香典返しの相場金額は、いただいた香典金額の半額(半返し)が基本です。ただし、3万円以上の香典を受け取ったり、故人が世帯主や子どもだったりする場合は、3分の1~4分の1の金額を目安にして問題ありません。3,000円〜5,000円の香典を受け取ったら、1,000円~2,500円の品物を用意しましょう。
この記事では、香典返しの相場金額を状況・関係性・地域別に紹介。香典返しが不要なケースや贈るタイミング、マナーなどもあわせて解説します。
目次
香典返しの一般的な相場は「半返し」
一般的な香典返しの金額相場は、受け取った香典の半額で、「半返し」と呼ばれています。例えば、1万円の香典を受け取ったなら、半額の5,000円程度の返礼品を用意するのが通例です。
ただし、状況や関係性、地域などによっては、「半返し」が当てはまりません。ここからは、香典の半返しに当てはまらないケースの相場と対応方法について解説します。
【状況別】香典返しの相場と対応方法
香典の3分の1返しをする場合
- 稼ぎ手である世帯主が亡くなった
- 未成年の子どもや若い方が亡くなった
- 3万円以上の高額な香典を受け取った
香典返しでは、いただいた香典金額の3分の1(3分の1返し)が相場になるケースがあります。
故人が世帯主や未成年、子どもの場合は、遺族の経済的な負担を減らすために「3分の1返し」でよいとされるのが一般的です。また、高額な香典を受け取ったときも、半返しにこだわる必要はありません。
稼ぎ手である世帯主が亡くなった
稼ぎ手である世帯主が亡くなった場合は、香典の「3分の1返し」で差し支えないと考えられています。一家の大黒柱がご逝去したことによる遺族の不安や、今後の経済的な負担を軽減するのが目的です。
状況によっては、香典返しをやめることを選択肢に入れても良いでしょう。香典返しをしない場合は、贈り主に失礼にならないよう、お礼状で香典返しをしない旨や感謝の気持ちを伝えます。
未成年の子どもや若い方が亡くなった
未成年の若者や子どもが亡くなった場合も、「3分の1返し」で問題ありません。
若い方の葬儀は参列者が多くなりがちなので、経済的な負担を軽減するために相場が低く設定されています。また、子どもを亡くしたご遺族の気持ちに寄り添い、悲しみを軽くしたいという気持ちも込められています。
3万円以上の高額な香典を受け取った
香典の金額 | 香典返しの考え方 | 香典返しの相場金額 |
---|---|---|
3万円 | 3分の1返し | 1万円 |
5万円 | 4分の1返し | 1万2,500円 |
親族から3万円以上の高額な香典を受け取った場合は、半返しにこだわる必要はありません。高額な香典には「遺族の負担を軽減したい」「葬儀の足しにしてほしい」という気持ちが込められているため、半返しにするとかえって失礼になる可能性があります。
高額な香典を包んでくださった方には、香典金額の3分の1〜4分の1の返礼品を渡しましょう。一般的に3万円以上の香典が高額だと考えられているため、3万円以上は3分の1、5万円以上は4分の1で用意して差し支えありません。
香典の金額が少ない場合
3,000円〜5,000円など、金額の少ない香典を受け取ったら、香典返しでは1,000円〜2,500円の品物を用意します。香典金額が少なくても、相手が返礼品辞退の意向を示していない限りは香典返しが必要です。
受け取った香典袋に香典返し辞退の意向が記されているなら、香典返しをする必要はありません。四十九日法要明けに、香典への感謝を伝えるお礼状を送ってください。
連名の香典を受け取った場合
職場の同僚やサークル・部活の友人などから連名で受け取った香典には、1人ずつ香典返しを用意するのがよいとされています。1人当たりの金額を計算して、一般的な半返しになるよう品物を選びましょう。例えば、1人当たりの金額が3,000円なら香典返しの相場は1,000円〜2,000円。3,000円以下の場合は、小分けのお菓子を贈るのが無難です。
