社葬の参列マナー。連絡から準備、服装、必要な持ち物まで解説

小林憲行【記事監修】
小林憲行

記事監修小林憲行

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社葬とは、大きく会社へ貢献した方が亡くなった際などに、会社を挙げて執り行うものです。この社葬に参列する際の服装や持ち物は、どうするべきなのでしょうか。個人の葬儀とは異なる部分のある社葬。社葬の連絡を受けたときの対応や準備、平服のマナー、持っていきたい物などをまとめてご紹介します。

会社の葬儀は、礼儀とマナーが特に重んじられる場所です。いざというときでも落ち着いて参列できるよう、基本的な知識を確認しておきましょう。

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まずは詳細を確認する

社葬実施の連絡は、案内状や電話、メールなどで届きます。まずはじめに、「いつ」「どこの」「だれが」亡くなったたのか。そして、通夜、葬儀・告別式の日時と会場、担当の葬儀社、葬儀委員長などを確認します。万が一参列できない場合には、弔電を打つことになります。弔電を打つ際に必要となりますので、弔電の送り先についての記載があったら、控えておきましょう。故人やその会社との関係が深い場合は、直接訪問して詳細を確認しても良いでしょう。この場合は、平服で構いません。

近年の社葬の場合、香典の受け取りを辞退していることがほとんどですが、案内状などに記載がない場合でも、念のため確認したほうが安心です。また、香典は辞退していても、供物や供花は受け付けている場合があります。香典や供花・供物を辞退しているのか、受け付けているのか、わからない場合は問い合わせておきましょう。

参列者の人選を行う

場合によっては役員会を招集し、社葬への対応を協議します。役員会では、「通夜への出欠席」「香典の金額」「葬儀・告別式へ誰が参列するか」「何人参列するか」「手伝いを派遣しなくてよいか」「弔辞を誰が書き、誰が読むのか」などを決定します。

社葬に参列する代表者は、故人より下の役職者が参列するのは失礼にあたるため、同等以上の役職に就いている人を選ぶことが一般的です。同等以上の役職を担う人が参列することで、故人の功績に対する敬意と、その会社に対する自社の姿勢を示すことができます。

故人と特別に深い親交があった場合は、あらかじめ先方に問い合わせた上で、可能なら通夜にも出席すると良いでしょう。手伝いの派遣についても先方に確認し、必要なら「いつ」「どこに」「何人派遣したら良いか」など、詳細を詰めておきましょう。

参列できない場合の対応

同等以上の役職者の都合が合わず、やむをえず参列できない場合は、代理人を立てた上で弔電を出し、後日改めてお悔やみ状を送ると良いでしょう。代理人は、本来参列するはずだった同等以上の役職者の名刺を持って参列します。代理人の参列も難しい場合は、「弔電」や「供花・供物」「香典」を送付することで弔意を示すこともできます。

弔電の宛先は喪主名とするのが一般的。弔電の届け先は原則として故人の自宅とします。 弔電の受付時間は午前8時から午後10時までとなっており、午前8時から午後7時までに打った弔電は当日中に配達されます。 電話で弔電を打つ場合は、ダイヤル115にかけます。

参列の可否や人選などが決定したら、案内状による通知だった場合は通常同封されている返信用ハガキを使い、電話での連絡だった場合は電話、メールでの連絡だった場合はメールで、速やかに先方に連絡を入れるようにしましょう。

弔辞を頼まれたらどうする?

弔辞を頼まれた場合は、断らずに引き受けるようにしましょう。主催者側は、社員、関係会社、各種団体、故人の交友関係などからバランスを考え、慎重に人選し、周囲に確認するなど入念に下準備をした上で、「ぜひこの人にお願いしたい」と考えて依頼しているため、弔辞を断ることは失礼にあたります。奉読時間は、3~4分、文字数で1,000字程度が目安とされています。

一方で、弔辞の依頼がなかった場合でも、故人と特に親しかったり、お世話になったりしたため、「ぜひ弔辞を述べさせていただきたい」と思うなら、自分から申し出ることも可能です。その場合は、早めに先方に相談しましょう。

