精進落としとは?意味やマナー、通夜振る舞いとの違い【葬式の食事】

小林憲行【記事監修】
小林憲行

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  • 精進落としとは、初七日法要または火葬後に設けられる会食
  • 本来の意味は四十九日明けに精進料理から通常の料理へ切り替えること
  • 精進落としの食べ物・飲み物の費用相場は1人3,000円~8,000円
  • 精進落としは1人1膳、通夜振る舞いは大皿料理など違いがある

精進落とし(しょうじんおとし)は、初七日法要または火葬後に行われる会食。精進落としはもちろん、通夜振る舞いやお斎など、お葬式の食事は遺族側が用意しなければなりません。事前に意味を理解して、心がけるべきマナーを学んでおくとスムーズに準備を進められるでしょう。

この記事では、精進落としの意味や料理、準備や挨拶の例文、マナーなどをまとめて解説します。

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精進落とし(しょうじんおとし)とはどんな意味?

精進落とし(しょうじんおとし)とは、初七日法要または火葬後に設けられる会食のこと。僧侶や参列者、親族など、葬儀でお世話になった方々に対するお礼とおもてなしの意味があります。

精進落としは本来、仏教の教えに基づいて肉や魚を避けた精進料理をお出しする風習でした。ですが現在では風習が薄れ、刺身や寿司、懐石料理などを出す精進落としも珍しくありません。現在の精進落としは、葬儀・法要が無事に終わった報告や感謝、労いの気持ちを示す意味合いが強まっています。

精進落としの由来

そもそも精進落としは、中陰の期間(精進の期間)を終え、四十九日法要後に食べる日常的な食事を指していました。

かつては、故人が亡くなってから四十九日の忌明けまで、遺族は肉や魚を避けた精進料理を食べていました。これは命日から四十九日までの間、故人が極楽浄土に行けるかどうか判決を受けるという仏教の考えに基づく行為。故人が極楽浄土に近づけるよう、遺族は現世で徳を積むのです。

また死が穢れとされていた時代、死の穢れは火を通して広がると考えられていました。そのため喪服中の人が、生活で使用する火をわける「別火(べつび)」という風習があったんだそう。ほかにも忌中の間は小屋にこもって、生活自体をわける風習もあったようです。

こうした喪中の生活から、通常の生活にもどることを意味するのが「精進落とし」。とくに四十九日の忌明けとともに、遺族が精進料理から通常の料理へ切り替えることを「精進落とし」と呼んでいました。

精進落としと通夜振る舞いの違い

精進落とし通夜振る舞い
行う場面初七日法要後
または 火葬後
通夜後
招待範囲僧侶・親族・遺族僧侶・参列者全員
料理形式1人1膳大皿料理
参加人数決まっている予測できない

精進落としと同じお葬式の食事といえば、通夜のあとに提供する「通夜振る舞い」があります。

通夜振る舞いは、通夜のあと、参列してくださった方全員をおもてなしする会食。人数が予測できないため、オードブルや寿司などの大皿料理を用意することが多いです。親族中心で行う精進落としとは違う配慮が必要になるため、覚えておきましょう。

≫通夜振る舞いについて詳しく知る

精進落としと精進上げ、お斎、直来の違い

精進落としは、関西では「精進上げ(しょうじんあげ)」と呼ばれています。また「お斎(とき)」は、通夜や葬儀、法要のあとに設けられる会食のことで、精進落としもお斎の一種。ほかにも「直会(なおらい)」は、神式(神道)における精進落としの呼び方です。

「精進上げ」「お斎」「直来」をはじめ、「忌中祓い」「精進落ち」も「精進落とし」の別名称。わずかな違いはありますが、ほぼ同じ意味だと考えて問題ありません。

精進落としの料理・食事内容

初七日法要での食事
  • 参列者の人数や年齢にあわせた料理にする
  • 1人1膳お膳を用意するのがオススメ
  • お祝い事を連想する鯛や伊勢海老は避ける
  • 刺身や寿司、鰻などは出してもよい
  • 飲み物はアルコール・ノンアルコール各種取り揃える

精進落としには、遺族の苦労をねぎらい、参列者に感謝を示す側面があります。華やかなメニューを出すのが通例ですが、重要なのは参列者の人数や年齢層にあわせた料理にすること。

