密葬とは、後日お別れ会や本葬を実施することを前提に、近親者だけで行うお葬式です。密葬では親しい人だけで故人を見送り、本葬では幅広い方々に故人を偲んでもらいます。
この記事では、密葬の特徴や家族葬・直葬との違い、費用相場、式典の流れなどを紹介します。
目次
密葬とは?本葬を前提に身内だけで行う葬儀
密葬は、実際に参列したり実施したりする機会が少なく、具体的な内容を知らない方が多いかもしれません。故人や遺族の意向で密葬を検討しているなら、あらかじめ密葬について調べておくのが大切です。まずは、密葬の意味と特徴を紹介します。
密葬の意味
密葬とは、本葬の実施を前提に、参列者をごく近しい身内に限定して公表せずに行うお葬式です。生前に故人が密葬を希望していたり、周囲に葬儀を知られたくなかったりする場合に、選択されています。近年では本葬の有無にかかわらず、お葬式の実施を広く知らせず、身内だけで行う葬儀を密葬と呼ぶことも増えています。
なお本葬とは、多くの参列者を見込んだお葬式やお別れ会などの儀式・式典で、「社葬」「団体葬」は本葬に該当します。密葬は、家族や親族だけで故人と最後の時間を過ごしたい場合に適した葬儀形式です。
密葬の特徴
密葬の最大の特徴は、限られた近親者のみで静かに故人を見送ること。少人数なので、参列者の対応をする遺族の負担が軽減され、他の葬儀形式より故人と最後の時間をゆったり過ごせます。
一方で、密葬は本葬を別途実施するため、1回でお葬式を済ませるより費用が高くなりやすいです。また、葬儀の実施を公表しないので、参列者への情報統制が必要な点も一般的なお葬式と異なります。密葬は、秘密裏に行う葬儀形式で、通常のお葬式とは過ごし方や対処方法が大きく違います。
密葬と家族葬・直葬(火葬式)の違い
近年、お葬式の存在を広く知らせず、ごく近しい身内だけで行う小規模なお葬式を希望するご遺族が増えています。
小規模なお葬式には「家族葬」や「直葬(火葬式)」などの種類があり、密葬と混同される場合も少なくありません。しかし、家族葬・直葬(火葬式)と密葬では、運営方法や参列者、実施の意図などが違います。家族葬・直葬(火葬式)と密葬の正しい意味を理解して、それぞれの違いを整理しておきましょう。
密葬と家族葬の違い
家族葬とは、家族・親族・親しい友人など限られた参列者で実施する小規模な葬儀。参列人数は少ないですが、一般的な葬儀と同じように宗教者の立ち会いのもと通夜や告別式を行います。
密葬と家族葬は、いずれも参列者の範囲を限定する葬儀形式ですが、参列者の範囲や式典の回数が異なります。密葬では参列者を近親者に絞るご家庭が多く、家族葬よりさらに規模が小さくなるのが一般的です。また、密葬は本葬やお別れ会を別途行いますが、家族葬では追加の式典は行いません。
密葬は少ない参列者で実施し、外部にお葬式を公表しないことから、家族葬よりゆっくりと故人と最後の時間を過ごしやすいです。
密葬と直葬(火葬式)の違い
直葬(火葬式)とは、通夜・葬儀をせず、火葬のみで故人を見送るお葬式の形式。故人とのお別れは、ご遺体を火葬炉に入れる前に行われるため、時間やスペース、参列人数が限られます。
直葬(火葬式)は、葬儀費用をおさえるために選ばれることが多く、密葬と比べると安価になりやすいです。また密葬は、直葬(火葬式)と違って、通夜・葬儀を実施するのが一般的です。
密葬が選択される理由
- 故人を家族だけで送り出したい
- 故人の他界を周りに知られたくない
- 多くの参列者が来るお葬式は別に実施したい
密葬は内密に行われるため、プライベートな環境で故人を見送ったり、プライバシーに配慮したりしたい場合によく選ばれています。
例えば、故人が著名人の場合、社会的な混乱を避けたり、問い合わせによる遺族の負担を減らしたりするのを目的に密葬が選択されています。また、「最後の時間を家族や親族だけで過ごしたい」といった遺族の希望や故人の意向から、密葬を選ぶご家庭も多いです。
密葬にかかる費用の相場
葬儀種類 | 葬儀費用の総額 | 最も多い価格帯 |
---|---|---|
直葬・火葬式 | 42.8万円 | 20万円以上~40万円未満 |
一日葬 | 87.5万円 | 20万円以上~40万円未満 |
家族葬 | 105.7万円 | 60万円以上~80万円未満 |
一般葬 | 161.3万円 | 120万円以上~140万円未満 |