一般的な弔辞の構成内容
  • 故人との関係を説明
  • 故人に語りかける(ただしキリスト教の場合は語りかけない)
  • 故人の人柄や功績についての賛辞やそれにまつわるエピソード
  • 故人へのお別れの言葉

弔辞の内容は、故人の業績や人柄をたたえ、遺族への哀悼の意を述べるのが原則です。ただし、社葬の場合は遺族への哀悼の意は短くまとめ、場が間延びしないよう、3分以内におさまるようにするのが一般的です。

特に、故人の氏名や会社名、生年月日や経歴、業績や功績は事前に調べ、間違いがないように注意しましょう。弔辞文ができ上がったら、主催者側に他の弔辞との重複がないか、事実誤認がないかなどの確認をしてもらうことが大切です。

忌み言葉に注意!

葬儀の場で使用を避ける忌み言葉とは、繰り返しの表現や生死を直接的に表現する言葉、不吉な印象のある言い回しを指します。繰り返しの表現を避けるのは、人が亡くなるという悪いことが、この先何度も起こるというイメージを引き起こさないようにするためです。弔辞で忌み言葉を使わないように注意しましょう。

社葬に参列する際の流れ

受付

会場に着いたらまず受付に向かい、次の順序で受付を済ませましょう。

(1)お悔やみの言葉を述べる
(2)香典を渡す(香典辞退の場合は省略)
(3)名刺を差し出す

受付の人に記帳するよう促された場合は、名刺の提出とあわせて会葬者芳名録へ記帳も行います。

社葬の受付で名刺を渡す際のマナー

名刺は、左下を折るか、右肩に「弔」の字を書いておくのが慣例になっています。

代理として出席するときは、本来出席するはずの人の名刺の右肩に「弔」、自分の名刺の右肩には「代」と書いて、受付で2枚差し出します。

弔問

受付が終わったら、係の人の案内に従って会場に入り、宗旨に合わせた形で故人の冥福を祈ります。

仏式のご焼香
(1)一礼し、祭壇に進む
(2)親指・人差し指・中指で抹香をつまみ、香炉に移す
(3)合掌後に祭壇と遺族へ向かってそれぞれ一礼する
※焼香の正式な回数は宗旨や地域の習慣により異なりますが、会葬者が多い場合は1回までで済ませましょう。

神式の玉串奉奠(たまぐしほうてん)
(1)玉串の葉側を左のてのひらに乗せ、根元を右手で持つ
(2)祭壇に進み、一礼する
(3)玉ぐしを右に回し、いったん根元を手前にする
(4)左右の手を持ち替え、さらに右に回して、根元を祭壇に向ける
(5)祭壇に玉串を置き、二礼二拍手一礼をする
※弔問のときの「二拍手」は、音を立てない「しのび手」で行いましょう。

キリスト教式の献花
(1)牧師または神父と遺族に一礼後、右手に花、左手に根元がくるように受け取る
(2)祭壇に進み、献花台の前で遺影に一礼する
(3)花を右に回して根元を霊前に向け、献花台に捧げた後、一礼する

社葬におけるマナー違反
  • 名刺交換をするのはNG
    社葬には取引会社の方や顧客なども参列しています。仕事の延長のような感覚でいると、つい名刺交換を行ってしまうかもしれません。しかし社葬はあくまでも葬儀です。名刺交換はマナー違反となりますので、行わないように注意が必要です。
  • 商談や打合せをするのはNG
    名刺交換と同様、葬儀である社葬の場では、仕事である商談や打合せを行うことはマナー違反となります。また、知り合いに会ったからと言って、私語や雑談は控えるようにしましょう。
  • 通夜振る舞いを断るのはNG
    弔問後、遺族や会社が用意した「通夜振る舞い」に案内されることがあります。一口でも口にすることが故人への供養になるので、声をかけられた場合は断らず、同席しましょう。
    ただし、長居は迷惑となりますので、食事を終えたら遺族や葬儀責任者に挨拶し、速やかに退席しましょう。

