香典辞退とは、遺族が参列者から香典の受け取りを遠慮すること。家族葬や直葬といった小規模な葬儀の増加とともに、近年香典辞退するご家庭が増えています。
この記事では、香典辞退をする方法や具体的な伝え方、辞退したのに香典を受け取ったときの対応方法などを解説します。
目次
香典・香典辞退とは?
香典とは、故人への弔意を示すために供えるお金で、遺族を経済的に支援する意味が込められています。葬儀の参列者が喪主・遺族へ渡すのが一般的ですが、最近は「香典辞退」するご家庭が増えています。
香典辞退とは、喪主・遺族が参列者からの香典を受け取らないこと。故人の遺志や参列者への配慮、また遺族の香典返しの負担軽減を目的に、香典辞退するケースが多いようです。
香典の受け取りを辞退するときは、葬儀の案内や訃報で香典辞退の意向を示し、参列者が混乱しないよう配慮してください。また、香典辞退は、参列者からの厚意を断る行為でもあるため、喪主・遺族は丁寧に考えを伝える必要があります。
香典辞退の要因は家族葬の増加
香典辞退を選択する遺族が増えている要因に、家族葬の増加があります。家族葬とは、参列者を近親者に絞り、小さな規模で実施されるお葬式です。参列者が少ないぶん一般的なお葬式より費用をおさえやすく、準備や当日対応の負担も軽減できると人気を集めています。
家族葬を選ぶご遺族には、「身内しか呼ばないから香典のやりとりは不要」「手間や費用をかけずにお葬式をしたいから香典も辞退したい」といった考えをもつ方も多く、香典辞退が増えている要因と考えられています。
香典辞退する3つの理由

- 遺族の香典返しの手間を無くすため
- 参列者の経済的な負担を減らすため
- 家族葬や直葬など小規模な葬儀をするため
香典辞退をする理由には、遺族側の都合だけでなく、参列者への配慮も含まれます。香典の受け取りを遠慮する典型的な理由を理解しておきましょう。
遺族の香典返しの手間を無くすため
遺族が香典辞退する理由として、香典返しの負担軽減が挙げられます。
香典返しとは、香典をいただいた参列者に後日贈るお礼の品物です。受け取った香典金額の整理や品物の購入、発送手続きなど、さまざまな作業が必要になります。香典辞退することで香典返しの負担を減らし、故人を偲ぶ時間を確保したいと考えるご遺族もいるようです。
» 香典返しとは?渡すタイミングや金額相場、品物選びのマナー
参列者の経済的な負担を減らすため
参列者に経済的な負担をかけたくないと考え、香典辞退を決める喪主・遺族もいらっしゃいます。
香典の金額は、故人との関係性や自分の年齢などで変動しますが、数万円は包まなければなりません。また、突然の訃報だと予想外の出費となり、生活を圧迫する可能性もあります。参列者に経済的な負担を感じずに参列してほしいという喪主・遺族の意向から、香典辞退を選択しています。
家族葬や直葬など小規模な葬儀をするため
家族葬や直葬などの小規模な葬儀では、香典辞退をするご家庭が多いです。
近親者のみで故人を見送る家族葬や、火葬だけで式を行わない直葬は、葬儀における出費をおさえられます。香典を受け取らなくても経済的に問題なければ、香典は必要ありません。また、家族以外の参列者を呼ばない葬儀もあり、家族間で相談して香典不要にしているご家庭もあります。
香典辞退を伝える3つのタイミング

- 訃報連絡・葬儀の案内状
- お葬式当日の受付
- 葬儀後に送付する死亡通知状
喪主・遺族から香典辞退を伝えるタイミングは、大きく3つあります。お葬式の形態や訃報連絡をする範囲などによって変わりますが、連絡するタイミングは必ず合わせるようにしてください。
訃報連絡・葬儀の案内状
故人のご逝去や葬儀の実施を知らせるときに、香典辞退の案内をします。訃報連絡や葬儀の案内状は、事前に香典辞退の旨を伝えられるため、参列者が香典を準備する手間が省けます。
電話や対面で知らせても問題ありませんが、文面では必ず「香典辞退」の旨を明記しておくのが大切。聞き忘れや誤解を防げて、お葬式当日の混乱も避けやすくなります。また、葬儀前に意思表明しておけば、遺族も香典返しを手配せずにすみ、負担を軽減しやすいです。一般参列者を呼ぶ葬儀なら、できるだけ訃報連絡・葬儀案内のときに香典辞退の連絡を入れましょう。
お葬式当日の受付