こちらは、葬儀種類別の葬儀費用を一覧でまとめた表。密葬と規模の近い家族葬や直葬(火葬式)の金額をふまえると、密葬の費用相場は約50万円〜100万円が目安です。
密葬の費用相場は、他の葬儀形式と比べて抑えられやすい傾向があります。なぜなら、他の葬儀形式より参列者が少なく、規模が小さいからです。なお、後日実施する本葬は、社葬・団体葬・お別れ会など形式や規模がさまざまなので、見積もりを取って費用を確認しましょう。
密葬の流れ
場面 | 実施内容 |
---|---|
お葬式前 | 葬儀社の手配 遺体の搬送・安置 訃報連絡 納棺 |
お葬式 | 通夜 告別式 |
お葬式後 | 火葬 収骨 初七日法要 精進落とし |
密葬の流れは、一般的なお葬式と基本的に同じです。故人のご逝去後、葬儀社を手配して葬儀の準備を進め、通夜・告別式を執り行います。通夜・告別式の後は、火葬・収骨をして初七日法要、精進落としと続き、密葬が終わったら日を改めて本葬・お別れ会を実施します。
密葬は、お葬式を公表せず、参列者も限定しますが、実施内容と進め方は大きく変わりません。そのため密葬を検討する場合でも、標準的なお葬式の流れを前提に葬儀社と調整・相談してください。
密葬後の対応
- 死亡通知状の送付
- 本葬・お別れ会の実施
密葬を終えたあと、喪主や遺族が対応すべきなのは「死亡通知状の送付」と「本葬・お別れ会」です。
密葬は本葬も実施するのが習わしなので、一般的なお葬式のように1回の式典では終わりません。密葬を終えた後、本葬に向けた準備や案内を進めなければならないので、覚えておきましょう。
死亡通知状の送付
密葬を終えたら、故人のご逝去と密葬の実施、本葬・お別れ会の案内をする死亡通知状を送付します。死亡通知状を送ることで、密葬に参列できなかった親族や故人の友人・知人にご逝去を正式に伝えるのが目的です。
死亡通知状には以下の情報を記載して、生前に故人がお世話になった感謝を伝えましょう。密葬後を実施した旨とあわせて、多くの方々に故人を偲んでもらえるよう本葬を案内します。
- 故人の名前
- 逝去の日付
- 密葬を実施した旨
- 本葬の日時や実施場所
本葬・お別れ会の実施
本葬の形式 | 内容 |
---|---|
社葬・団体葬 | 主催者:故人が所属した企業や団体 参加者:社員や仕事関係者が中心 特徴 :大規模になりやすく、費用は企業負担 |
お別れ会 | 主催者:遺族や故人の友人・知人 参加者:友人・知人が中心 特徴 :お葬式よりも気軽な形式 |
本葬・お別れ会を実施して、密葬に参列できなかった方が故人を偲ぶ機会を設けます。本葬の内容に決まりはなく、宗教儀式を行わなかったり、故人の友人や会社関係者が主催したりする式もあります。
密葬では限られた参列者で故人を見送るため、本葬では多くの方が故人を偲べるよう規模を大きくしたり、パーティ形式にしたりするご遺族も多いです。
【喪主向け】密葬を行うときの注意点
- 事前に親族の理解を得ておく
- 密葬を知らせる連絡先を絞る
- 故人の安置場所に配慮する
- 弔辞は控える
- 密葬に慣れた葬儀社を選択する
- 故人の勤務先には密葬を伝える
密葬を行う際に、喪主として考慮しておくべき注意点はこちらの6つです。
密葬の準備・運営には、通常のお葬式とは異なる点を踏まえた対応が求められます。密葬を的確に実施できるよう、喪主として配慮すべき準備内容を押さえておきましょう。
事前に家族・親族の理解を得ておく
密葬を選択するときは、事前に家族・親族の理解を得ておくことが重要。密葬は、お葬式を公表しなかったり参列者を身内に限定したりと、伝統的な葬儀との違いが大きいです。
家族・親族のなかには、密葬を受け入れるのが難しく、伝統的なお葬式を望む方もいるかもしれません。家族・親族に密葬を行う意図を説明して、賛同を得ておくことで、トラブルを回避できます。
密葬を知らせる連絡先を絞る
密葬をするときは、密葬の実施をできる限り内密にします。そもそも密葬では、故人のご逝去を参列者以外に伝えないのが前提。参列者が増えると情報が漏れるリスクが高まるため、密葬を知らせる範囲を限定します。
密葬が選ばれるのは、遺族が参列者の対応をする負担を減らしたり、近親者だけでゆったりと故人を見送ったりするためです。密葬を知らせる範囲が広いと、招待していないのに式に参列する方がいらっしゃるかもしれません。参列者が増えると遺族の負担が増え、落ち着いて故人を見送るのが難しくなるため、情報を広げないことが重要です。
