遺体を自然に還す究極の自然葬「風葬」とは

小林憲行【記事監修】
小林憲行

記事監修小林憲行

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風葬は空葬とも呼ばれ、人の遺体を通常の火葬や土葬といった方法ではなく、自然の中に安置して吹きさらしにすることで消滅させる葬儀方法です。

かつては沖縄を含め、世界中で行われており、今でも一部地域で採用されている方法です。
この風葬について、具体的な方法や例をご紹介します。また、風葬が選ばれていた理由を宗教や地理上の問題から解説します。

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風葬とは

風葬とは遺体を葬る方法の一種です。曝葬(ばくそう)、あるいは空葬と呼ばれることもあります。亡くなった人の遺体を土葬や火葬といった方法では埋葬せず、そのまま雨風に晒すことで自然に還すのが特徴です。

衣類を着用させたまま行われることが多く、遺体を安置する場所は木の上や洞窟の中、崖が多く、棺や小屋に入れることもあります。特別な理由から台の上などに安置されることもあります。周囲には四角や円形に小石を積み重ねて風葬墓とします。

風化した遺体はそのまま放置されることもありますが、遺骨を水で洗浄し、改めて安置される場合もあります。沖縄ではこのプロセスを「洗骨」と呼ばれていました。

このように複数の段階を踏んで死者を弔う形式の葬儀を複葬と呼びます。
ちなみに、風葬は農耕民族より遊牧民族に多くみられる葬送です。

今でも風葬が行われている地域

風葬が行われる地域は、北アメリカ、オーストラリア、東南アジアなど世界各国にありました。しかし、多くの地域では時代が進むとともに風葬の風習も廃れていきました。その理由はさまざまで、衛生上の問題や、民間信仰が廃れたこと、近代化により風葬のやり方が否定的に捉えられるようになったことなどが挙げられます。

しかし、現在でも風葬を行っているところもあります。

例えば、バリ島の北部トルニャン村では風葬が行われています。亡くなった人をそのまま安置することで見送ります。この村ではタルムニャンと呼ばれる香り高い木が、遺体の腐敗によって生じる死臭を消してくれるので、風葬による悪臭などに悩まされることはありません。

また、ボルネオ島のイバン族の風習では、風葬は特別な人に施されます一般的な住民は土葬されますが、優秀な指導者に限って、風葬が行われます。台の上に乗せて風葬することで、優秀な指導者が神となって住民を守ると考えられているからです。

沖縄と風葬

日本ではかつて沖縄や奄美で風葬が行われてきました。

これらの地域では、人が亡くなった場合はまず棺に納めますが、遺体が風化するのを待って遺骨を取り出し、洗骨という手続きを経ることとされていました。この洗骨は親族の女性の手によって行われるのが慣習でした。風葬が行われた主な地域は「神の島」と呼ばれる久高島や、久米島です。

その中でも人目につかない海岸や洞窟が、遺体の安置場所としてよく選ばれました。久米島のヤジャーガマ洞窟では明治期まで風葬の慣習があり、人骨の入った壺が今でも洞窟内に安置されています。

沖縄では風葬が戦前まで行われていましたが、ほとんどは戦後に廃止されました。

洗骨の担い手が女性であったことから女性解放運動の高まりに伴って指摘を受けたこと、衛生面について保健所の指導を受けたことがその理由です。女性解放運動では、「火葬場設置運動」「洗骨廃止運動」という形で女性たちが洗骨の廃止を訴えました。

現在、風葬を採用しているところはほとんどありません。多くの地域に火葬場が設置され、沖縄以外の本土と同じように墓地への埋葬が一般的となっています。風葬の風習は現在の沖縄の墓地の形式にも影響しています。風葬の際には遺体の周りへ石を積み上げて室にしていたので、沖縄では山と一体化したような大型のお墓がよく見られるのです。墓地を設置する場所として、人目につかないような人里離れたところが選ばれがちなのも、風葬の風習を引き継いだものと言われています。
また、竹富町や与那国町などの離島では未だに風葬の風習が残っています。

風葬が選ばれる理由

一つには宗教的、哲学的な理由が挙げられます。遺体を自然に戻す自然回帰の思想が根底にあることもあります。
また、離島では火葬設備がないことや埋葬のための土地がないという地理的な問題などから風葬が選択されることもありました。前述の沖縄では、こうした物理ないし地理的な制約という理由だけでなく、島に住むお年寄りの間に残る民間信仰が尊重されていたという面もあります。
さらに、沖縄においてはニライカナイ信仰という民間信仰が、風葬の風習の根底にあると言われます。これは、祖先の霊が守護神になる場所、ニライカナイを信仰するものです。
そして、亡くなった時点で遺体には穢れがあると考えられており、遺骨を洗い清める洗骨のプロセスが必要だったのです。

まとめ

現代では耳慣れない葬儀方法である風葬について、お伝えしてきました。奇抜な印象を与える風葬ですが、現在も日本の一部地域では風葬の風習や、かつての風葬の影響を受けた墓地などが残されています。風葬に類似するものとして、現代では樹木葬など自然に近いところに遺体を安置するという葬法も注目されています。
葬儀について深く考えたいという方や相談してみたいという方は、お気軽にご連絡ください。

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