人数がある程度決まっているのであれば、参列者1人1人にお膳を用意するのがオススメ。参加を辞退されても、お膳ならお弁当として包んで渡しやすいので便利です。

また、幅広い年齢層の方が参列するので、偏りのない食材や料理を選びましょう。

本来の精進落としでは、肉や魚、生物が避けられていましたが、最近は風習が薄れてきています。刺身や寿司、鰻などを出す精進落としも多いため、参列者にあわせてメニューを組みやすいです。ただ、お祝い事を連想する鯛や伊勢海老などの食材は使わないように注意してください。食べ物だけでなく、飲み物も参列者が選べるように、酒やビール、お茶、ジュースなど各種揃えておきましょう。

精進落としは、仕出し弁当をとったり料亭やレストランで食べたりと、形式はさまざま。お店によっては、精進落とし専用のメニューを用意してくれるので、問い合わせてみてはいかがでしょうか。

精進落としのタイミング

  • 葬儀・火葬→初七日法要→精進落とし
  • 葬儀・火葬→精進落とし→初七日法要

精進落としのタイミングは、初七日法要後と火葬後のどちらか

一般的には、初七日法要のあとに精進落としを振舞います。最近は、葬儀当日に火葬をしたあと、続けて初七日法要を行うケースが増えています。葬儀と初七日法要が別だと、日をおかずに親族が集まることになって大変だからです。火葬場ですでに食事をとっている場合は、夕食に食べられるよう、持ち帰り用の弁当を渡します。

また葬儀の時間帯や地域によっては、火葬の最中や火葬場から会場に戻ったタイミングで、精進落としを行うこともあります。

精進落としの準備一覧

火葬を待つ間、もしくは火葬後に行われる会食を精進落としと言います。

日程の決定

精進落としは、初七日法要のあとに行うのが一般的。そのため、初七日法要を葬儀と同日にするか・しないかによって精進落としの日程は変わります。葬儀・火葬のあと、別の日に初七日法要を行う場合は、僧侶や参列者の予定をふまえて日程を組みましょう。

場所の決定

精進落としを行う日程が決まったら、会場となる場所を検討します。

仕出し弁当を用意するなら自宅や斎場、お店で食べるなら料亭やレストランを予約。また火葬場では、葬儀場の待合室で精進落としを振舞うケースが多いです。

出席者の確認

精進落としは、読経いただいた僧侶と親族のみで行うのが通例です。

ただ火葬場で精進落としをする場合は、お骨上げまでご一緒してくださった参列者にも食事を振舞います。また、親しい友人知人や会社関係者など、多くの方を招待する精進落としもあります。

料理の手配

精進落としの料理は、幅広い年代に好まれる食材やメニューを手配しましょう。斎場やお店によっては、精進落とし用のメニューが用意されているので、一度相談してみてください。

また精進落としの料理は、参列者の人数にあわせて増減する可能性があります。席数や料理の変更がいつまでできるか、事前に確認しておくと安心。もし人数がわからないなら、寿司やオードブルなどの大皿料理で対応するのもひとつの方法です。

精進落としの流れ

  1. 着席
  2. 開始の挨拶
  3. 献杯
  4. 合掌または黙祷
  5. 会食
  6. 締めの挨拶

着席

精進落としに招かれた参列者が着席します。
席次表を掲示するだけでなく、席に名札を置いておくとスムーズです。

開始の挨拶

喪主または親族の代表者が、参列者へのお礼を述べ、開始の挨拶を行います。

献杯

精進落としに限らず、お葬式の食事では「献杯」をする風習があります。

献杯とは、故人に敬意を表して杯をささげること。喪主や親族、故人と親しかった人などが、献杯の挨拶を行います。代表者が挨拶の最後に「献杯」と発声したら、参列者全員で「献杯」と唱和。杯をぶつけたり、拍手したりするのはマナー違反になるため、静かな声で「献杯」と言って杯を軽くあげましょう

合掌または黙祷

会食をはじめる前に、故人を偲んで合掌または黙祷を行います。

会食

合掌または黙祷のあと、施主が食事をすすめ、会食がはじまります。
施主や親族は、お酌をしながら参列者にお礼を述べて回るのが一般的。故人の思い出を語り合いながら、会食の時間を過ごしましょう。

お酒が入ってリラックスした雰囲気になりますが、精進落としはあくまで故人を偲ぶ場。暴飲暴食をしたり、酔っぱらいすぎたりするのはマナー違反になるため注意してください。

締めの挨拶

会食開始から1〜2時間経ったら、タイミングを見計らって、喪主または親族の代表者が締めの挨拶を行います。

精進落としの挨拶

通夜・葬儀・法要の会食で挨拶をする女性

精進落としでは、会食を開始するときと終了するときに、それぞれ挨拶を行います。

とくに開始の挨拶「献杯」は、故人に敬意を示して杯を差し出す大切な挨拶。挨拶をするのは喪主が多いですが、故人と親しかった友人や会社の上司が献杯することもあるようです。

