【直葬経験者に聞く】直葬にした理由、良かったこと、困ったこと、これから直葬をしたいという人へのアドバイス


通夜も葬儀も告別式も行わないお別れ、直葬(火葬式)。

このところ、そんな直葬が増えているという話をよく耳にします。直葬を選ぶ理由はそれぞれの家庭によって事情がありますが、経済的な理由というのも大きな割合を占めているようです。

しかし、費用があまりかからないという直葬ですが、安易に選択してしまうと後々、トラブルにつながるとも言われています。

また、事前相談などでは時々、「直葬でお願いします」と言いながら「祭壇は大好きな○○のお花で、お友だちも呼ぶからお食事は……」というように、直葬と家族葬を混同されている方もいらっしゃるようです。

 

今回は、直葬に関するアンケート調査結果や、直葬を経験されたご遺族へのインタビューなどを通じて、“実際のところ直葬ってどんなの?”に迫ってみたいと思います。

 

そもそも直葬とは!?

「直葬」は近年、急激に増えた葬儀形態の一つで、通夜や葬儀・告別式を行わず、火葬のみを行うものです。故人とのお別れは、火葬炉の前で簡単な形で行われ、火葬前に数分取るだけのケースもあるようです。

僧侶(宗教者)がみえる場合は、お別れのときと火葬炉に入ったあとの数分間のご供養になります。

直葬には、費用を安く抑えられる、時間を短縮できるなどのメリットがある反面、葬儀後に煩わしい思いをしたり、苦言を呈されたりする場合もあるようです。また、菩提寺(ぼだいじ)に黙って直葬を行ってしまうと、代々のお墓に遺骨を納められないケースもあるので、検討する際は慎重に考える必要があります。

 

直葬はどのくらい行われているの?

鎌倉新書の月刊『仏事』で全国の葬儀社を対象に行ったアンケート結果*を見ると、お葬式の件数に占める直葬の割合は約16%となっています。

マスコミで取り上げられる機会は増えているようですが、直葬の数そのものはそれほど多くはないのかもしれません。

 

参列者はどのくらい?

葬儀の種類別に見た参列者の平均人数です。直葬への参列者は約7人くらいです。

 

どうして直葬を希望するの?

直葬を望む理由については、「経済的な理由」が約6割を占めています。また、葬儀の知識の低下やつながりの希薄化、価値観の変化を読み取ることができそうです。

 

 

直葬経験者に聞く「自由に生きたお父様のお葬式を直葬で」

 

都内に住むFさんは2015年に、お父様を亡くしました。

 

自由奔放だったというお父様は長年、お店を経営していましたが、数年前に店を閉める手伝いをしていたFさんは「何かがおかしい」と感じたと言います。

調べてみると、お父様が認知症を患っていたことがわかりました。さらに、従業員の給料を支払うために多額の借金も抱えていて、大変な状況になっていました。

仕事が忙しく、父親の異変に気が付かなかったと、Fさんは悔やみます。

 

弁護士に依頼して借金の整理などは終えても、お父様の病状は芳しくありません。

自宅近くに越してもらって面倒を看ていましたが、Fさんも家族も疲れきってしまい、お父様には施設に入ってもらうことになりました。

その施設が、お父様の終の棲家となります。

施設で息を引き取ったお父様は、紹介を受けた葬儀社で直葬してもらうことになりました。

 

「葬儀社には『火葬にしていただければいい』と伝えて、直葬にしてもらいました。葬儀社の対応はとても丁寧で素晴らしかったです」とFさんは言います。

火葬場が混みあう中、仕事の都合上なるべく早く終わらせたいというFさんの希望を受けて、葬儀社の担当者が火葬炉の予約の空きを探し、直葬を行いました。

 

直葬の場合、お別れの時間は非常に少ないです。

Fさんは葬儀社の担当者から「直葬はお別れできる時間が10分くらいしかありませんから、時間通りに来てください」と言われていました。

お坊さんは呼ばず、事情を説明して納骨の予定だけを入れていたそうです。

 

お父様の死を経験して、Fさんは「遺された人に迷惑がかからないよう、本人もできることはしておく。これは大事」と言います。

お葬式のために、保険をかけるとか少しでもお金を遺すこと。

そう、切実に思ったそうです。

 

「もしも私の父が、何百万のお金を借金ではなく財産として遺してくれていたら、それで立派なお葬式をしてあげることもできたんです。それまでも黙ってできる限りのことをして支えてきたつもりですが、限界はあります。父には『貴方がこれまでやってきたことの結果がこれなんだよ』としか、言えません」

 

Fさんの語る言葉が、とても印象に残っています。

 

 

直葬経験者に聞く「故郷のお寺でお葬式をするために、仮に行った直葬」

 

同じく東京都に住むOさんの場合は、入院したお父様のお葬式の準備を事前に行っていました。

 

Oさんのお父様は東北地方のある県で暮らしていましたが、震災後、首都圏にある施設に移りました。

そして住民票はOさんが暮らす東京。でも、菩提寺は東北です。

 

