一周忌とは、故人が亡くなってから一年後の命日に行われる法要のこと。遺族から辞退されない限り、香典を持参するのがマナーです。
ただ一周忌法要の香典は、相場金額や香典袋の書き方、渡し方などが通常とは違います。この記事では、一周忌法要に参列する前に知っておきたい香典のマナーをご紹介します。
目次
一周忌の法要とは
一周忌とは、故人が亡くなってから一年後の命日に行われる法要のこと。
菩提寺の住職を招いて読経してもらい、参列者が焼香をあげて故人を供養します。法要の終了後は、お墓参りをして、会食をとるのが一般的な流れです。
一周忌は、規模が小さければ自宅で行うのが定番。ただ参列人数が多いのであれば、斎場やホテル、お寺を借りて行う一周忌法要もあります。参列するのは、遺族を中心に、親せきや友人、知人などです。
また一周忌の法要は、故人の命日にあわせて行うのが望ましいとされています。他の法要は、参列しやすいよう平日を避けて休日に行われることが多いですが、一周忌法要は平日に招かれるかもしれません。
身内だけの一周忌法要で香典は必要?
参列者の範囲に関わらず、一周忌法要に参列する場合は、香典を渡すのがマナーです。
そもそも香典は、弔意を示すだけでなく、突然の不幸による出費を助け合う「相互扶助」の役割を担っています。そのため、通夜や葬儀に参列したとしても、別途香典を用意するのが基本。
ただ、事前に遺族から香典不要の連絡があったり、会場や案内状に「香典辞退」の記載があったりすれば、香典は必要ありません。また「ご厚志辞退」は、香典だけでなく、供花やお供え物もお断りする文言です。
遺族側が辞退しているのであれば、意向に沿って香典を持参しないのがマナー。逆に香典を渡すと、遺族に負担をかけてしまうかもしれないので、避けましょう。
三回忌や七回忌などの法要も香典を渡すのがマナー
遺族から辞退の案内がない限り、三回忌・七回忌などの法要も香典を用意するのが基本です。
また法要は、遺族から招待を受けた人だけが参加するもの。遺族から参列してほしいと案内をいただいているので、できるだけ断らないようにしてください。参列が難しい場合は、返事を早めに出し、香典やお花、お供え物を郵送すると丁寧です。
一周忌の香典の相場金額
関係性 | 香典の相場金額 |
---|---|
親 | 1万円~5万円 |
兄弟姉妹 | 1万円~5万円 |
祖父母 | 5千円~3万円 |
親せき | 近い親せき:5千円~3万円 遠い親せき:3千円~1万円 |
友人 | 3千円~1万円 |
一周忌の香典の相場金額は、故人との関係性によって異なるので注意が必要。目上の人や年長者、または関係が深い人ほど、包む金額が多くなる傾向にあります。
親や兄弟姉妹、祖父母など、関係性別に一周忌の香典の相場金額を紹介します。
親の一周忌(自分が故人の子ども)
親の一周忌の香典の相場金額は、1万円~5万円ほど。
故人が実親の場合、もっとも近い関係になるため、相場も高額になる傾向が強いです。なお子どもであっても、年配で社会的地位が高いのであれば、5万円以上が望ましいかもしれません。
兄弟姉妹の一周忌(自分が故人の兄弟姉妹)
兄弟姉妹の一周忌の香典金額は、1万円~5万円が相場。
兄弟姉妹は、親子に次いで近い関係になるため、比較的高額になりやすいです。
祖父母の一周忌(自分が故人の孫)
祖父母の一周忌では、親子や兄弟姉妹ほど関係が近くないため、5千円~3万円程度まで香典の相場金額が下がります。
親せきの一周忌(自分が故人の親せき)
一口に親せきといっても、関係性はさまざま。関係が近いか遠いかによって、一周忌の香典の金額は異なります。近い親せきであれば5千円~3万円、遠い親せきであれば3千円~1万円が相場です。
友人の一周忌(自分が故人の友人)
友人の一周忌の香典は、3千円~1万円が相場。
血縁関係はありませんが、友人も付き合いが深いほど、金額が高くなるのが一般的です。
一周忌の香典の金額に関するマナー
- 会食がある一周忌は金額を上乗せする
- 夫婦で参列する場合は2人分の金額を包む
- 自分の年齢と立場に応じた金額にする
一周忌の香典を包むときは、相場以外にも配慮すべき点があります。
香典の相場を目安にしながら、この3つのポイントをふまえて金額を調整しましょう。
会食がある一周忌は金額を上乗せする
一周忌法要では、終了後に会食を設けるケースが多いです。
会食がある場合は、5千円~1万円ほど香典金額を上乗せするのがベター。
遺族からすれば、僧侶へのお布施代や会場代に加えて、さらに料理の費用も発生しています。通常の相場より上乗せすることで、遺族の負担を減らしてあげるのが目的。また香典を上乗せせず、供花やお供え物を贈るのもひとつの選択肢です。
