鎌倉新書では2013年から隔年で、全国でお葬式の喪主(または喪主に近い立場)を経験した40歳以上の男女を対象に「お葬式に関する全国調査」を行っています。2024年には「第6回お葬式に関する全国調査」を実施し、5月に情報を公開しました。
この記事では、第1回(2013年)から第6回(2024年)までの調査結果をもとに、葬儀費用の推移・変化について紹介します。
目次
葬儀費用の推移・変化

全国平均 | 基本料金 | 飲食費 | 返礼品費 | 合計 |
---|---|---|---|---|
2013年 (n=1,848) | 130.4万円 | 33.7万円 | 38.8万円 | 202.9万円 |
2015年 (n=1,851) | 119.0万円 | 30.5万円 | 34.5万円 | 184.0万円 |
2017年 (n=1,999) | 117.1万円 | 29.3万円 | 31.9万円 | 178.3万円 |
2020年 (n=1,979) | 119.2万円 | 31.4万円 | 33.8万円 | 184.3万円 |
2022年 (n=1,955) | 67.8万円 | 20.1万円 | 22.8万円 | 110.7万円 |
2024年 (n=2,000) | 75.7万円 | 20.7万円 | 22.0万円 | 118.5万円 |
- 基本料金:斎場利用料・火葬料・祭壇・棺・遺影・搬送費など、葬儀を行うための一式
- 飲食費:通夜振る舞い・精進落としなどの飲食*
- 返礼品費:香典に対するお礼の品物*
- 葬儀費用の総額:基本料金・飲食費・返礼品費の合計金額(お布施は含まない)
*飲食費・返礼品費はひとり当たりにかかる費用のため、参列人数に比例して変動します
葬儀費用は、2013年の202.9万円をピークに徐々に金額が下がっています。
2015年から2020年までは、基本料金・飲食費・返礼品費はもちろん、葬儀にかかった費用の総額も180万円前後でほぼ変動がありませんでした。
ですが2022年の調査で、ピーク時の約半分の金額となる110.7万円まで下降。2020年に流行した新型コロナウィルスの影響で葬儀の小規模化が進み、葬儀費用の平均も下がったと考えられます。
2023年、新型コロナウィルスが第5類に移行した期間と重なる2024年の調査では、葬儀費用は118.5万円まで回復し、アフターコロナを感じさせる結果となりました。
お葬式の種類と割合の変化からみる葬儀費用

一般葬 | 家族葬 | 一日葬 | 直葬・火葬式 | その他 | |
---|---|---|---|---|---|
2015年 (n=1,851) | 58.9% | 31.3% | 3.9% | 5.9% | 0.0% |
2017年 (n=1,999) | 52.8% | 37.9% | 4.4% | 4.9% | 0.0% |
2020年 (n=1,979) | 48.9% | 40.9% | 5.2% | 4.9% | 0.1% |
2022年 (n=1,955) | 25.9% | 55.7% | 6.9% | 11.4% | 0.2% |
2024年 (n=2,000) | 30.1% | 50.0% | 10.2% | 9.6% | 0.1% |
- 一般葬:通夜・葬儀があり、参列者を広く招くお別れ
- 家族葬:通夜・葬儀があり、参列者を近親者に限定するお別れ
- 一日葬:通夜がなく、葬儀・火葬を1日で行うお別れ
- 直葬・火葬式:通夜・葬儀がなく、火葬のみのお別れ
葬儀費用の変化の要因として考えられるのが、親族や故人と親しかった人たちが中心となって送る、家族葬の増加です。
2015年から2017年まで、葬儀の主流は一般葬で、半数以上の方が選択していました。2015年の家族葬の割合は31.3%でしたが、2017年には37.9%と、調査を重ねるごとに着実に増加。2020年には、家族葬の割合が40.9%と、鎌倉新書でお葬式に関する全国調査を開始してからはじめて4割を超えました。
そして、新型コロナウィルスの影響で、2022年には家族葬が5割以上を占める結果に。アフターコロナとなる2024年も、家族葬は50.0%と一般葬より多くの方に選ばれています。また、家族葬以外の一日葬、直葬・火葬式も新型コロナウィルス以降、選ぶ方が増えています。
葬儀種類の割合と平均費用(2024年)