社葬に参列するときの服装

社葬でも、普通の葬儀と同じように、暗い色のスーツや略礼服を着て参列するのが基本です。平服が指定されることがありますが、その際も基本的に派手な色や装飾は身に着けず、地味な格好を心がけましょう。

スーツの色は、男女ともに黒か濃紺色を選んでください。無地、もしくは目立たないストライプ柄であれば問題ないとされています。肌が見えない丈の長袖を選びましょう。スーツの中には白のワイシャツを選んで、男性は黒のネクタイを締めます。

女性の場合は、ワンピースでもよいでしょう。その際、スカート丈は膝下のものを選ぶのがポイントです。

服だけでなく、靴やカバンも黒のものを選びます。男性は光沢や金具の目立たない革靴を、女性はフォーマルなパンプスを選びましょう。その際、ヒールは3~5センチ程度のものが理想です。また、素足ではなく黒色のストッキングも履いておきます。

アクセサリーは、結婚指輪を除き、身につけません。ただし女性の場合は、一連タイプの真珠のネックレスなど、華美でない程度に着用してもかまいません。

社章は基本的には外していきますが、企業の代表として参列する場合にはつけることもあります。

避けた方がよい装いや持ち物

一般の葬儀と同様に、避けた方がよい装いもあります。

まずは髪型に気を配りましょう。男性は、清潔感のあるスタイルに整えます。女性の場合は、まとめる位置を下の方にしましょう。そしてメイクも薄めにして、チークやアイシャドウが目立たないようにします。ただし、口紅は健康的に見せるために多少色があってもかまいませんが、派手な色合いは避けた方がよいでしょう。

持ち物にも注意が必要です。バッグは、金具などが目立たない布地の素材を選んでください。

特に、蛇など動物の革を使ったものは殺生を連想するので控えます。靴に関しても金具の目立つものや、光沢のあるものは避けてください。また、ネクタイピンは光るためよくないとされています。その会社の代表として参列するつもりで、身だしなみには気を付けましょう。

平服指定の場合は略喪服を着用して参列する

葬儀では喪服を着るのが通常ですが、社葬の場合は「平服でお越しください」と指定されることがあります。喪服は略喪服、準喪服、正喪服の順に正式でかしこまったものとなりますが、会社から平服を指定された場合は、略喪服を着ていきましょう。その際は、男女共通で黒・紺・ダークグレーなど、暗い色のスーツを選んでください。

平服には普段着という意味もありますが、社葬の場合は格式の高い服装ではなく、落ち着きのある服という意味合いがあります。だからといって礼儀を欠いたり、カジュアルにしたりしていいというわけではありませんので、注意してください。

社葬に必要な持ち物

社葬に必要な持ち物は、数珠、名刺、香典袋(不祝儀袋)、袱紗です。数珠は仏式の葬儀のときに持っていきます。日本のほとんどの葬儀は仏式なので、持参しておくと安心です。

名刺は会社の代表として参列する場合、必須のアイテムとなります。

弔事で渡す名刺には作法があり、右肩に「弔」という字を書いたり、左下を折り曲げて渡すことで弔いの意を示すことができます。また、代理人の場合は、弔の代わりに「代」という字を書くこともあります。

香典の受付がある社葬の場合、香典袋(不祝儀袋)は忘れずに持っていきましょう。社葬の香典の相場は、会社同士の付き合いや故人の役職で変わってきます。だいたい1万~5万円が一般的ですが、香典の慣例が会社内にある場合は、そちらに合わせることをおすすめします。

香典袋を包むための袱紗は、包み方にも注意が必要です。正方形ものなら右端から包みます。二つ折りのタイプなら左開きのものにしましょう。

社葬と一般的な葬儀との違いとは

社葬には、企業を創り上げた社長や、多大な貢献した社員を弔い、功績を称えるという意味があります。大きな会場で行われることが多く、数百~数千人が参列することもあります。また、社葬を行うことで、社会に対して企業の組織力・信用力を示したり、広報的な意味合いを持ったりすることもあるでしょう。

お亡くなりになった方を哀悼する大切な儀式であることは間違いないですが、企業にとっては社会に存在感を示すという、大きな意義もあります。

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