ここでは、精進落としの挨拶の例文をご紹介します。

精進落としの開始(献杯)の挨拶例文

開始の挨拶では、喪主が参列への感謝と精進落としに参加いただいたお礼を述べます。

その後、喪主が献杯するのであれば、そのまま献杯の音頭へ。
喪主以外の友人や上司が献杯するのであれば、故人との関係と思い出話を述べたあと、献杯します。

例文①喪主が挨拶→そのまま喪主が献杯

本日はご多忙のところ、故◯◯の葬儀にご参列いただきまして、誠にありがとうございました。懐かしい皆様に会えて、◯◯もきっと喜んでいると思います。ささやかではございますが、食事を用意いたしましたので、どうか昔の思い出話などで故人を偲んでいただければと思います。それでは、献杯のご唱和をお願いいたします。「献杯」。ありがとうございました。

例文②喪主が挨拶→故人の友人が献杯

ご紹介をいただきました△△と申します。故◯◯君とは学生時代からの友人で、突然のお別れに信じられない気持ちでいっぱいです。ご家族様のご心中を思うと言葉もございませんが、故人を偲びまして、献杯をさせていただきます。「献杯」。ありがとうございました。

例文③喪主が挨拶→会社の上司が献杯

ご紹介をいただきました▢▢株式会社の△△でございます。◯◯さんとは同じ部署で、私が部長、彼が課長という関係でした。◯◯さんはいつも職場の皆をリードして、私をサポートしてくれる頼れる部下でした。突然のお別れとなり、本当に残念でなりません。◯◯さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。それでは、献杯をさせていただきます。「献杯」。ありがとうございました。

精進落としの締めの挨拶例文

締めの挨拶では、精進落としに最後まで参加し、故人を偲んでくださった感謝を喪主から伝えます。もし納骨や法要の日程が決まっているのであれば、締めの挨拶とあわせて伝えるとよいでしょう。

喪主による締めの挨拶の例文

本日は故◯◯のために、最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

皆様に心から惜しんでいただき、◯◯も大変喜んでいることと存じます。故人との思い出話をもっとお聞きしたいところではございますが、夜も更けてまいりましたので、本日はこれにてお開きとさせていただきます。

皆様、どうぞお気をつけてお帰りください。本日は本当にありがとうございました。

精進落としの費用相場

精進落としは食べる人数が決まっているため、仕出し弁当や寿司、会席料理などが用意されます。

料理と飲み物

精進落としの費用相場は、1人当たり3,000円~8,000円
相場を考慮すると、1人4,000円~5,000円の料理を用意するのが無難といえます。

ただ、精進落としの料理と飲み物にかかる金額は、ランクやメニューによって変わります。飲み物はビール、酒、ジュース、お茶など各種必要ですし、お子さんが参列するのであれば、子供向けの食事を用意しなければなりません。また、参加人数によっても金額に幅があるため、あくまでも目安として考えましょう。

香典返し

参列者から香典をいただいたら、遺族側は香典返しをするのが一般的。
香典返しの相場は、香典金額の半分程度を返す「半返し(半分返し)」です。

ただ、葬儀・精進落としの当日に香典返しをする「当日返し」では2,000円~3,000円が相場。高額な香典をいただいた方には、後日あらためて返礼品をお送りします。

香典返しでよく贈られる品物は、消耗品や食品などのいわゆる”消えもの”。お茶やコーヒー、お菓子、石鹸、洗剤などを返礼品に選ぶのが無難でしょう。

精進落としのマナー

席順は上座に僧侶、末席に遺族

精進落としのマナーで、もっとも重要なのが席順。

一般的に、故人の遺影や遺骨にもっとも近い最上座に僧侶が座ります。最上座から順番に、葬儀の世話人→故人の仕事関係者→故人の友人・知人→親戚と座り、遺族と喪主は入り口近くの末席に着席してください。

遺族は参列者の席を回って感謝を伝える

精進落としの会食がはじまったら、遺族は参列者の席を回るのが通例。参列者1人1人にお酌をしながら、精進落としに参加してくださったお礼を伝えます。

挨拶のお願いは事前に済ませておく

献杯の挨拶を参列者にお願いするのであれば、事前に確認をとっておいた方がベター。

直前に挨拶をお願いすると、緊張してうまく話をまとめられませんし、お断りされるかもしれません。喪主以外が挨拶をするのであれば、事前にお願いを済ませておいた方が安心です。