葬儀種類 | 葬儀費用の総額 | 最も多い価格帯 |
---|---|---|
直葬・火葬式 | 42.8万円 | 20万円以上~40万円未満 |
一日葬 | 87.5万円 | 20万円以上~40万円未満 |
家族葬 | 105.7万円 | 60万円以上~80万円未満 |
一般葬 | 161.3万円 | 120万円以上~140万円未満 |
2024年の調査結果をもとに、葬儀種類別の葬儀費用の平均金額をまとめてみました。
葬儀種類別の葬儀費用を比べると、一般葬は161.3万円に対して家族葬は105.7万円と、50万円以上の金額差があります。その他、一日葬は一般葬の約半分、直葬・火葬式は約3分の1の金額です。
参列人数が多く、広い会場が必要で飲食費・返礼品費がかさみやすい一般葬が減り、その他の葬儀種類の割合が増えたことで、葬儀費用の平均が下がったと考えられます。
参列者数の変化からみる葬儀費用

参列者の平均人数 | |
---|---|
2013年 (n=1,848) | 78人 |
2015年 (n=1,851) | 67人 |
2017年 (n=1,999) | 64人 |
2020年 (n=1,979) | 55人 |
2022年 (n=1,955) | 38人 |
2024年 (n=2,000) | 38人 |
家族葬は近親者のみで故人を見送るお葬式ですが、定義はあいまいです。参列者の人数は、故人の生前の付き合いの範囲や地域性によって変化します。 そこで、今度は葬儀の種類ではなく、参列者の人数そのものの変化を見てみましょう。
2013年から2024年までの参列者の平均人数をみると、調査を行うごとに減少しているのがわかります。2013年には78人でしたが、ゆるやかに減少を続けて2020年には55人に。2022年には新型コロナウィルスの影響では拍車がかかり、38人まで減少する結果になりました。
葬儀費用の変化には、参列者数の変化、すなわち葬儀規模の縮小化の影響がありそうです。参列者が減少し葬儀の規模が縮小すると、人数が減るぶん、通夜振る舞いやお清めなどの飲食費、香典返しなど返礼品の費用など、人数によって変化する変動費が下がります。また、葬儀式場を小さくすることで、式場使用料をおさえられるでしょう。
2013年~2015年:インターネットによる葬儀紹介業が躍進
2013年から2015年の数字(調査の対象者は「過去2年半以内に葬儀をしている方」なので、2013年調査の結果は2011年~2013年、2015年調査の結果は2013年~2015年の葬儀を反映)をみると、2013年前後を境に葬儀費用を大きく下げる何かがあったと考えられます。
その要因のひとつとして、 インターネットでの葬儀紹介業が躍進したことがあげられます。
以前は葬儀社を探すとき、親族や地域の人、または病院からの紹介か電話帳などが利用されていました。その後、2000年ころから「いい葬儀」をはじめ、インターネットで葬儀社を探すサービスが登場。さらに2009年ころになると、インターネット上で全国一律・格安価格のお葬式を提供するサービスも登場しました。
インターネットの葬儀紹介業における価格設定は、従来の葬儀価格と比べて格段に安く、さらにそれまで葬儀業界では特殊だった直葬・火葬式を格安の葬儀として訴求していきました。
これらのサービスで中心となっていた2つの企業が2014年に大きな変化を遂げています。IT企業から始まった1社は、大手冠婚葬祭互助会が買収。また、大手流通会社が始めた葬儀紹介サービスは分社化し、独立した企業となりました。
2009年ころからインターネットを中心にはじまった、葬儀料金の低価格化、全国統一化が徐々に進み、5年後の2014年にはある程度浸透したといえそうです。
どうして直葬・火葬式は約20万円になったのか?
現在は、直葬・火葬式で20万円を下回る葬儀プランもありますが、当時は約20万円が最低価格でした。
この価格設定は、おそらく生活保護法に基づいた葬祭扶助の金額を参考に設定したのではないかと考えられます。葬祭扶助の上限は地域によって異なりますが、 検案・死体の運搬・火葬または埋葬・納骨その他葬祭に必要なものと、必要最低限の葬儀を行うための費用で、およそ20万円前後です。
さらに全国の葬儀社も、インターネットでの葬儀紹介業者が広まるにつれ、次第にインターネットでの葬儀価格にあわせた自社プランを用意するようになりました。その背景には、個々の葬儀社も提携している葬儀紹介サイトのプランと自社のプランが二重価格になることを避けるため、という理由もあると思われます。
2020年~2023年:新型コロナウィルスの影響で小規模葬が増加
2020年3月以降に喪主(または喪主に準ずる立場)を経験した方に向けて調査を実施した「第5回お葬式に関する全国調査」では、コロナ禍の葬儀の実態が色濃く反映されました。