こうなると、万一の時に「どこでお葬式をすればいいのか?」迷ってしまいます。

 

お父様の誕生日など、記念日には子どもや孫たちも施設に集まって一緒に祝いました。「近くに来てもらって良かった」とOさんも思っていました。

そこで、お墓も都内で探そうとお父様に相談したところ「自分の骨は(故郷の)お寺の墓に入れてくれ。あそこで眠りたい」と言われました。

 

菩提寺にそのことを伝えると「「もしもの時には東京の方まで葬儀に来てもいいし、お骨にして持ってきてくれてもいい」とおっしゃってくれたので火葬にして、お寺に遺骨を持って行って改めて葬儀をあげるということにし、葬儀社も決めました。

 

実際にお葬式を行ったのは、葬儀社を決めてから1年ほど経ったころでしたが、その葬儀社に電話をするときちんと覚えていてくれて、葬儀に関する心配は全くなかったと言います。

火葬式を行った後、その翌々日に菩提寺に行き、改めてお経をあげてもらったそうです。

 

 

直葬の「ここが良かった」と「ここが困った」

直葬を行った人は、直葬に関してどのような感想を持っているのでしょうか?

直葬を経験した方の声では好意的な回答も多数寄せられています。

しかし、その一方では「これは改善して欲しい」「これは困った」という意見もやはり多々あります。

ここで一部ご意見をご紹介します。

 

直葬のここが良かった

「父を家族葬で、母を直葬で行ないましたが、葬儀の形は世間体でなく、故人の意志、家族の気持ちできめることが大事

「我が家は直葬だったけれど、派手にする必要もないと思った。家族が、故人を思う気持ちがいちばんだと思った」

形や世間体ではなく、どの様なお葬式にしたいのかが大事なので直葬で良かったという意見は多数寄せられています。

 

また、費用を抑えられるという点でも、好意的な意見があります。

金銭的余裕がない事をはっきり伝えば、きちんと対応して下さる事がわかったので、本当にありがたかったです」

「葬儀にお金をかけるより、生きている人のためにお金は使った方が故人もよろこぶと思う」

 

このほか、葬儀社の担当者の人柄に感謝する意見もありました。

しかし、反対に直葬ということで不愉快な思いをしたという意見もあります。

 

直葬のここが困った

「費用をおさえて欲しい旨伝えたら、態度が急に変わった。とても不愉快でした」

お葬式の規模で葬儀社の担当者の態度が変わったという声です。故人を送ることに変わりはありません、「お客のランクは付けないでほしい」と訴えています。

このほか「骨あげまでいてほしかった」という意見もありました。

 

宗教的な儀礼がないことに不安を感じたという意見もあります。

火葬時のお経してなくいいのか? と不安に感じた」

 

また、「領収書に“火葬プラン”となっているので、役所からお葬式ではないので、葬祭料は支給できないと言われました

自分ではお葬式をきちんとしたと思っているのに、「人生の最後に侮辱されたようで故人がかわいそうだと思います」というご意見です。

 

 

直葬経験者からのアドバイス

このほか、直葬でも考えておかなければならないことはあるという点では、次のようなアドバイスもあります。

霊安室が必要になる場合があるので事前に知っておくと良い」

「火葬のみでもお悔みへ来る人居るため、香典返しの準備は前もって必要

 

親せきの間でのトラブルもあるのでしょう。

「どんな葬儀にするか、親族で話し合う方が上手くいく

というアドバイスもあります。

 

さらに、もしも直葬にすることで何かトラブルが発生したら、次のような解決方法もあるようです。

「困った時は故人や親族の偉い人の意見でやっていると逃げてしまえば楽だと思う」

 

 

一口に直葬といっても、その内容はさまざま。葬儀社によっても異なるでしょうし、担当者によっても変わります。

また、直葬を行うことで、親せきや菩提寺との間でトラブルが起こることもありますし、後から悔いが残るという場合もあるようです。

安易に決める前に、一度、関係する方々でお話してみることをお勧めします。

 

 

なお、ご遺族へのインタビューの全文は、『小林美保子の素敵なお葬式』でご覧いただけます。

(文・構成 小林憲行)


* 調査概要 *

「直葬の実態を探る」(月刊『仏事』 2015年2月号)

調査主体:株式会社鎌倉新書

調査期間:2014年11月19日~27日

調査方法:任意に選んだ全国の葬儀社(冠婚葬祭互助会・JA・生協も含む)にFAX・メールにて調査票を配布

有効回答数:217件

葬儀の種類:葬儀の種類と内容については定義がないので、ここでは次のように仮定しています。

  • 社葬:会社が施主になった葬儀
  • 一般葬:参列者が31名以上(親族含む)
  • 家族葬:参列者数が30名以下(親族含む)
  • 一日葬:参列者の人数に関係なく、一日だけの葬儀
  • 直葬:ホールなどでの式典を行わない火葬のみの葬儀
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