故人の安置場所に配慮する
密葬を行うときは、ご逝去を知られにくい場所に遺体を安置するのが基本です。ご自宅だと、遺体を搬送する車や姿を見られて、ご近所の方に不幸が伝わってしまうかもしれません。
ご遺体の安置先は自宅ではなく、葬儀会場の安置室や遺体安置場を利用するのが安心です。故人が自宅で亡くなった場合、葬儀社に対応方法を相談してみるとよいでしょう。
弔辞は控える
密葬では、故人への思いを伝える弔辞を含めないのが一般的です。
密葬は基本的に近親者のみで行うため、弔辞を述べる方が参列しない場合があります。お葬式の一般的な段取りが採用される密葬ですが、弔辞は行わなくても問題ありません。限られた参列者で故人を静かに見送るという密葬の目的に合わせて、密葬の式次第も調整してください。
密葬に慣れた葬儀社を選択する
過去、密葬に対応した実績のある葬儀社を選ぶのも重要。なぜなら密葬は、一般的なお葬式と異なり、故人のご逝去が外部に漏れないよう配慮したり、お葬式自体を内密に執り行ったりするからです。
密葬に慣れた葬儀社なら、遺族への適切なサポートや、密葬ならではの注意点を考慮した準備・運営をしてくれます。葬儀社を選ぶときは、密葬の経験を尋ねておき、実績のある葬儀社を選択しましょう。
故人の勤務先には密葬を伝える
故人が企業や団体に勤務していたなら、訃報とあわせて、密葬の実施と後日本葬を予定している旨を伝えましょう。また、弔電や供花を辞退する場合は明確に伝えておき、密葬の実施が外部に漏れないようにします。
企業・団体から本葬を社葬として実施したいと申し出があったら、別途相談の場を設けるのが一般的です。故人の勤務先に密葬を行うと伝えることで、無用なトラブルを避けられます。
【参列者向け】密葬の参列マナー
- 密葬に参列することは伏せる
- 密葬の参列時は喪服を着用する
- 香典・供花・弔電辞退を事前に確認する
密葬に参列するときの注意点は、こちらの3つ。密葬は参列する機会が少ないため、意図せずマナー違反をしてしまいかねません。密葬の案内を受け取ったら、密葬特有のマナーを踏まえてお葬式に参列してください。
密葬に参列することは伏せる
密葬の案内をもらったら、「密葬が実施されること」「密葬に参列すること」は周囲に伏せておきます。密葬は限られた人数で静かに行う葬儀であり、公になると目的が損なわれます。
例えば、家族や親しい友人だけが集まる場でも、密葬への参列は口外不要です。喪主・遺族が、参列者を信頼して密葬を案内していることに配慮し、故人のご逝去や密葬を知られないよう取り計らいましょう。また、喪主・遺族から「密葬後も一定期間内密にしてほしい」と要望を受けたら、あわせて伏せてください。
密葬の参列時は喪服を着用する
密葬に参列するときは、一般的なお葬式と同様、喪服を着用してください。限られた人数しか参列しないとはいえ、故人に対する敬意を示すために適切な服装が求められます。
具体的には、男性は弔辞用のブラックスーツ、女性は黒のワンピースやアンサンブルなどのブラックフォーマルを着用するのが一般的です。
香典・供花・弔電辞退を事前に確認する
密葬では、香典・供花・弔電の取り扱いについて、喪主・遺族の意向を事前に確認しておきます。
参列者を絞り、規模を最小限に留める密葬では、香典を辞退するご遺族もいらっしゃいます。また、密葬が外部に漏れる恐れがあるため、供花や弔電を断る喪主・遺族も少なくありません。
香典・供花・弔電などを辞退しているなら、遺族の意向を尊重するのが大切です。辞退を無視すると、遺族に余計な負担をかけてしまいかねません。密葬に参列する前に遺族の意向を確かめ、遺族・参列者全員で心穏やかに故人を見送りましょう。
密葬の準備・参列はマナーを守って慎重に
密葬は、後日本葬を行うことを前提に、参列者を限定して少人数で故人を見送る葬儀形式です。故人のご逝去を公にせず、近親者のみで最後の時間を過ごせるのが特徴。一方、別途お別れ会や本葬を実施するため、一般的なお葬式に比べて遺族の心身や経済的な負担が大きくなりやすい面もあります。
密葬と通常のお葬式の違いを理解して、喪主・遺族として準備する場合も、参列者として訪問する場合もマナーを守って慎重に対応してください。