必要以上に会を長引かせない

精進落としは1~2時間ほどで切り上げること。

お酒が入って話が盛り上がるかもしれませんが、精進落としはあくまで故人を偲ぶ場です。葬儀のあとで遺族も参列者も疲れているため、長時間拘束するのは好ましくありません。

会食開始から1~2時間経ったら、遺族は適切なタイミングで締めの挨拶をしてください。

僧侶に参加を辞退されたらお膳料とお車代を包む

お寺や僧侶によっては、精進落としの参加を辞退されるケースがあります。僧侶から参加を断られたら、「お膳料」と「お車代」を包んでお渡ししてください。

お膳料は、会食やおもてなしの代わりに渡すお礼のこと。お膳料の相場金額である5,000〜10,000円を目安として、白い封筒に入れて渡しましょう。またお車代は、自宅に足を運んでくださった対価となります。遺族が僧侶を送迎している場合は、お車代を包む必要はありません。

精進落としをしない場合:代わりに引き出物を渡す

精進落としは、僧侶や参列者への感謝を表すために振舞う料理。そのため一般的には、精進落としを行わないのはマナー違反と考えられます。ただ、地域によっては宴席を設けず金品や料理を配ったり、最近はコロナウィルスの影響で大人数での食事を避けたりと、さまざまな事情で精進落としをしない選択をする遺族も増えています。

精進落としをしない場合は、まず僧侶や参列者への事前周知を徹底すること。案内状に精進落としがない旨を記載し、四十九日法要のあとにも全体へ告知します。

それから、参列者には食事の代わりとしてお弁当や返礼品などの引き出物を渡してください。僧侶には、参列者と同様に引き出物を渡すか、ご膳料を包みます。

通夜の食事:通夜振る舞いの流れと料理

通夜振る舞いで出された寿司桶

精進落としは、葬儀・火葬・四十九日のあとに振舞われる食事のこと。
一方、通夜のあと参列者に出される食事は、「通夜振る舞い(つやぶるまい)」と呼ばれます。

通夜振る舞いでは、通夜に来てくださった弔問客に料理やお酒を振る舞うことで、故人の供養になるとされています。さまざまな通夜振る舞いの形式がありますが、一般的な流れは次の通りです。

  1. 喪主による開式の挨拶
  2. 食事やお酒の提供(通夜振る舞い)
  3. 喪主による閉式の挨拶

通夜振る舞いの歴史

ひと昔前、通夜振る舞いには、動物性や香りの強い食材を用いない精進料理がよく出されていました。これは、命日から四十九日までは、故人が極楽浄土に行けるように遺族が供養をするという仏教の考えから来ています。そのため、身内が亡くなったときは肉や魚を口にしてはいけないとされていました。

しかし古くからの風習が薄れた現代では、通夜振る舞いで精進料理を見かけることは少なくなり、故人の生前の好みが反映された食事などが出されます。

通夜振る舞いの食事・料理

通夜は弔問客の数が予想しづらく、焼香をしたあと短時間で帰宅する人も多いです。そのため、軽食や寿司桶、オードブルなどの大皿料理、お煮しめなど、大勢で気軽に食べられる食事を用意する傾向が強い様子。また食事を用意せずに、菓子とお茶、もしくはお茶のみという通夜振る舞いもあります。

地域によっては遺族のみで通夜振る舞いを行い、弔問客には折り詰めとお酒のセットを渡すことも。通夜振る舞い自体を行わず、粗供養品を渡す地域もあります。地域の通夜振る舞いの慣習があるなら、従っておくのが安心でしょう。

精進落としに関するよくある質問

精進落しの意味とは

精進落とし(しょうじんおとし)とは、初七日法要または火葬後に設けられる会食で、僧侶や参列者、親族に感謝を込めてもてなすという意味が込められています。

本来の精進落としは、四十九日の忌明けに遺族が精進料理から通常の料理へ切り替えることを指していました。しかし次第に風習が薄れ、亡くなった直後から通常の食事をとるのが一般的。現在の精進落としでは、通夜・葬儀・法要でお世話になった方に感謝を示す意味が強まっています。

精進落としをしないとどうなる?

精進落としをしない場合は、必ず僧侶や参列者に事前周知しましょう。そのうえで、参列者には食事の代わりにお弁当や返礼品などの引き出物を用意。僧侶には引き出物かご膳料を渡します。

精進落しを行うタイミングは?

精進落としのタイミングは、初七日法要後と火葬後のどちらか。一般的には、初七日法要のあとに精進落としを行います。ただ葬儀の時間帯や地域によっては、火葬中や火葬場から斎場にもどったときに精進落としが振舞われます。

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