葬儀を執り行うにあたっては、葬儀社に依頼するのが一般的です。しかし、万が一の際に、ご遺族が慌てることなく落ち着いて故人とお別れをするには、葬儀社への相談を早めにしておくことが良いと言われています。ご本人が亡くなってから慌てて葬儀社を探すと、時間をかけて十分な葬儀プランを立てることができず、後々、悔いが残ってしまうことにもなりかねません。反対に、葬儀相談を早めに行っておくと、もしもの時の負担が軽減できるほか、葬儀費用の面においてもメリットがありそうです。
今回は、葬儀社への相談のタイミングと葬儀費用の関係性に注目し、「いい葬儀」が独自に行った調査結果をもとに、「葬儀の相談はいつすればいいのか」「葬儀社に相談を行った日から葬儀までの日数と葬儀費用の平均額に、どのような相関関係があるのか?」について見ていきます。
早めに葬儀相談した方が葬儀費用は安い
皆、お葬式の相談はいつごろからしているの?
そもそも生前のうちから葬儀のことを取り決めておくという考え方は、縁起が良くないという見方もあって、ひと昔前までは一般的ではありませんでした。家族間であっても日常の会話の中で葬儀の話をするということはある意味、タブー視されていたようです。
しかし近年、終活に関する意識が高まる中で、ご本人やご家族がお元気なうちに、早い段階から葬儀社に相談し、詳細な葬儀プランを立てておくというケースは特別なことではなくなりました。
「いい葬儀」がお葬式を執り行った方を対象に実施した全国調査によると、全体の約28%の方が葬儀社を生前のうちに決めていたという結果となっています(鎌倉新書「第4回お葬式に関する全国調査(2020年)」より)。
さらに、事前に葬儀社を決めていた方にいつ決定したのかを尋ねたところ、「1年以上前」との回答が全体の約38%を占め、「半年前までに決めていた」との回答が約31%を占めていました。葬儀社を生前のうちから決めていた方の約7割が、ご逝去の半年以上前に決定を終えていたわけです。
葬儀相談を早めにすることでいくつかのメリットは考えられます。
ひとつは、あらかじめ葬儀のことを決めておくことで、もしもの時に慌てずに、心のゆとりを持って故人とのお別れができるということが挙げられます。
さらに、「いい葬儀」における2019年の成約データを基に、「葬儀費用の平均」と「相談日から葬儀までの日数」を見てみると、「葬儀の相談時期が早いほど、葬儀費用の平均が低い」という関係性が表れる内容となっています。
葬儀の相談日から葬儀までの日数と葬儀費用の平均
具体的な数値を挙げますと、相談日から葬儀までの日数が「30日以内」の場合は平均金額が66万3,592円、「60日以内」の場合は60万4,624円、「90日以内」の場合は55万9,706円、「91日以上」の場合は50万7,564円です。「30日以内」は「91日以上」よりも平均で15万円以上も葬儀費用がかかっています。
相談日から葬儀までの日数が長いと、なぜ葬儀費用がおさえられるのか?
では、なぜ葬儀の相談日から葬儀日までの日数が長いと、葬儀費用の平均額が安くなる傾向が生じるのでしょうか。
その理由の1つとして、時間をかけて各葬儀社の葬儀費用額を調べることができ、より安い葬儀社を選択できる機会を持ちやすいから、ということが考えられます。相談時期が早いほど、各葬儀社の見積もり額をじっくりと比較検討できます。相談日が早いことで、出費を抑制できる葬儀社を選択する時間的余裕を確保できるのです。
また、2つめの理由として、早めに葬儀社に相談することで、葬儀を執り行う側が時間をかけて葬儀について理解を深めることができるから、という点も挙げることができます。お葬式当日の流れや全体像、費用相場についてもじっくりと学ぶことができ、葬儀プランを立てる際に、より費用をおさえた内容を考えることもできるわけです。
さらに、早い段階で葬儀の相談をするという場合、本人の意向が反映されやすいということもあるでしょう。終活をされている方の中には「お葬式は質素にしてほしい」といった希望を持っている方もいらっしゃいます。ご本人が自身の葬儀を考える時、費用をおさえようとする傾向があるのかもしれません。
こうした実情を考慮すると、生前のうちから早めに葬儀の相談をしていた方が、 結果的に遺族の葬儀における経済的な負担も減らすことにつながるのではないか、と考えられます。
直前の相談は葬儀費用の平均が低くなる
