範囲を規定する
広告 必要に応じて新聞等に広告を掲載することを明記する
香典・供花・供物 辞退する場合はその旨を規定する
施行施行 期日を規定する

名称などは多くの企業で使われているものを示しますが、とくに決まりはありません。各社に相応しいものでかまいません。

社葬の決定事項

社葬の決定で大事な部分としてコンセプトがあります。故人を顕彰する目的なのか、取引企業への感謝の表明なのか、ご遺族への弔意なのかによって、会場は厳粛なお寺が合うとか、利便性のいいホテルの方が最適などとなります。

社葬のコンセプトや目的を明確に

社葬までの時間は、密葬などがあると1ヵ月前後しかないと考えられます。決めることが多岐にわたり、時間との勝負などという専門家もいるほどです。
まず、社葬のコンセプトや目的を明確にしておくことが重要です。そのコンセプトに沿った社葬を展開することで、社葬に込めたメッセージがより伝わりやすくなるからです。
そして、葬儀委員長の選任から日時や規模、式場の決定、宗教者への依頼などを行います。

葬儀委員長の決定

葬儀委員長は社葬の代表者となります。故人が相談役や会長、役員、社員の場合は社長がなることが一般的です。故人が社長の場合は会長や次期社長がなります。外部に依頼することもあります。
企業や故人と親交が深く社会的な地位、年齢、参列者との兼ね合いなどを考慮し選任します。社葬を経験している同業他社の例を参考にするのもよいでしょう。

弔辞奉読者の依頼は本来、奉読者の方から申し出るものですが、最近では企業やご遺族などから依頼することも多くなっています。
取引先代表、友人代表、社員代表などが主なものですが、業界代表や所属団体長、故人と親しい政治家に依頼することもあります。

参列者の決定

参列者数を予測し参列者の人数を絞り、式場などを検討します。取り引き先の数や所属団体によって大きく異なりますが、こちらも同業他社の同規模程度の企業を参考にすると分かりやすいです。

形式・名称の決定

社葬の形式や名称を決定します。密葬は宗教儀礼に基づいて行い、社葬は無宗教でということもあります。また近年は社葬という名称を使わず、お別れの会とするところも多くなっています。

日程の決定

日時は取引企業が多く参列することなどから土日、祝日などを避けて平日の昼間に行うことが多いようです。ただ、これにはたとえばホテルが会場となる場合、婚礼が土日、祝日に集中するため、会場面の確保という面もあるようです。

近年は土曜日などに行うところもあります。また週始めの月曜日や週末の金曜日も避けるとよいようです。さらに月初や月末などもできるだけ避けましょう。

また年度末の3月や株主総会の多い6月などは、来賓が多忙になる時期と重なる可能性もあります。スケジュールを確認して慎重に決定するとよいでしょう。

会場の決定

式場は会葬者の人数や交通の便、駐車場の有無などを考慮して決定します。最近は利便性という面での選択肢として、葬儀専用会館やホテルを使うことも多くなっています。

宗教者の決定

宗教者の決定では、仏式の場合は菩提寺の住職に依頼することが原則となっています。社葬の規模が大きい場合や、菩提寺が遠方にある場合などは、住職に相談して意見を仰ぐようにしましょう。

香典や供花への対応の決定

香典や供花を拝受するか、しないかというのも重要な決定事項です。供花や供物を受ける場合は会社で一括して取りまとめます。その後の対応がしやすくなります。また供花の並べ順は故人や企業との関係性もあることから、気を使う部分です。各部署と話しながら事前に決めておきます。
また香典や供花を辞退するときには新聞広告や社葬通知状にその旨を明記しておきます。新聞広告は2週間前ぐらいに掲載するのがよいようです。遅くとも1週間ぐらい前には掲載したいものです。

社葬マニュアルの作成

社葬マニュアルとは、社葬取扱規程をもとに、ご逝去から社葬終了まで、社葬を実施するのに必要な人員の役割や配置などをまとめ、それぞれの担当者はどのようなタイミングでどう動いたら良いかなどをマニュアル化したものです。
社葬には社内外の多くの人が関わるので、危機管理という視点からの対応も必要になります。社葬対応マニュアルを作成することで、それぞれの役割が明確になり、全体の流れが掴みやすくなるだけでなく、社葬に関わる人たちとの意思疎通や打合せも円滑に進みます。
社葬マニュアルを共有しておくことで、ご逝去直後から社葬当日までの準備や実施をスムーズに行うことはもちろん、事後の役割や対応まで把握することが可能です。また、作成した社葬マニュアルは会社の財産として後世に残し、活用することもできます。

<社葬対応マニュアルの内容例>

  • ● 葬儀実行委員会の役割
  • ● 葬儀実行委員会の組織図
  • ● 指揮命令系統図
  • ● 葬儀実行委員会の各係と役割
  • ● 社葬の進行
  • ● 社葬後の各係と役割

社葬連絡簿の作成

訃報を伝える優先順位の決定や、参列者の人選を行うため、社員や労働組合、得意先や取引先、税理士や弁護士などを含む関係先や株主など、会社に関わるすべての人を網羅した社葬連絡簿を作成しておく必要があります。連絡先の名前はもちろん、経歴に誤りや洩れは許されません。生年月日や学歴、職歴、関連会社の役員兼任の有無など、正確に把握しておくことが大切です。
名簿は作成した後、定期的な確認や更新が必要です。期日を決めて、確実に行うようにしましょう。
社葬連絡簿の中で、社内の責任者へ訃報を知らせるために、社内に限定して使われる連絡簿や連絡網を、緊急連絡体制、または緊急連絡網と呼ぶ場合もあります。

<連絡先の整理>

社葬連絡簿
対象者 会社に関わるすべての人
記録・整理方法 代表者名・担当者名を経歴まで正確に記録し、連絡先、メールアドレスを優先順位順に整理
緊急連絡体制、緊急連絡網
対象者 社員
記録・整理方法 各社員の連絡先、メールアドレスを把握し、社葬の役割別に作成

葬儀社の選定

社葬を成功に導くためには、信頼できる葬儀社のサポートが必要です。社葬経験や実績が豊富な葬儀社がパートナーとなれば、初めての社葬であっても、当日はもちろん、事前準備の第一歩となる社葬取扱規定の作成から、終了後のフォローまでしっかりとサポートしてくれるため、会社にとってリスク回避やコスト削減にも繋がります。

<信頼できる葬儀社を見極める条件>

1 対応が丁寧でスピーディーであること

24時間365日、昼夜を問わず対応してくれる。
会社や遺族の不安や心配ごとに丁寧に耳を傾け、迅速に解決してくれる。

2 企画・提案力があること

会社や遺族の要望に沿った葬儀を企画提案してくれる。
漠然としたイメージを的確に把握し、具体化してくれる。

3 対応が柔らかく安心感があること

的確なアドバイスや気遣いができ、ごまかしや押し付けがない。
見積もりや企画内容が明確で、不明な部分があれば丁寧に説明してくれる。

4 リード力があること

葬儀のプロとして、社葬に関わる人員を先導し、力強く牽引してくれる。
事前準備から社葬当日、事後処理まで淀みなくサポートしてくれる。

5 経済感覚が適正であること

会社の規模や人員に応じた内容の提案や、式場選びをしてくれる。
適正で無駄のない費用を算出し、明確な見積もりを提示してくれる。

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