なお、連名の香典に返礼品を贈る場合は、返礼漏れがないように注意してください。「AさんとBさんには香典返しを贈ったのに、Cさんには贈っていなかった」ということがないよう、香典袋に記載された氏名をしっかり確認しましょう。
会社・団体で香典を受け取った場合
会社関係者から香典を受け取った場合は、会社・部署として香典を贈っているか、同僚・上司が個人的に香典を準備しているかで、対応方法が異なります。
会社・部署名義の香典をいただいたときは、香典返しとしてではなく、小分けのお茶やお菓子などを配るとよいでしょう。会社・部署として香典を用意している場合は、経費を利用しているため、香典返しは必要ないと考えられているからです。
しかし、同僚・上司が有志で個人的に香典を贈っているなら、香典返しが必要となります。香典が法人・部署・団体名なのか、個人名なのか確認した上で、適切な判断をしてください。
香典と供花を受け取った場合
香典と一緒に供花(くげ)や供物(くもつ)を受け取った場合は、「香典金額の半額」に「供花への返礼金」を足して、香典返しをしましょう。供花への返戻金は、受け取った供花の半額〜3分の1とされていますが、無理ない範囲で準備して問題ありません。
例えば、1万円の香典と15,000円の供花を受け取ったら、香典金額の半額5,000円と供花の3分の1の金額5,000円を足して、合計1万円の香典返しを用意します。
項目 | 金額 |
---|---|
香典返し:半返し | 5,000円 |
供花への返礼:3分の1 | 5,000円 |
合計金額 | 1万円 |
【関係性別】香典返しの相場

関係性 | 平均金額* | 最も多い価格帯 | 2番目に多い価格帯 |
---|---|---|---|
自分の親 | 5.5万円 | 参列したが香典は包んでいない | 10万円以上 |
自分の祖父母 | 2.8万円 | 参列したが香典は包んでいない | 5千円以上~2万円未満 |
自分の兄弟・姉妹 | 3.5万円 | 参列したが香典は包んでいない | 5千円以上~1万円未満 |
配偶者の親 | 5.4万円 | 参列したが香典は包んでいない | 5万円以上~10万円未満 |
配偶者の祖父母 | 2.7万円 | 参列したが香典は包んでいない | 5千円以上~1万円未満 |
配偶者の兄弟・姉妹 | 3.1万円 | 参列したが香典は包んでいない | 1万円以上~2万円未満 |
上司 | 1.3万円 | 5千円以上~1万円未満 | 5千円未満 |
同僚 | 1.2万円 | 5千円未満 | 5千円以上~1万円未満 |
部下 | 1.3万円 | 5千円未満 | 5千円以上~1万円未満 |
友人・知人 | 1.2万円 | 5千円以上~1万円未満 | 5千円未満 |
そもそも香典は、故人との関係性によって金額の相場が異なります。故人との関係性が深いほど香典が高額になるため、香典返しの相場金額も上がります。
関係性別の香典金額を目安に、受け取った金額の半額〜3分の1(香典の金額によっては4分の1)くらいの返礼品を用意してください。
【地域別】香典返しの相場
香典返しの相場金額は、地域によっても差があります。
東京をはじめとする東日本では、香典返しの相場は半返しが一般的。通夜後にある「通夜振る舞い」の会食代も兼ねているため、相場金額は比較的高めです。一方、西日本では通夜振る舞いの習慣がなく、東日本よりも香典返しの相場が低い傾向にあります。ちなみに、関西では香典返しのことを「満中陰志」と呼びます。
なお、群馬県や長野県の一部地域では、香典返しをする習慣がありません。冠婚葬祭費用をできるだけ抑え、生活の質の向上を目指すという「新生活運動」の名残があるからです。地域で香典の金額を決める、または香典返しを受け取らないことで喪主や遺族の負担を軽減しています。
その他、北海道では相互扶助の精神に由来して、葬儀当日に1,000円程度の食品や消耗品を香典返しとして渡す習慣があります。地域ごとの香典返しの相場や習慣の違いについて、家族や親族、地元の葬儀会社に確認しておくと安心です。
