「忌み言葉」というのは、使ってしまうと「縁起が悪い」と受け取られてしまう言葉です。お通夜や葬儀、法事などの時には日常普通に使っている言葉でも、「縁起が悪い」と受け取られてしまう言葉が沢山あります。つい使って口にしてしまうと相手に対して「失礼」になってしまいます。使わないようにするのがマナーです。
遺族や喪主の立場であっても、参列者の立場であっても、挨拶をする場面はいろいろあります。忌み言葉を知り、うっかり使ってしまわないよう、気をつけながら挨拶をすることが大切です。挨拶文の例もご紹介します。
目次
忌み言葉とは
冠婚葬祭の式に出席する時、ふと頭をよぎるのが「あいさつで何を言えばいいのかな?」ということではないでしょうか?
人生の節目の儀式だけに、失敗があっては……と思うと、スピーチを求められた時はもちろん、そうでなくても受け付けやご家族に挨拶する際に何かこう、ちょっと構えてしまいます。
そんな時に最低限、押さえておきたいのが、この「忌み言葉」です。
「忌み言葉」というのは、うっかり使ってしまうと「縁起が悪い」と受け取られてしまう言葉です。これを避けるようにすることがマナーです。
忌み言葉①不幸が「重なる」重ね言葉
お葬式で避けたい「忌み言葉」の例を挙げてみました。
たくさんありすぎて「これじゃ何も言えない・・・」って思ってしまうかもしれませんが、落ち着いて見てみると、どれも「くり返す」というイメージがわいてしまう言葉だということがわかります。
不幸が「重なる」ということを連想させるという理由から、避けるべき言葉とされているようです。
- 「重ね重ね」
- 「たびたび」
- 「またまた」
- 「重々」
- 「いよいよ」
- 「再三」
- 「ますます」
- 「返す返すも」
- 「次々」
- 「追って」
- 「再び」
- 「続く」
忌み言葉②宗教によって避けるべき言葉
日本のお葬式はその大半が仏教の儀式にのっとって行われる仏式と言われています。でも、神道やキリスト教など仏教以外のお葬式も行われています。
これらの宗教によっても「これは避けた方がいい」という言葉がありますし、同じ宗教でも宗派によって気を付ける点もあります。
まず仏教のお葬式では、先ほどあげたもののほかに
- 「浮かばれない」
- 「迷う」
といった言葉も弔辞や挨拶にふさわしくないとされています。
無念な思い、淋しい思い。悔しさや苦しさ、辛さといったが報われないことを連想させる言葉は避けましょう。「忌み嫌う言葉」というとニュアンスが異なりますが、
- 「天国」
という言葉は仏教では使いません。また、宗旨によっては
- 「冥福」
- 「霊前」
という言葉を用いないこともあります。
キリスト教の葬儀での忌み言葉
次に、神式・キリスト教式のお葬式では、仏教のお葬式では普通に使われている言葉が「忌み言葉」になる場合もあります。
例えば、次のような言葉です。さらに、キリスト教では「お悔やみ」も「忌み言葉」になります。
- 「成仏」
- 「供養」
- 「冥福」
- 「往生」
キリスト教では、「死」は永遠の命のはじまりであるとされています。ご遺族にお声をかける際には、「お悔やみ申し上げます」と故人の死を悼(いた)むのではなく、「安らかな眠りにつかれますようお祈りいたします」とお伝えするのが良いでしょう。
【忌み言葉なし】葬儀・告別式の挨拶例文
告別式では、最後に故人に代わり会葬者にお礼を述べる場面があります。最も悲しみが深い時でもあり、口がうまく回らないこともあります。例文を紹介します。
「本日は、ご多用にもかかわらず、亡き父○○の葬儀にご会葬くださいまして、厚く御礼申し上げます。このように大勢の皆様にお見送りいただき、さぞかし故人も喜んでおることと存じます。遺された私どもは未熟者ではございますが、今後とも故人同様、ご指導、ご鞭撻(べんたつ)たまわりますようお願い申し上げまして、ご挨拶に代えさせていただきます。本日は、誠にありがとうございました。」
「遺族を代表いたしまして、皆さまにひとことご挨拶を申し上げます。本日は、お忙しいところ、ご会葬・ご焼香をたまわり、誠にありがとうございました。お陰をもちまして葬儀・告別式も滞りなくすみ、これより出棺の運びとなりました。故人もさぞかし皆さまに感謝いたしていることと存じます。今後は家族で助けあい、故人の分まで頑張って参りたいと考えておりますので、どうか皆様、今後とも変わらぬご厚情をいただきますようお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。」
【忌み言葉なし】精進落としの挨拶例文
お葬式に参列してくださった会葬者への感謝の気持ちを込め、火葬後にお料理をふるまうことを精進落としと言います。全員が席に着いたら、喪主または親族代表があいさつを行います。
葬儀がとどこおりなく終えられたことに対するお礼を伝え、献杯を行い会食をします。
「一言ごあいさつ申し上げます。皆様、本日は誠にありがとうございました。おかげをもちまして故○○○○の葬儀、告別式もとどこおりなく終えることができました。あらためてお礼申し上げます。皆様さぞかしお疲れのことと存じます。誠にささやかではございますが、皆様への感謝と慰労を兼ねまして席をご用意いたしました。故人の思い出などをお聞かせいただきながら、ごゆっくりとお召し上がりいただきたいと存じます。本日はありがとうございました。」
会食が終わる頃に喪主または親族があいさつをします。
「皆様、本日はお忙しい中ありがとうございました。皆様一人ひとりの温かいまごころのこもった、お見送りをいただき故人もさぞかし喜んでいることと思います。故人の思い出話などをもっとおうかがいしたいところですが、皆様もお疲れのことと思いますので、この辺で終了とさせていただきたいと存じます。十分なおもてなしもできずに申しわけありませんでした。本日はありがとうございました。」
葬儀で避けるべき忌み言葉と挨拶例文をおさらい
忌み言葉とされているものはたくさんあります。とても覚えきれない、と思うかもしれませんが、なぜその言葉を避けるのかということを理解すればそれほど難しいことではありません。
葬儀や法事の際の挨拶では、遺族や喪主の側は、会葬者に対して、故人に代わって生前の交誼に対するお礼や参列してくれたことへの感謝の気持ちを表すという姿勢が大切です。
会葬者の立場からも、遺族に対して、思いやりやねぎらいの気持ちを持って接することが大切です。それぞれの心を気持ち良く橋渡しするための言葉だと考えると良いかもしれません。
いかがでしたか?
日本のきめ細やかな配慮が言葉遣いにも反映されていると考えるとわかりやすいかもしれません。ある意味、日本語の文化と言えるかもしれません。
「忌み言葉」は人によって気にする方もいれば、気にしないという方もいらっしゃいます。ただ、「忌み言葉」にばかり気を取られてしまうと、いざご遺族を前にした時に、肝心の弔意の言葉が浮かんでこないということにもなりかねません。
弔問の前にはあらかじめ調べておくといいかもしれませんね。