喪主として葬儀を取り仕切るのは非常に大変です。
通夜や葬儀・告別式の実際の進行は葬儀社に任せるとしても、短い時間でさまざまな決断をしなければなりませんし、そのほかにも、喪主にしかできないことはたくさんあります。
なかでも、喪主の重要な役目として挨拶があります。どのようにきれいな祭壇よりも、どのような演出よりも、喪主の挨拶の言葉ほど参列者の心を打つものはありません。
ここでは、喪主の挨拶をどのようにして行えばいいのか解説していきます。
喪主の挨拶のコツと使ってはいけない言葉
喪主の挨拶のコツ
喪主の挨拶を作るには、ある程度のルールとコツがあります。
通夜や通夜振る舞いでの挨拶なら、時間を作って参列してくれたことに対するお礼の言葉を最初に述べます。
通夜のときの挨拶では、通夜振る舞いへの案内を挨拶の後半で述べるといいでしょう。通夜振る舞いのときの挨拶では、告別式の時間なども簡単に案内します。
「○○もきっと喜んでいます」というように、「故人からの感謝の気持ち」が伝わるようにします。また、あまり長くならないように簡潔にするのもコツです。
告別式の挨拶では、時間を割いて参列してくれたことと、告別式を無事終えることができたことに対する感謝の言葉を述べます。
故人が生前どのように過ごしていたのか、どのような性格の人だったのかなど。喪主と故人とのエピソードなどを添えて伝えるのもいいでしょう。
仕事に関することや趣味に関すること、家庭での様子、尊敬できる点など。最後に故人が充実した人生を送れたことに関して、周りの人たちへ感謝の言葉を述べて締めくくります。
精進落としでの挨拶では、無事に告別式を終えたことに関して、感謝の気持ちを述べます。後は食事を用意している旨のことを伝えるくらいで問題ありません。お開きの挨拶では、通夜と告別式に参列してくれたことに対して改めて感謝の言葉を述べて、今後もよろしくお願いしたい旨の気持ちを伝えます。
NGワードは自分で気が付いていなくても、使ってしまっていることがあります。いずれの挨拶も前もって文章を作成しておき、読み返してみてNGワードが含まれていないかどうかチェックしておくとよいでしょう。
喪主の挨拶のNGワード
喪主の挨拶をはじめ、葬儀では使ってはいけない言葉がいくつかあります。これらの言葉を「忌み言葉」といいます。
忌み言葉の代表的なものとしては、同じ語を重ねて使う言葉があります。例を挙げると、「重ね重ね」や「度々」などです。
「重ね重ね感謝いたします」のような言い回しをしてはいけません。他に「いよいよ」や「ますます」「またまた」なども使わない方が無難です。
重ねる意味の言葉を挨拶で使ってはいけない理由は、不幸が重なることを避けるためといわれています。
また、繰り返しを意味する言葉も避けた方がよいようです。「繰り返し」「再び」「続いて」などのほか、「追って」や「再三」も同じことを繰り返す意味を持つので使わない方がよいとされています。
やはり、繰り返し不幸が起こることを避けるという意味があります。
さらに、不吉な意味を持つ言葉やストレートすぎる表現もあまり適していません。
不吉な意味の言葉では、「消える」や「落ちる」などです。ストレートすぎる表現は「死ぬ」や「急死」「生きていたとき」などの表現です。「亡くなる」や「突然のこと」「生前」のような表現に言い換えれば使用しても問題ありません。
このほか、宗旨・宗派によっても使わない方がよいとされる言葉があります。
例えば天国という言葉はキリスト教で使われる言葉なので、仏式の葬儀では浄土といった表現の方がよいというものです。仏式の葬儀とキリスト教式の葬儀では、死に対する考え方や葬儀の意味も異なります。使われる言葉にも違いは現れるようです。
喪主の挨拶は故人との間柄によって変わる
基本的なお礼の文面は故人との間柄でそれほど変わりませんが、展開する内容は、故人との間柄でエピソードが異なることがあります。
喪主が夫や妻の場合は、家庭での様子や、父または母として果たしていた役割を述べ、遺された家族で支えあって生きていくことを表明します。
喪主が子の場合は、子どものころからの父または母との思い出や人柄、励まされたことなどを述べます。
長い間過ごしてきた間柄だからこそ伝えられる故人への深い愛情と、悲しみを乗り越えようとする決意を含めましょう。会葬者とともに、温かい気持ちで故人との別れをしのべます。
喪主の挨拶例文【通夜~葬儀~精進落とし】
通夜終了時の挨拶
本日はお忙しいところ、○○の通夜に足を運んでいただきありがとうございました。○○も喜んでいることでしょう。心より感謝申し上げます。別室にて粗宴を用意しておりますので、ご都合がよろしければお召し上がりください。
通夜振る舞いの挨拶
本日はお忙しいところお集まりいただき、本当にありがとうございました。○○もさぞかし喜んでいると存じます。告別式は明日××時△△分から●●斎場で行いますのでよろしくお願い申し上げます。
告別式の出棺前の挨拶
本日はお忙しいところ、わざわざお集まりいただき誠にありがとうございました。
○○は生前とても真面目で仕事一筋に打ち込んで家族を支えてくれました。休日にはしっかり家族サービスをしてくれて、子供のころは色んなところに遊びに連れて行ってもらいました。今でも当時の思い出が頭の中で鮮明に蘇ります。定年退職後は趣味で盆栽を始めてのんびり過ごしていました。
