「葬式無用」が告別式のルーツ!?日本で最初に告別式を行った人物「中江兆民」

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先日亡くなられた俳優の神山繁さんが、生前の遺志で「葬式無用、戒名不用」と希望されていたという報道がありました。

「葬式無用、戒名不用」は、実業家・白洲次郎氏の遺言としても有名ですが、日本ではじめに「葬儀を行わないように」と遺言したのは、明治の思想家、中江兆民といわれています。

その遺志が、それまでの葬列を組んで行っていた葬儀を大きく変えることになる、「告別式」を生みました。

今回は、中江兆民の告別式について、ご説明します。

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中江兆民ってどんな人?

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中江兆民は、1847年に土佐藩(高知県)に足軽の家庭に生まれました。

藩が派遣する留学生として、長崎でフランス語を学び、1871年に明治政府が派遣した岩倉使節団に同行し、フランスにわたります。

2年あまりのフランス留学の中で、自由と平等を説いたフランスの思想家、ジャン=ジャック・ルソーの『社会契約論』に強い影響を受けた中江兆民は、日本に帰国した後、漢文に訳した『民約訳解(みんやくやくかい)』を刊行しました。

これが自由民権運動の論理的な支えとなり、中江兆民は「東洋のルソー」と呼ばれるようになります。

人権は天から与えられたという「天賦人権」による民主主義の原理・原則を説き、1890年には、第一回衆議院議員総選挙で当選、国会議員となりました。

しかし、議会のやり方に反対して、辞職。

1901年に他界し、東京・港区の青山霊園に葬られています。

ちなみに、「兆民」というのは「億兆の民」という意味があるそうです。

中江兆民の告別式

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告別式というのは、その文字が表している通り、(故人に)別れを告げるための儀式です。

中江兆民は、喉頭癌で余命宣告を受けた際に、無宗教者であるとして、葬儀を行わずにすぐに火葬するように、また医学の発展のために解剖するよう、遺言しました。

そのため、友人や弟子たちが宗教色のない「無神無霊魂」の儀式として、告別式という名前でお別れの儀式を開いたのが、現在の告別式のはじまりとされています。

1901年12月13日、午後7時30分に他界した中江兆民の告別式は、12月17日、青山会葬場にて行われました。

式では、板垣退助の弔辞、大石正巳の追悼演説、そして門下生総代として野村泰亮の永別式辞が述べられました。

告別式がどのように行われたか、その模様は、1901年12月18日の朝日新聞にも「中江兆民居士告別式」という記事で、詳細に書かれています。

これによると、17日午前9時に中江兆民の棺を乗せた棺車が小石川の自宅を出て、午前10時に「青山墓会葬場」に到着すると、政党員や議員、新聞記者など「一千名参集して棺を迎え場の正面に柩を安置」して、式を行ったとあります。

また、12月15日の東京日日新聞(現在の毎日新聞)には、「友人 板垣退助 大石正巳」の名で、お悔やみ広告が出ています。ここにも「遺言により一切宗教上の儀式を用ゐず」とあります。

宗教上の儀式を用いないため、それまでの葬儀における、読経に代わって弔辞や演説などが行われ、焼香に代わって「棺前告別」が行われました(この「棺前告別」というのは、敬礼のことのようです)。

中江兆民の告別式でお葬式はどう変わった?

それ以前のお葬式はというと、葬列を組んで寺院や墓地へ向かい、そこで行っていましたが、この葬列は単なる移動ではなく、故人を送り出す大切な儀式のひとつとされていました。

しかし、明治時代になるとこの葬列が次第に派手になって、喪家の経済的な負担も大きくなっていました。

さらに、都市部では交通機関が発達することで路上での葬列の進行が難しくなったり、長時間歩くことを嫌がり、直接葬儀が行われる会場に集まる人も出てくるようになりました。

こうした背景もあったためか、中江兆民の告別式が行われた後、同じように告別式を行う人も増えてきました。

当初は法曹関係者や学者など、告別式を行うのは限られた人々でしたが、次第に一般の人々にも広がっていきました。

同時に、中江兆民の告別式が無宗教のお別れであったのに対し、焼香台を設けて参列者がお焼香を行うなど、宗教色のある告別式も増えていき、現在の葬儀・告別式というかたちに変化していきます。

中江兆民は、告別式の後は荼毘(だび)にふされ、現在の青山霊園に埋葬されました。

ただ、この時には石碑は立てられず、現在、中江兆民の墓とされているのは、1915年に友人や門下生らが建てた、「兆民中江先生瘞骨之標」の碑といわれています。

また、解剖を遺言したという中江兆民ですが、解剖の結果、喉頭癌といわれていたのが、実は食道癌が喉頭を圧迫していたことがわかったそうです。

葬儀と告別式の違いについて知りたいという方は、「通夜と告別式の違いは?どちらに参列すればいい?」をご参照ください。

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