夫婦で参列する場合は2人分の金額を包む
一周忌法要に夫婦で参列する場合は、2人分の香典を一緒に包むのが一般的。
故人との関係性にもよりますが、香典の金額は、2万円~3万円が相場です。ちなみに、小学生以下の子どもであれば、一緒に参列しても香典を包む必要はありません。
自分の年齢と立場に応じた金額にする
一周忌法要に限らず、香典を包むときは自分の年齢と立場もふまえて金額を決めましょう。
たとえば、社会人として働きはじめたばかりの20代前半であれば、相場より安い金額を包んでも許されます。30代以降は、年齢があがるにつれて金額も高額にしていくのが望ましいです。年齢と同様に、社会的立場が高いのであれば、相応の金額を香典に包むようにしてください。
一周忌の香典袋の色と選び方
故人・喪家の宗教 | 香典袋 |
---|---|
仏式(仏教) | 白無地×白黒の水引 蓮の描かれた封筒 |
キリスト教式(キリスト教) | ユリや十字架の描かれた封筒 白無地の封筒 |
神式(神道) | 白無地×白黒または双銀の水引 |
香典金額 | 香典袋 |
---|---|
1万円以下 | 水引が印刷されている略式の封筒 |
1万円~3万円 | 白黒の水引の香典袋 |
3万円~5万円 | 双銀の水引の香典袋 |
一周忌の香典袋は、故人・喪家の宗教にあわせて選びます。
仏式(仏教)であれば、白無地×白黒の水引がついた香典袋を選ぶこと。蓮の絵が描かれた封筒も仏式用の香典袋です。また仏式は、包む金額によって水引の有無や色が変わるので、あわせて確認しておいてください。
キリスト式(キリスト教)は、ユリの花や十字架がデザインされている封筒を、神式(神道)では白無地×白黒、または双銀の水引のついた葬儀袋を選びましょう。
一周忌の香典袋の書き方
香典は、香典袋に包んで渡します。香典袋には、水引をかける「外袋」と、お金を入れる「中袋」がついているのが一般的。外袋には表書きと名前を、中袋には金額と名前、住所を書きます。
外袋:表書き
宗教・宗派 | 表書き |
---|---|
仏式(仏教) | 「御仏前(ごぶつぜん)」 「御香料(ごこうりょう)」 「御香典(ごこうでん)」 |
キリスト教式(キリスト教) | カトリック 「御花料(おはなりょう)」 「御ミサ料(おみさりょう)」 プロテスタント 「御花料(おはなりょう)」 「献花料(けんかりょう)」 |
神式(神道) | 「御玉串料(おたまぐしりょう)」 「御榊料(おさかきりょう)」 「御神前(ごしんぜん)」 |
香典袋の外袋では、水引の上段に表書きを書きます。
表書きは、故人・喪家の宗教によって変わるため注意が必要。仏式(仏教)、キリスト教式(キリスト教)、神式(神道)、それぞれの表書きの書き方を覚えておきましょう。
仏式(仏教)
仏式(仏教)の一周忌法要では、香典の表書きに「御仏前」「御香料」「御香典」などを使います。
ちなみに、仏式の通夜・葬儀では「御霊前」と書くのが一般的。仏教では、故人が四十九日まで霊として現世に残り、四十九日以降に仏となると考えられているためです。
キリスト式(キリスト教)
キリスト式(キリスト教)の一周忌法要では、香典の表書きに「御花料」と書きましょう。キリスト教には、カトリックとプロテスタント、2つの教派がありますが、「御花料」は両方に共通して使える表書きです。
なおカトリックは「御ミサ料」、プロテスタントは「献花料」と書いても問題ありません。
神式(神道)
神式(神道)では、仏教における一周忌のことを「一年祭り」と呼んでいます。一年祭で香典を渡す際は、表書きに「玉串料」「御榊料」「御神前」などを使いましょう。
外袋:名前
人数 | 外袋の名前の書き方 |
---|---|
個人(1人) | 会葬者本人のフルネーム |
夫婦(2人) | 夫のフルネーム+妻の名前 |
3人まで | 全員のフルネーム(目上の方から順番に) |
4人以上 | 代表者のフルネーム+外一同 |
会社(団体) | 会社名+代表者のフルネーム 会社名+代表者のフルネーム+外一同 会社名+部署のフルネーム+一同 |
外袋の水引の下段には、香典を贈る会葬者の名前をフルネームで書きます。
夫婦で参列する場合は連名で包みますが、夫だけフルネーム、妻は名前だけ書くのが一般的です。
また友人や知人、会社の同僚などと連名で書くなら、3名までにするのがマナーとされています。3名以内であれば、全員分のフルネームを書いて問題ありません。
ただ4名以上で香典を包むのであれば、「代表者の名前+外一同」と書きましょう。会社・団体の場合は、代表者の名前の右側に会社・団体名を書き添えてください。