家族葬と一日葬、直葬・火葬式などの小規模葬の割合が過去最多となり、大勢の参列者を招く一般葬は過去最少となっています。小規模な葬儀が増えたことにより、葬儀費用も110.7万円となり、2020年と比較して73.6万円の下落となりました。
また、「コロナ禍ではなかったとしたら行いたかった葬儀」と「実際に行った葬儀」を」比較すると、本来は44.0%が一般葬を希望していたにも関わらず、実際に行ったのは25.9%。新型コロナウィルスの感染を予防するために、大勢が集まり式や会食を行う一般葬を取りやめ、家族葬に切り替えたご遺族が多くいらっしゃいました。
2024年:アフターコロナにより一般葬の割合がやや増加
新型コロナウィルスが第5類へ移行した2023年から2024年の調査では、家族葬が50.0%で、前回の調査に引き続き最多となりました。
次いで一般葬30.1%、一日葬10.2%、直葬・火葬式9.6%となっていますが、家族葬は-5.7%、一般葬は+4.2%となり、アフターコロナを感じさせる結果に。新型コロナウィルスの流行が落ち着いたことから、一般葬を選択する方の割合が戻りつつあるとわかります。
一般葬の増加に伴い、葬儀費用の総額も118.5万円と前回から約8万円増加しています。
まとめ
現在では、個々の葬儀社がインターネット上の全国統一価格とほぼ同じ定額プランを用意していて、インターネット業者が決めた葬儀の価格が、葬儀業界のスタンダードとなりつつあります。かつては不明瞭と言われていた葬儀費用を明確に提示することで、葬儀業界を動かしたともいえるでしょう。
一方で、追加料金に関する問題が話題となったり、地域によってもさまざまな違いのある葬送の文化を均一化してしまうことに対する懸念があることも否めません。
そして新型コロナウィルスにより、葬儀を行いたくても行えない状態が続き、小規模な葬儀や後日開くお別れ会に注目が集まるなど、お葬式の在り方や意味が改めて考えなおされました。 第5類移行後も家族葬の人気は高く、新型コロナウィルスがきっかけとなってお葬式に新たな変化が訪れています。
社会的な変化が葬儀にどうのような影響を与えるのか、「お葬式に関する全国調査」を通して、これからも注目していきます。
調査概要
第1回~第5回お葬式に関する全国調査(2013年~2022年)
調査名:「第1回お葬式に関する全国調査」(2013年)
調査対象:直近2年半以内に葬儀を行った(携わった)経験のある、日本全国の40歳以上の男女
調査期間:2013年11月11日~11月14日
調査方法:インターネット調査 (調査協力:株式会社ネオマーケティング )
有効回答数:1,847件
調査名:「第2回お葬式に関する全国調査」(2015年)
調査対象:直近2年半以内に葬儀を行った(携わった)経験のある、日本全国の40歳以上の男女
調査期間:2015年12月2日~12月14日
調査方法:インターネット調査 (調査協力:株式会社ネオマーケティング )
有効回答数:1,851件
調査名:「第3回お葬式に関する全国調査」(2017年)
調査対象:直近2年半以内に葬儀を行った(携わった)経験のある、日本全国の40歳以上の男女
調査期間:2017年10月24日〜2017年10月26日
調査方法:インターネット調査 (調査協力:株式会社ネオマーケティング )
有効回答数:1,999 件
調査名:「第4回お葬式に関する全国調査」(2020年)
調査対象:直近2年半以内に葬儀を行った(携わった)経験のある、日本全国の40歳以上の男女
調査期間:2020年2月26日~2020年2月28日
調査方法:インターネット調査 (調査協力:株式会社クロス・マーケティング)
有効回答数:2,000件
調査名:「第5回お葬式に関する全国調査」(2022年)
調査対象:2020年3月~2022年3月に喪主(または喪主に準ずる立場)を経験したことのある、日本全国の40歳以上の男女
調査期間:2022年3月11日~3月13日
調査方法:インターネット調査(調査協力:株式会社クロス・マーケティング)
有効回答数:1,955件
第6回お葬式に関する全国調査(2024年)

調査名 | 第6回お葬式に関する全国調査(2024年) |
調査対象 | 2022年3月~2024年3月に喪主(または喪主に準ずる立場)を経験したことのある、日本全国の40歳以上の男女 |
調査期間 | 2024年3月1日(金)~3月4日(月) |
調査方法 | インターネット調査(調査協力:株式会社クロス・マーケティング) |
有効回答数 | 2,000件 |
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