当日(即日)返しの相場と対応方法
香典返しは、四十九日の忌明け後に贈るのが通例です。一方で、香典をくれた方へ通夜・葬儀の当日に香典返しを渡す「当日(即日)返し」という方法もあります。
当日返しでは、受け取った香典の金額に関係なく、2,000円〜3,000円の返礼品を一律で渡します。高額な香典を受け取った場合は、当日返しの金額を差し引いて品物を手配し、忌明け後に贈るのがマナーです。
例えば、3万円の香典を受け取り、当日返しで3,000円の品物を渡した場合。香典金額は3万円なので、3分の1返しを基準にすると1万円が相場です。そのため、1万円から当日返し分の3,000円を引き、7,000円程度の香典返しを忌明け後に贈ります。
いただいた香典の金額 | 3万円 |
香典返しの相場(3分の1返し) | 1万円 |
当日返しの金額(3,000円分)を引く | 1万円-3,000円 |
忌明け後に贈る香典返しの相場 | 7,000円 |
香典返しが必要ないケース
香典の贈り主が香典返しを辞退していたり、遺族が香典を寄付したりする場合は、香典返しは必要ありません。それぞれの理由を詳しく解説します。
参列者が香典返しを辞退している
香典返しを辞退する主な理由
- 香典を葬儀費用の足しにしてほしいため
- 香典の額が少額、あるいは高額のため
- 香典返しを辞退することで遺族の負担を軽減するため
- 香典返しを受け取るとコンプライアンス上問題があるため
参列者が香典返しを辞退しているなら、香典返しは必要ありません。受付で香典返し辞退の意向をいただいたり、香典袋に辞退の旨が記載されていたりする場合は、贈り主の意向を尊重して、香典返しを控えましょう。
ただし、香典返しを辞退した方には、香典をいただいた感謝を伝えるために、後日改めてお礼の手紙を贈ります。
受け取った香典を全額寄付する
故人の遺言によって香典を全額寄付する場合、香典返しを取りやめても問題ありません。
しかし、香典の寄付は一般的ではないため、寄付のために香典返しを取りやめるなら、会葬礼状などで香典返しをしないことをあらかじめ伝えましょう。
香典返しを贈るタイミング

香典返しのタイミングは、通夜や葬儀の当日(当日返し)と、忌明け(四十九日の法要)後の2つです。また、神道やキリスト教は仏教と香典返しの時期が異なるので、あわせて確認しておいてください。
当日返し(通夜・葬儀当日)
当日返し(即日返し)とは、通夜・葬儀当日に香典返しを渡すこと。通夜・葬儀当日に香典返しすることで、遺族は香典帳の整理や発送などの手間を省けます。
当日返しでは、いただいた香典の金額に関係なく、2,000円〜3,000円を相場と考えます。また、香典をくれた全ての参列者に同じ香典返しを渡すのがマナーです。3万円以上の高額な香典を受け取った場合は、後日改めて金額に相応しい品物を贈りましょう。
忌明け返し(忌明け後)
忌明け返しとは、香典返しを忌明け後(四十九日の法要後)に贈ること。最近は、当日返しする方も増えていますが、従来は四十九日の法要後に返礼品を贈るのが通例でした。正式なマナーに則って香典返しを贈りたい場合は、忌明け返しを選ぶと良いでしょう。
忌明け返しでは、四十九日法要後1ヶ月以内に香典返しを贈ります。香典帳の整理や発送手続きなどの手間は増えるものの、1件当たりの香典の金額が大きい一般葬や、参列者が少ない家族葬には忌明け返しが適しています。
神道・キリスト教の香典返し
宗教 | タイミング |
---|---|
神道 | 五十日祭(故人が亡くなって50日目)の後 |
キリスト教(カトリック) | 追悼ミサ(30日目)の後 |
キリスト教(プロテスタント) | 召天記念祭(1ヶ月後)の後 |
宗教によって、香典返しのタイミングが異なるので注意が必要です。仏教での「忌明け」(四十九日)は、神道では五十日祭(故人が亡くなって50日目)、キリスト教のカトリックでは追悼ミサ(30日目)、プロテスタントでは召天記念祭(1ヶ月後)にあたります。