ところが、相談日から葬儀までの日数が30日以内である場合をさらに細分化して1日単位でみた場合、葬儀費用との関係性において1つの大きな特徴を見て取ることができました。
相談日から葬儀までの日数が1ヵ月以内のときの葬儀費用の平均の変化
それは、葬儀社への相談日から葬儀を行う日までの日数が1日だと葬儀費用の平均額は24万261円、2日だと37万2,693円なのに対して、3日以降になると急に60万円以上へと格段に高くなるという点です。
先に述べた通り、「30日以内」「60日以内」「90日以内」「91日以上」という分類でみた場合、相談日と葬儀を行う日までの日数が近いほど、葬儀費用は高くなっていました。そのため、葬儀費用をおさえるためには、早めに葬儀社に相談し、時間をかけて葬儀プランを立案して合理的に立てた方が良いと考えられたわけです。
ところが、「30日内」という項目をさらに細分化して注目すると、葬儀の直前(相談日から葬儀までの日数が1日)に急いで葬儀社に相談した場合のみ、葬儀費用の平均額が格段に低くなっているのです。なぜ直前の相談だとこれほど安くなっているのでしょうか。
直前の相談は、7割以上が直葬・火葬式
「いい葬儀」では、葬儀日直前に葬儀社に相談を行ったケースについて、さらに詳しく調査・分析を行いました。
相談日から葬儀までの日数が1日の時の葬儀形態の割合
その結果、葬儀相談を行った翌日に葬儀を執り行われているケースでは、その7割以上が「直葬・火葬式」であることが分かっています。
直葬・火葬式とは、お通夜や葬儀・告別式を執り行わず、火葬のみを行うというお別れのことです。故人とのお別れは火葬炉の前で簡単な形で行われるのみであるため、葬儀費用は一般葬・家族葬などに比べるとはるかに安く、ご遺族の経済的負担が少なくて済みます。本来は、経済的に余裕のない方を対象にした葬儀の形態のひとつでした。その内容については賛否両論ありますが、インターネット上で葬儀を決める方が増える中、広く知られるようになりました。
つまり、「いい葬儀」を利用して葬儀を執り行った方で、直前の相談となると葬儀費用の平均額が低くなっているのは、「出費の少ない直葬・火葬式が多いから」というのがその理由でした。もともと故人・ご遺族が直葬・火葬式で行うことを決めていたので、葬儀社への相談も直前になるまで行わなかった、とも考えられます。お葬式の形態によって相談の時期が変わり、葬儀費用の平均額も変化してくるわけです。
葬儀の形態別に相談日と費用の平均を比較
では、直葬・火葬式だけでなく一般葬や家族葬、一日葬なども含め、葬儀形態別にみると、葬儀社への相談日から葬儀日までの日数と葬儀費用の平均額に、どのような関係性があるでしょうか。
「いい葬儀」での2019年成約データをみた場合、一般葬・家族葬・一日葬それぞれにおいて、相談日から葬儀日までの日数が1週間前後の時期に、葬儀費用の平均額がピークを迎えていました。
相談日から葬儀までの日数が14日以内のときの葬儀費用の平均(一般葬)
相談日から葬儀までの日数が14日以内のときの葬儀費用の平均(家族葬)
相談日から葬儀までの日数が14日以内のときの葬儀費用の平均(一日葬)
相談日から葬儀までの日数が14日以内のときの葬儀費用の平均(直葬・火葬式)
直葬・火葬式の場合も、7日前と10日前に平均費用が突出しています。
しかし、なぜ相談日が葬儀の1週間ほど前となった場合の平均費用額が高くなるのか、はっきりとした要因は分りません。
ご逝去の直前の1週間という期間は、ご遺族にとって葬儀社をじっくり検討するほどの余裕はないかもしれません。しかし、余裕がない中でも大切な人のために何ができるかと考えた時に、よりふさわしいお葬式をかたちにしたいといった希望が生まれるのかもしれません。
また、身内・親族をはじめ多くの人と連絡を取る時間は持てるでしょう。それら関係者の意向を葬儀に取り入れたり、多くの方々と連絡を取ることで、参列者の数が増える可能性も考えられます。そのためお葬式の規模もある程度の規模となってくるとも推測されます。ただ、この点に関しては確固たることは言えないのが現状です。
まとめ
誰しも葬儀のことはあまり考えたくはないでしょう。しかし、今回の調査結果から、生前、ある程度の余裕をもって「早めに相談した方が、葬儀費用を安くおさえられる」ということは言えそうです。
早期に相談を始めることで、葬儀社の選択や葬儀プランの立案を慎重に行うことができ、結果としてもしもの時に慌てることなく、葬儀時の出費もおさえることができるのではないでしょうか。