神道の葬儀 神葬祭について– 流れ・マナー

小林憲行【記事監修】
小林憲行

記事監修小林憲行

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日本のお葬式はほとんどが仏式で行われ、神道の方式で行われる葬儀は葬儀全体の数%程度に留まるといわれています。

割合としては決して多い数字ではありませんが、日本各地に古くから伝わる葬儀として、その考え方や作法は、慣習やしきたりとして受け継がれているものも少なくありません。また、最近では質素でわかりやすいということから、改めて神葬祭に関心が高まっているともいわれています。ここでは神道の葬儀の流れやマナーなどについてご説明します。

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神道の葬儀、神葬祭とは

神道の葬儀のことを神葬祭(しんそうさい)といいます。

神道の世界では、亡くなった人は神々の世界へ帰って子孫を見守ると考えられています。

こういったコンセプトから、神葬祭は故人を子孫の家に留めて守護神になってもらうための儀式という意味合いがあります。

神葬祭のふたつの意味

神式葬儀には、「穢れ(けがれ)」と「先祖崇拝」の2つの大きな概念があります。

穢れというのは、生命力が減衰した状態です。気が枯れるとも書きます。悪い状態を穢れととらえ、お払いをすることにより清められるとされます。

神葬祭を執り行うことで、不幸が起きたという非日常の状態を祓い清め、不幸が起きていない日常の世界に戻すという意味があります。

葬儀のしきたりなどで、お茶碗にお箸を立てたり、屏風を逆さまにしたり、故人の布団を上下逆に掛けるなどの光景が見られますが、これらはいずれも現在非日常の世界にあることを表しています。神葬祭の後に元に戻すことで、日常が戻ったことを表します。

神葬祭を執り行うことで、不幸が起きたという非日常の状態を祓い清め、不幸が起きていない日常の世界に戻すという意味があります。

一方、先祖崇拝というのは、自分たちの祖先が、守り神として一族を守ってくれる存在という考え方です。

故人は神葬祭の後、祖先神となります。霊璽(れいじ)に故人の御霊(みたま)を移し、祖霊舎(それいしゃ)に祭ることで遺族、親族の一族を守る存在になると考えられています。

神葬祭の歴史

神道は縄文時代から弥生時代を経て古墳時代にその原型ができたといわれています。

その葬儀については、「喪屋を作りて、河雁を岐佐理持とし、鷺を掃持とし、翠鳥を御食人とし、雀を碓女とし、雉を哭女とし、如此行ひ定めて、日八日夜八夜を遊びき」と、日本最古の歴史書である『古事記』にアメノワカヒコの葬送の様子が記されています(神社本庁 HPより)。

しかし、公に神葬祭が行われるようになったのは最近のことで、江戸時代以降からです。それまでは江戸幕府によって檀家制度が確立されたため、葬儀も寺院がすべて執り行っていました。

明治時代になると、明治政府の政策によって初詣や七五三といった神道由来の行事が定着したのに対し、神葬祭はあまり定着しませんでした。

神道の葬儀

神葬祭の特徴として、統一された式次第がないことが挙げられます。

神道は自然と祖先への崇拝をベースにして自然発生した民俗信仰なので、地域、神社、さらに神葬祭を行う神職によって違った流れになることもあります。

ここからは神葬祭の比較的一般的な流れと、仏式との違いを紹介していきます。

神葬祭の葬儀の流れ

神道の葬儀の流れ

神道の葬儀は、概ね以下のような順番で執り行われます。

神葬祭の流れ

1.帰幽奉告(きゆうほうこく)

