ご近所トラブルの意外な原因〜お隣のご主人〜


【連載】リアル・シニアライフ
この連載では、シニアライフにまつわる、人間関係、経済問題について、実際の生活者にヒアリングした結果を、個人の事情がわからないよう脚色し、ルポ形式でお伝えします。

夫婦ふたりの平凡な暮らし

ご近所さんとは特に親しくしているわけではありませんが、どなたとも顔を合わせれば会釈くらいはするといったよくあるおつきあいだと思います。

このあたりに住んで20年。ファミリー向けに開発された団地ですので似たような世代の家族が多く、子供は独立し今はご夫婦だけで、といったご夫婦が多いように思います。

我が家も子供が巣立ち、今は後2年ほどで定年を迎える主人とふたりで暮らしています。

それほど大きくない家にちょっとしたお庭。子供が巣立ってちょうど良くなったくらいのつつましい我が家です。

トラブルは突然に

お隣のご主人が定年退職されたようです。

以前は、朝、主人を送り出す時にお隣のご主人も仕事へ行かれる姿をお見かけしていましたが、最近は昼間に自宅におられる姿を毎日お見かけします。

うちも後2年で定年か、と楽しみなような、お隣のご主人のように毎日家にいるのかしらと思うと少し窮屈な気分にもなってしまいます(笑)

そして、ある日チャイムがなって出て見ると、お隣のご主人でした。

インターホン越しでもあからさまに怒っているようだったので、おそるおそる出てみると、、、「お宅のベランダにつけてあるあのCD、反射が迷惑なのですぐにはずしてください。少しは周りの事を考えて暮らしてくださいよ。」と勢いよくまくしたてられました。

私は突然のことに驚き、そして怖くなりすぐにベランダのCDを片付けたのです。

このあたりは鳩の糞害がひどく、もう何年も前から鳩よけにつけてあるものでした。

うちだけがつけているんじゃないですよ、ご近所に何件もつけてみえるお宅はあります。

お隣のご主人の勢いに圧倒されてきちんと謝れませんでしたが、ずっとご迷惑をおかけしていたのかしら、と申し訳ない気持ちにもなりました。

響く怒鳴り声

お隣との一件も忘れかけた頃、いつものように主人を送り出すと近くのゴミ置き場から怒鳴り声が聞こえて来ました。

声の主はお隣のご主人。

言い合っているのはご近所の奥様です。

なんでもお隣のご主人が出されたゴミを開けてチェックしていたとか、していないとか。

うちのゴミもきっと見られていたんだわ、と恐ろしい気持ちになりました。

ここに住んで20年。お隣さんが越して来たのも同じ頃です。

こんなことこれまでありませんでした。一体何がどうなってしまったんでしょうか。

張り紙

ある日、いつものようにカーテンを開けると目を疑いました。

お隣さんのお宅の窓に、我が家に向けて「うるさい!」「窓を閉めろ!」「常識知らず!」と書かれた紙が貼ってあったのです。

もうこれは普通じゃないと思いました。

エアコンもいらなくなってきたこの時期、確かに窓を開けてテレビを付けていますが特に大きな音というわけではなく常識の範囲内だと思います。

主人にも相談し、区役所へ相談することにしました。

何もしてくれない役所

役所の窓口で相談してみましたが、たらいまわしにされたあげく、直接的な被害があったわけではないので今すぐなにかできるわけではない、何か被害があったのであれば証拠を残すようにとアドバイスされただけで解決にはいたりませんでした。

むしろ私が気にしすぎのような言い方をされたことが腹立たしいです。

もうこれ以上何もありませんように、と思う一方、次に何かあった時には確実に何か証拠を残さなくっちゃ!とスマホのボイスレコーダーの使い方を予習しておきました。

お隣の奥さん

スーパーで久しぶりにお隣の奥さんをみかけました。

気まずい気持ちでいっぱいになり、足早に立ち去ろうとした時、泣きそうな顔でお隣の奥さんが駆け寄って来たのです。

「主人が迷惑かけて本当にごめんなさい。」

ゆっくり話を聞いてみると、定年退職して毎日家にいるようになってからというもの、もともと穏やかな性格ではなかったものの、急に身の回りの様々な事が気になり怒りっぽく攻撃的になってしまったとのこと。

ご近所でトラブルを起こしているのは気づいていたけど、なんせご主人が家にいるので謝罪にも行けず申し訳ない気持ちで過ごしていたとのことです。

そんな経緯を聞いて、奥さんのことがとても心配になってしまいました。

今のところ、怒りの矛先は奥さんに向くようなことはないとのことですが、イライラしているご主人との生活やご近所とのトラブルでかなりこたえている様子でした。

関わらない方がいいとは思いましたが、ほってもおけず、何か困ったら連絡してくださいね、とメールを交換して別れました。

実は「病気」が原因でした

それからしばらく、そういえば、最近お隣のご主人みかけないわね、と思っていたところに、お隣の奥さんから1件のメールが。

「ご迷惑おかけしてごめんなさい、主人、認知症でした。」隣人の目から見れば、「神経質な方だな、困ったな」という程度の印象でしたが、一緒に住まれてるご家族にとっては、違和感を感じることも多かったのでしょう。検査を受けに行ってみて、はっきりと認知症と診断されたそうです。

身体も健康そうでしたし、ご自分の意志ではっきり物事をおっしゃっているように見えたので、認知症とは思いもよりませんでした。

怒りっぽく攻撃的になっていたのもそのせいだったのですね。

「この病気とは長い付き合いになりそうです。良くなることはないとは思いますが、せめて悪くならないように付き合っていきます。近頃は薬でだいぶ気分が落ち着いているようです。」

お隣のご夫婦のことは本当に気の毒に思います。そして、私たちもそんな年齢になったんだなと少し怖くなってしまいました。

主人の定年まであと2年。お互いずっと健康でいられるとは限りません。むしろそうでない可能性の方が高いと思います。引退後の生活について我が家も主人とよく話し合ってみることにします。

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