皆様にお見送りいただき、○○もさぞかし喜んでいることと存じます。昨日の通夜と本日の告別式を滞りなく執り行うことができました。
精進落としの席での挨拶
本日はご多忙のところ、ご参列いただきましてありがとうございました。おかげさまで告別式も無事に終わり、○○も安心していることと存じます。ささやかではございますが、食事を用意いたしました。お時間の許す限りごゆっくりお召し上がりください。○○との生前の思い出についてお話できればと思います。
精進落としの終了時の挨拶
本日はこれにておひらきにしたいと存じます。最後までありがとうございました。残りました家族一同助け合ってやってまいりたいと思います。これまで同様今後もご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。
喪主が挨拶をするタイミング
喪主の挨拶とは
喪主の挨拶というのは、喪主を務める人が一般の参列者に対して行うものです。
わざわざ時間を作って参列してくれたことに対するお礼、さらには生前、故人と親しく付き合ってくれたことへの感謝の気持ちを込めて行います。親族の代表としてだけでなく、故人の代理として謝辞を伝えるという意味もあります。
喪主の挨拶のタイミング
喪主が挨拶をするタイミングは大きく通夜の終わり、または通夜振る舞いのとき、告別式のとき、そして精進落としのときです。
ただし、葬儀の流れはそれぞれの地域や宗旨宗派、葬儀の形によっても異なります。通常、いつ、どのタイミングで挨拶をするべきか、葬儀の担当者が教えてくれます。
ここでは主に東京近郊の例をもとにご説明します。
通夜での喪主の挨拶
通夜の場での喪主の挨拶は、読経の後、または通夜振る舞いの前に行います。
焼香を終えた参列者に対し、主に通夜に参列してくれたことに対するお礼の言葉を述べます。
通夜振る舞いのある地域では、参列者は焼香後、そのまま通夜振る舞いの席へ移るところもあります。基本的には喪主は最後に食べるので挨拶はありません。
ただし、都内など参列者がの人数が少ない場合には、一緒に食べることもあります。この場合は食事の席で挨拶を行うこともあります。
出棺の挨拶
次に、告別式での挨拶のタイミングは出棺の前です。
親族や参列者の人たちが故人に別れを告げた後に棺の蓋を閉めます。このときに喪主の挨拶を行います。喪主の挨拶が済んでから、棺を霊柩車に乗せて出棺します。
また、出棺の直前ではなく告別式の途中で喪主の挨拶をする場合もあります。そのときは閉会の辞の前に行います。
挨拶のタイミングには式の流れ、地域性などもあります。また会場によってどこで挨拶を行うかということも変わってきます。事前の打ち合わせの際に、葬儀社の担当者に確認しましょう。
精進落としでの挨拶
火葬の後には精進落としの食事(お斎)をします。この際にも喪主の挨拶があります。
葬儀が無事に終わったことを報告した上で感謝の言葉を述べます。
このほか、初七日法要、四十九日法要、一周忌など葬儀の後の法事・法要でも喪主が挨拶をするときは多々あります。さらに、通夜や葬儀・告別式がはじまる前には、会場で宗教者や手伝ってくれる方々にもお礼を言います。これも喪主の大切な挨拶のひとつです。
*東京近郊の例です。お葬式の流れは地域によっても異なります。詳細は葬儀社の担当者にご確認ください。
若い喪主の挨拶
喪主世代も高齢化
喪主を務める人は故人の配偶者か長男が多いです。
故人が平均寿命前後まで生きた場合には、配偶者もそれなりに高齢でしょう。息子や娘が喪主を務める場合でも、40代以上であるケースが多いです。
一方で、不幸にも、若くして亡くなる人もおり、年齢の若い人が喪主を務めるケースも見られます。比較的年齢が高ければ、これまで何度か葬儀に参列した経験もあるでしょう。しかし、年齢が若いと葬儀に参列した経験も多くはないでしょう。
喪主の年齢が若い
喪主の年齢が若くても、挨拶の内容は中高年の人が喪主を務める場合と大きく変わりません。ただ、若い人が喪主を務めるのは非常に大変です。挨拶文を考えるのもなかなか難しいでしょう。このようなときは、周囲の人を頼っても問題ありません。
挨拶文は基本的に自分で考えて作りますが、前もって親せきの叔父や叔母などに見てもらうのが無難でしょう。気が付かないままNGワードの言葉を使用してしまっている可能性もあります。
本人がどうしたらいいのか分からず困っていることも多いため、喪主が若い場合には、親せきの人がサポートすると、本人にとって非常に心強いです。喪主の挨拶をするタイミングなども、周囲の親せきの人が適切に指南することで、葬儀がスムーズに進行します。特にまだ社会人になっていない息子や娘が、葬儀の喪主を務めるには周囲の親せきのサポートが必須でしょう。
喪主を務める人が高校生くらいであれば、周囲の親せきにサポートしてもらえば、喪主の挨拶も特に難しくはありません。
しかし、喪主が小学生や中学生という例も僅かに見られます。その場合には、あくまで喪主は形式的なものとして扱いましょう。故人の兄弟など親せきの人が葬儀を取り仕切るのが望ましいです。喪主の挨拶の代わりに、親せき代表の挨拶を行います。