訃報を聞いたあと、神棚や祖霊舎(それいしゃ、仏壇に相当するもの)に対して故人の死を奉告儀式です。神棚や祖霊舎の扉を閉じ、白い紙を貼って塞ぎます。

2.枕直しの儀

遺体を北枕にして部屋に安置し、白い布で顔を覆って屏風を立てます。

枕元に守り刀を置きます。守り刀には悪霊から死者を守るという意味があります。

遺体の近くに祭壇となる小さな台を設置し、その上に米・塩・水・故人の好物を乗せます。

3.納棺の儀

遺体を清めて白い装束に着替えさせ、棺の中に遺体を安置します。

白装束を着せず、遺体の上に白い布をかけるだけのこともあります。棺のふたを閉めた後は、その上を白い布で覆い、祭壇にお供え物をして全員で礼拝を行います。

4.通夜祭と遷霊祭

仏式での通夜にあたる儀式です。

通夜祭が始まると神職の人と雅楽を演奏する人が式場に入場し、神職が祭詞(さいし)と祭文(さいもん)を唱えます。

祭詞や祭文とは故人の安らかな眠りを祈り、子孫の家の守護霊として家を守ることを願う言葉だと考えてください。

このとき遺族を含めた参列者は、玉串(後述)を捧げて礼拝などを行います。

続いて遷霊祭(せんれいさい)が行われます。これは故人の魂を遺体から抜く儀式で、これによって霊魂が身体から離れ、遺体は魂のない亡骸になると考えられています。

魂は霊璽(れいじ)という、仏教でいうところの位牌に移った状態になります。

5.葬場祭

仏式の葬儀・告別式にあたる、お葬式のメインとなる儀式です。

大まかな流れは通夜祭と大体同じですが、弔電の朗読や棺への花入れ、喪主による挨拶などが行われます。

すべて終わったら、火葬をするために火葬場に向けて出棺します。

6.火葬祭

火葬場で神職が祭詞を奏上し、参列者が玉串を捧げる儀式です。

火葬祭が終わったら遺体を火葬します。

7.埋葬祭

お墓に遺骨を埋葬する儀式です。かつては火葬場から遺骨をもって埋葬するお墓へ直接行きました。

近年は遺骨を一度自宅へ持ち帰って50日後に行われる「五十日祭」で埋葬することが多いようです。五十日祭とは、仏教の四十九日に相当する行事です。

8.帰家祭(きかさい)と直会(なおらい)

火葬や埋葬をして自宅へ戻ったときに行うのが帰家祭です。

手を塩や水で清めて、葬儀の終了を霊前に奉告することが目的です。

その後は直会に移り、神職や関係者の労をねぎらうための宴を開きます。

以上で葬儀はすべて終わり、この後は節目となる日や年に供養となる霊祭を行います。

神道と仏教の違い

既に述べたように、神道と仏教ではお葬式に対する考え方が根本的に違います。

しかし葬儀の進行自体は類似点が多いので、仏式の葬儀に慣れた人が神道の葬儀に参加しても混乱するシーンは少ないかもしれません。

ただし、神道と仏教では儀式の内容は似ていても名称が異なることが多くあります。

そこで、以下によく使われる用語の例を挙げていきます。

仏教神道
僧侶神職
喪主斎主(さいしゅ)
位牌霊璽(れいじ)
お布施御礼、御祭祀料、御玉串料など
供物神饌物(しんせんもの)
焼香玉串奉奠(たまぐしほうてん)
法要霊祭(れいさい)、式年祭(しきねんさい)
戒名諡号(おくりな)、霊名など
忌中払い直会
初七日十日祭
四十九日五十日祭
一周忌一年祭

*厳密には違うことを指す用語もありますが、わかりやすさを考慮して1対1で対応させています。

神道の葬儀のマナー

神葬祭へ出席する際に、1番気になるのはマナーや作法ではないでしょうか?

特に気を付けるべき内容をピックアップして紹介します。

服装

仏式の葬儀に行くときと同じ服装で構いません。

喪服を着て、アクセサリー類はできるだけ外してください。

なお、数珠は仏教のお葬式で使うものなので、神道のお葬式には必要ありません。

言葉

まず、神道の世界では死は悲しむべきものではないとされています。このため、哀悼の意を述べるのは神葬祭の場では不適切となります。

「お悔やみ申し上げます」と伝えるべきシーンでは、「このたびは突然のことで…」などと言葉を変えることをおすすめします。

また、仏教由来の言葉は使うのを避けましょう。

例えば「成仏」「冥福」などは仏教の考え方から生まれた言葉であり、神道の考え方にはなじまないので使用しません。このような場合は、「平安」と言い換えるとよいでしょう。