中袋:金額と名前と住所
常用漢字 | 大字 |
---|---|
一 | 壱 |
二 | 弐 |
三 | 参 |
五 | 伍 |
十 | 拾 |
千 | 阡(仟) |
万 | 萬 |
円 | 圓 |
香典では、お金をそのまま香典袋に入れるのではなく、中袋に入れます。
中袋は、表面に香典の金額、裏側に名前と住所を書くのがマナー。
金額は、旧字体の大字を利用して縦書きで「金〇〇圓也」と書くのが一般的です。大字を使うのは、金額の改ざんを防ぐため。横書きの記入欄が設けられている場合は「¥〇〇‐」と書きましょう。
また裏側の氏名と住所は、遺族が香典返しの際に利用します。記載の住所宛てに香典返しを発送する遺族が多いので、正確に書くようにしてください。
一周忌の香典袋は濃い墨で書く
通夜や葬儀の香典袋は、故人を失った悲しみを表現するために薄墨で書きます。ただ忌明け後である一周忌の香典袋は、悲しみを伝える必要がないとされているため、濃い墨で書いて問題ありません。
一周忌の香典のお金の入れ方・包み方
一周忌法要の香典は、通夜・葬儀で渡す香典とお札を入れる向きが違います。
通夜・葬儀では、香典袋の表側に対して「裏側・下向き」にお札を入れるのがマナー。これは、肖像画の顔を見せないことで「故人が亡くなった悲しみで顔を伏せている」心象を表しています。
一方、一周忌法要の香典は、香典袋の表側に対して「表側・下向き」に入れましょう。葬儀から1年経っているため、お札の向きで悲しみを表現する必要はありません。
また香典袋は、袱紗に包んで渡すのがマナーです。弔事にふさわしい寒色系の袱紗を用意して、「左開き」「最後の折口を上から下にかぶせる」ように折りたたんでください。
お札の向き以外は、葬儀の香典の包み方とマナーは同じなので、あわせて確認しておきましょう。
- お札の枚数は1・3・5・10枚にする
- 新札と古すぎるお札は避ける
- お札の種類を統一する
- お札の向きをそろえる
- 香典袋は封をしない
一周忌の香典の渡し方・タイミング
- 会場で受付をする
- 袱紗から香典を取り出す
- 反時計回りに香典の向きを変える
- 簡潔にお悔やみを伝える
- 両手で香典を手渡す
一周忌法要では、会場に到着したタイミングで香典を渡します。
法要がはじまる直前や最中に渡すと、遺族側の迷惑になるかもしれません。時間に余裕をもって会場へ向かい、受付を済ませるようにしてください。
会場で受付を済ませたら、袱紗から香典を取り出し、両手で香典を差し出しましょう。このとき、相手が表書きを読めるよう反時計回りに香典の向きを変え、お悔やみの言葉を伝えるのがマナーです。お悔やみは、「御仏前にお供えください」「心ばかりですが、御仏前にお供えください」など、簡潔な言葉にまとめてください。
一周忌の香典でよくある質問
身内だけの一周忌法要に香典は必要?
参列者の範囲に関わらず、一周忌法要に参列するなら、香典を用意するのが一般的なマナーです。
ただ、事前に遺族から香典辞退の案内があれば、香典は必要ありません。故人の遺志や遺族の意向を優先して、ムリに香典を渡さないようにしてください。
一周忌法要の香典の相場金額は?
一周忌法要の香典金額は、通夜・葬儀と同様、故人と関係が近いほど高額になる傾向があります。たとえば、自分の親や兄弟姉妹であれば、1万円~5万円が香典の相場金額です。祖父母や近い親せきであれば、5千円~3万円。遠い親せきや友人、知人は3千円~1万円とだんだん金額が下がります。
また一周忌の場合、香典の相場を目安にしながら、会食の有無やご自身の年齢・立場に応じて金額を調整するのがベターです。
一周忌法要の香典の表書きはどう書く?
一周忌の香典の表書きは、故人・喪家の宗教によって変わります。
仏式(仏教)なら、「御仏前」や「御香料」「御香典」と書くのが一般的。キリスト教式(キリスト教)であれば、カトリック・プロテスタント共通で使える「御花料」と書くのが無難でしょう。また神式(神道)では、「御玉串料」「御榊料」「御神前」などを使います。
一周忌の香典で注意すべきマナーはある?
- 会食がある場合は金額を上乗せする
- 一周忌の香典袋は濃い墨で書く
- 仏式の一周忌では表書きに「御霊前」を使わない
- お札の向きは、香典袋の表側に対して「表側・下向き」
通常の葬儀と違う、一周忌ならではの香典マナーはこちらの4つ。
また一周忌の香典は、相場金額や香典袋の選び方に、地域ならではの慣習があるかもしれません。不安な場合は、地域の年配者や葬儀社に相談してから香典を包むと安心でしょう。