お葬式の当日、参列者が受付に来たときに、受付担当者から香典辞退を伝えます。事前に香典辞退を案内していなかったり、案内しても持参する参列者がいたりする場合は、当日案内が有効です。
お葬式の受付で香典辞退を知らせるときは、案内文を掲示し、受付担当者から口頭でも案内します。とくに香典を持参してきた参列者は戸惑いやすいため、必ず口頭で案内するようにしてください。遺族の意思を理解してもらえるよう、丁寧に香典辞退する旨を伝えるのが大切です。
葬儀後に送付する死亡通知状
家族葬や直葬など、参列者の範囲を限定するお葬式では、実施後に死亡通知状を送るのが一般的です。葬儀に参加する近親者には事前に連絡し、それ以外の方はお葬式が終わったあとに死亡通知状でご逝去を知らせます。
死亡通知状で香典辞退の案内をしておくと、香典の郵送や弔問を避けられます。「すでに葬儀を終わらせたこと」「香典を受け取らないこと」を明記し、意向を丁寧に伝えましょう。
伝える相手別!香典を断るときの伝え方と例文

- 職場・会社
- 故人の知人・友人
- 家族葬に参加予定の親戚
香典辞退を知らせる場合は、相手にあわせて伝え方を変えるのが大切。伝える相手別に、香典を断るときの言い方と例文を紹介します。
職場・会社への香典辞退の例文
自分の職場・会社に香典辞退を知らせるときは、あわせて忌引きの連絡もしてください。
電話でも問題ありませんが、後から確認できるメールで連絡すると、誤解や混乱を防ぎやすいです。職場・会社に香典や参列辞退を伝えるときは、丁寧かつ明確な文章で礼儀正しく伝えましょう。
職場・会社に香典辞退を伝える例文(メール)
件名:忌引き休暇の取得および参列・香典の辞退について
本文:
突然のご連絡で恐縮ですが、私の父が〇月〇日に他界いたしました。
ついては、誠に勝手ながら、〇日間の忌引き休暇を取得いたします。
この間の業務については、〇〇さんに代理対応いただきます。
ご不便をおかけいたしますが、ご理解いただけますと幸いです。
また、誠に恐縮ではございますが、今回の葬儀は家族のみで執り行います。
そのため、参列や香典のご厚意はご遠慮いただきたく存じます。
お忙しいところ、誠に恐縮ではございますが、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
故人の知人・友人への香典辞退の例文
故人の知人・友人に香典辞退を伝えるときは、冒頭で生前の感謝を伝え、文末に辞退する旨を明記します。連絡する相手が少なければ電話で、多ければはがきやメールで連絡すると効率的です。
また、故人の知人・友人には、葬儀前に送る訃報連絡や葬儀の案内状で香典辞退を伝えましょう。事前に伝えることで、参列者と遺族、双方の負担を軽減できます。
故人の知人・友人に香典辞退を伝える例文(はがき)
突然のご報告となり恐縮ですが 父〇〇が〇月〇日に永眠いたしました
生前のご厚情に深く感謝申し上げます
つきましては 下記の通り葬儀を執り行いますことをご案内申し上げます
日時:〇年〇月〇日 午後〇時より
場所:葬儀場名・住所・連絡先
誠に勝手ながら 故人の遺志により香典・供花・供物の受け取りは辞退いたします
なにとぞご理解賜りますようお願い申し上げます
家族葬での香典辞退の例文
家族葬では、一部の参列者で葬儀を行ったあと、死亡通知状で故人のご逝去を知らせることが多いです。死亡通知状には、故人のご逝去と葬儀の実施、香典辞退の旨を記載してください。
挨拶状の送り先は、参列できなかった親戚や知人、友人など。発送は、四十九日を過ぎた忌明けのタイミングが一般的です。ただし、11月後半以降に発送する場合は、喪中はがきとして送るのが望ましいとされています。
家族葬で香典辞退を伝える例文(挨拶状)
拝啓
父 ○○が 去る○月○日に ○歳にて永眠いたしました
生前のご厚誼を深謝し 謹んでご連絡申し上げます
葬儀につきまして 故人の遺志により 家族葬を執り行いましたことをご報告いたします
なお 誠に勝手ではございますが 故人の遺志により 香典は固くご辞退申し上げます
今後とも変わらぬご厚誼を賜りますようお願い申し上げます
末筆ながら 皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます
敬具
令和〇年〇月〇日
喪主 〇〇〇〇
香典辞退したのに香典を渡されたときの対応
香典辞退していたのに香典を渡されたときは、状況に応じた対応が必要です。
事前に香典辞退を伝えていたなら、原則として香典返しは不要とされます。ですが、相手によっては香典返しやお礼の手紙を用意して渡しても問題ありません。
原則として香典返しは不要
事前に香典辞退を知らせているなら、香典を受け取っても香典返しは不要です。また、香典返しをしなくても失礼にはあたりません。なぜなら、遺族が香典を遠慮しているのを理解した上で、参列者が香典を贈っているからです。
香典辞退を承知した上で香典を渡す方は、香典返しを期待しているわけではないでしょう。「故人に弔意を伝えたい」「遺族を支援したい」といった厚意で香典を用意してくださることが多いので、受け取っても問題ありません。
気になる場合は香典返しを準備
受け取った香典の金額が多かったり、立場が上の人だったりすると、何もお礼をしないのが不安かもしれません。香典をいただいた人に一般的な香典返しをするのもよいですが、お礼の手紙を書いて感謝を伝える方法も有効です。
ただし、故人が勤めていた企業から、福利厚生の一環で香典が出ているなら、香典返しは必要ありません。気になる場合は、香典をいただいた方にお礼の品物や手紙を用意しましょう。
【参列者向け】香典辞退を受けたときの対応
- 供物を贈る
- 供花を贈る
- 弔電を送る
- お悔やみの手紙を送る
香典辞退の連絡を受けたら、基本的には遺族の意向を汲んで香典を渡さないのがマナーです。ですが、遺族が香典”だけ”を辞退しているなら、供物や供花、弔電、手紙などでお悔やみを伝えても問題ありません。香典辞退をされたものの、故人への弔意や遺族への励ましを伝えたいなら、代替案を検討してみてください。
香典だけでなく、供物・供花・弔電などもあわせて辞退されているなら、無理に贈るのはやめましょう。
供物を贈る
供物とは、故人への感謝や弔意を伝えるために送る品物です。香典の代わりに、供物を贈るのも弔意を示す方法の1つです。
供物としてよく選ばれているのは、日持ちする果物やお菓子、缶詰など。故人が生前好んでいたものや、供養に用いるロウソク・線香なども適しています。ただ、殺生を連想させる肉や魚、慶事を連想させる酒や鰹節などは贈らないように注意してください。
供花を贈る
供花とは、通夜・葬儀で故人の祭壇に供える花籠やフラワースタンド、フラワーアレンジメントなどのお花です。百合や菊、胡蝶蘭などの白い花を基調にし、故人の好きな花を用いる供花もあります。
供花は通夜・葬儀が始まる前に到着するよう手配するのがマナー。また、贈る前に斎場や遺族に問題ないか確認しておくと安心です。葬儀案内で配送する場所や時間を確認し、間違えないようにしましょう。
弔電を送る
弔電とは、通夜・葬儀に出席できないときに送る電報です。弔電は故人に向けたメッセージを端的に伝える方法で、故人への弔意や敬意をこめられます。
弔電といえばNTTによる電報のイメージですが、郵便局のレタックスやインターネットの弔電サービスも利用可能です。申し込み方法も、電話・インターネット・窓口と幅広いため、状況に応じた方法で手軽に送付できます。
お悔やみの手紙を送る
お悔やみの手紙は、故人への弔意や遺族への慰めを伝えるのに有効な方法です。
弔電は故人への弔意を伝えるのが主な目的ですが、お悔やみの手紙は遺族への励ましや労りの言葉も添えられます。また、弔電と違って通夜・告別式が始まるまでに到着する必要はありません。遺族に対する思いを自分の言葉で伝えたい場合には、お悔やみの手紙を送りましょう。
香典辞退を明確に伝えてトラブルを避けよう
香典辞退とは、喪主・遺族が参列者から香典を受け取らないこと。家族葬や直葬など、小規模で費用をおさえやすい葬儀が増加したことで、経済的支援を不要として香典を辞退するご遺族が増えています。
香典辞退を伝えるタイミングは、葬儀前・葬儀当日・葬儀後の3パターンあり、葬儀の形式や参列者の範囲に応じて通知します。連絡方法や伝え方も、相手にあわせて変えてください。マナーを守って正確に香典辞退を伝えることで、参列者とのトラブルを回避でき、遺族側の負担も減らせるでしょう。