例えば、「ご冥福をお祈りいたします」を神道式に言い換えると、「御霊のご平安をお祈りいたします」となります。

神職へのお礼について

神道では、お布施のように宗教者に渡すお礼に特別な名称はないようです。一般的には「御礼」「御供」「御祈祷料」、もしくは榊をささげるお礼として「玉ぐし料」とする場合もあります。「初穂料」と書く方もいらっしゃるようですが、こちらは「新しく収穫したお米の代わりにお供えする」という意味合いがあり、どちらかというとお祝い事の際に用いるようです。

なお、「玉ぐし料」という言い方は、慶事、弔事どちらでも使用可能です。 仏式の「香典」に該当する、遺族へ渡しするお見舞いにも、表書きに「玉ぐし料」と記すことがあります。

玉串奉奠

仏式の焼香やキリスト教の献花に相当するのが玉串奉奠です。

玉串とは榊の枝に紙垂(しで)という紙を付けたものです。この枝を霊前に捧げるのが玉串奉奠です。玉串を捧げ方は次の通りです。

玉串奉奠の流れ

1.玉串奉奠の列に並びます。

2.自分の順番になったら、次の人に軽く会釈して進み出ます。

3.遺族、斎主に一礼します。

4.神職から玉串を受け取ります。丁寧に礼儀正しく、両手で受け取ってください。

5.玉串を胸の高さにキープしながら、左手側で枝の葉に近い部分を持ち、右手で枝の付け根部分を持ちます。左手が奥、右手が手前になるような持ち方です。

6.玉串を地面に対して垂直の状態にします。左手が上、右手が下です。

7.枝の先が地面を、枝の付け根が天井を向くように、玉串を時計回りに180°回転させます。

8.枝の付け根が遺影の方向を、枝の先が自分の方を向くようにして、指定の場所に玉串を静かに置きます。

9.遺影に2回お辞儀をして、音を立てないように2回拍手を打ちます。その後もう1回お辞儀をします。

10.後ろに下がって遺族と斎主に一礼し、自分の席に戻ります。

*上記は、玉串奉奠の一般的な流れです。地域や神葬祭を行う神社、神職によっても異なります。詳しくは葬儀社または、神職に確認しましょう。

神道の葬儀の香典について

香典に使う封筒(不祝儀袋)は市販されていますが、神道では表書きは「御霊前」「御玉串料」となります。

蓮の花が描かれた不祝儀袋は仏教用なので、神道の葬儀には使用しません。

また、水引の色は黒と白のものか、双銀のものを選ぶのが一般的です。また、香典の額自体は仏式のときと同じで構いません。

以下に目安として香典の相場を記載しますが、故人との関係性、自分の気持ち、年齢、収入、住んでいる地域の風習などを総合的に考えて、自分自身で最終的な額を決めてください。

故人との関係とお香典の目安

  • 自分の祖父母が亡くなった…1万円~3万円
  • 自分の親が亡くなった…5万円~10万円
  • 義理の両親が亡くなった…5万円~10万円
  • 兄弟姉妹が亡くなった…5万円
  • 叔父叔母が亡くなった…1万円~2万円
  • いとこ、その他の親戚が亡くなった…3,000円~2万円
  • 友人知人が亡くなった…5,000円~1万円
  • 友人知人の親が亡くなった…3,000円~1万円
  • 恩師が亡くなった…3,000円~1万円
  • 近所の方が亡くなった…3,000円~1万円
  • 上司が亡くなった…5,000円~1万円
  • 上司の家族が亡くなった…3,000円~1万円
  • 同僚、部下、後輩が亡くなった…5,000円~1万円
  • 同僚、部下、後輩の家族が亡くなった…3,000円~1万円

まとめ

神道の葬儀は神葬祭といいます。特別なルールがあるというよりは、もともと日本の各地にあった葬儀が今の神葬祭の基本となっているため、地域によって作法や流れは異なります。

式次第は仏式の葬儀に似た部分が多いのですが、差異も多く見られます。仏教の用具である数珠を使わない、仏教の言葉である「冥福」「成仏」などを使わないといった注意が必要です。

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