同じキリスト教でも、カトリックとプロテスタントで返礼品を贈るタイミングが違うので、注意しましょう。神道やキリスト教でも、仏教と同じように、忌明け後1ヶ月以内を目安に返礼品を贈ってください。
香典返しのマナー
香典返しをするときは、金額の相場だけでなく、タイミングやマナーを守って用意するのが大切です。ここでは、香典返しの表書きや使用する掛け紙、お礼状、品物選びのポイントなどを解説します。
表書きは「志」と記し、掛け紙をつける

手渡しする場合 | 外掛け:包装紙の外側に掛け紙をかける |
郵送する場合 | 内掛け:包装紙の内側に掛け紙をかける |
香典返しの返礼品には、掛け紙をつけるのがマナーです。慶事で使用するのし紙とは異なり、右上に熨斗(のし)がない掛け紙を選びましょう。また、香典返しを手渡しするか郵送するかでかけ方が異なるので、合わせて注意してください。
香典返しの表書きや掛け紙は、地域によっても異なります。迷った場合は、地域・宗派を問わずに使用できる「黒白結び切り」の掛け紙を選び、「志」と記入しましょう。
香典返しを郵送する場合はお礼状を添える
香典返しを郵送する場合は、返礼品にお礼状を添えて贈ります。香典をいただいたお礼はもちろん、法要が滞り無く終わった報告も一緒に伝えるのがマナーです。お礼状を書く際は、縦書きで句読点を用いません。句読点を打つタイミングで行を変えるなど、読みやすく工夫しながら書いてください。
また、宗派・宗教・地域によってマナーが異なるため、適切な表現を確認した上でお礼状を書きましょう。
拝啓
先般 (続柄)(俗名) 葬儀に際しましては
ご多用の中にもかかわらずお気遣いと香典を賜り
誠に有難く厚く御礼申し上げます
おかげをもちまして (戒名) ○月○日に四十九日の法要を滞り無く営むことができました
生前 故人が皆様にどれだけ支えられていたかと感謝の気持ちでいっぱいです
つきましては供養のしるしまでに心ばかりの品をお届けいたします
本来はお目にかかりお礼申し上げるべきところ
失礼ながら書中をもってご挨拶申し上げます
敬具
消えものや相手に好まれるアイテムを贈る
OK | NG |
---|---|
日持ちするお菓子 お茶 タオル 石鹸 洗剤 カタログギフト | 肉や魚 お酒 昆布・鰹節 ハンカチ 刃物・はさみ 商品券 |
香典返しの品物には、食品や消耗品などの「消えもの」を選ぶのが定番です。受け取った香典の金額をもとに、贈る相手の世代や好みに合わせて品物を選びましょう。最近は、相手の好みで自由に品物を選べるカタログギフトを贈る方も増えています。
一方で、肉や魚、お酒などは香典返しではタブーとされている品物です。肉や魚は「四つ足生臭もの」と呼ばれ、香典返しにはふさわしくないとされています。神事で使用される酒や慶事で用いられる昆布・鰹節、金額のわかる商品券なども避けた方が無難です。
後日送られてきた香典にも香典返しをする
葬儀が終わった後に香典を受け取った場合も、香典返しは必要です。
返礼のタイミングによっては、忌明け返しに送ったお礼状を使用できない場合もあるので、注意してください。なお、香典返しが年末年始に届かないように手配することも大切です。
香典返しを辞退された方にはお礼状を送る
香典返しを辞退した方には、香典返しの代わりにお礼状を送って感謝を伝えます。また、受け取った香典の金額が高額だった場合は、お礼状とは別に、お中元やお歳暮で贈り物をすると良いです。
香典返しの相場とマナーを守って用意しよう
一般的な香典返しの相場は、受け取った香典の半額(半返し)です。ただし、一家の大黒柱や子どもが亡くなったり、高額な香典をいただいたりしたなら、半返しにこだわる必要はありません。香典の3分の1〜4分の1の金額を目安にして、香典返しの品物を選びましょう。
また香典返しは、相手との関係性や地域によっても金額の相場が変わります。香典返しの相場やマナーを理解したうえで、相手に喜ばれるような品物を選んでください。