施餓鬼とは?施餓鬼法要の意味とお布施の目安、マナーを解説

小林憲行【記事監修】
小林憲行

記事監修小林憲行

施餓鬼とは?施餓鬼法要の意味とお布施の目安、マナーを解説
記事を先読み
  • 施餓鬼とは、飢えと渇きに苦しむ霊魂に施しを与えて供養する仏教行事
  • 施餓鬼の時期に決まりはないが、ご先祖様を供養するお盆にあわせることが多い
  • 施餓鬼のお布施相場は3千円~1万円で、別に塔婆料や御車代が必要な場合もある

施餓鬼(せがき)とは、飢えと渇きに苦しむ霊魂を供養するための仏教行事。時期に決まりはないですが、先祖と一緒に餓鬼も供養することで徳が積めると考えられ、お盆に行われるのが一般的です。

この記事では、施餓鬼の意味や宗派別の違い、お布施の相場、マナーなどをまとめて紹介します。

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施餓鬼とは?意味や由来、行う時期

施餓鬼は「救抜焔口餓鬼陀羅尼経 (くばつえんくがきだらにきょう)」というお経に由来していると言われています。

施餓鬼とは、生前の悪行により餓鬼となった霊魂や、供養する人がいない無縁仏に食べ物・飲み物を施して供養する仏教の儀式です。正式な名称は「施餓鬼会(せがきえ)」で、「お施餓鬼」と呼ばれることも。また、 施しを与える者・受ける者の間に貴賤の区別があってはならないという考えから、「施食会(せじきえ)」とも呼ばれています。

施餓鬼供養の目的は、餓鬼道という苦しみの世界にいる霊魂を救済することです。

仏教には六道と呼ばれる世界があり、その中の一つに餓鬼道があります。生前の悪行により餓鬼道へ落ちると、餓鬼という鬼になって常に飢えと渇きに苦しむ存在となります。餓鬼は現世に悪影響をもたらすと考えられており、施餓鬼を行って霊魂を救うことで、供養する私たちにも大きな功徳があるとされているのです。

施餓鬼を行う時期

施餓鬼は、お盆の時期にご先祖様の供養と一緒に行われるのが一般的。盂蘭盆会とあわせて施餓鬼会を開催するお寺が多いようです。ご先祖様だけでなく「あらゆるすべての霊魂」を供養することで徳を積み、巡り巡って自分自身の救いにも繋がると考えられています。

ただ実際には、施餓鬼を執り行う時期に決まりはなく、いつ行っても問題ありません。年に複数回施餓鬼を行うお寺もあり、集まった檀家同士の交流の場を設けたり、食事を楽しんだり、他のお寺からゲストを呼んで法話したりといったイベントが催されることもあります。

施餓鬼の由来

施餓鬼の由来は、 『 救抜焔口餓鬼陀羅尼経 (くばつえんくがきだらにきょう) 』 というお経にあると言われています。

あるとき、お釈迦様の弟子の一人である阿難(あなん)が、焔口(えんく)という名前の餓鬼に死を予告されました。阿難は、お釈迦様の教えに従って、陀羅尼(だらに)を唱えながら餓鬼に食事を施します。すると、焔口をはじめとする多くの餓鬼が救われ、その功徳によって阿難も寿命を延ばすことができました。

施餓鬼供養は、こうした説話に基づいて行われるようになったようです。

お盆に施餓鬼をするのはなぜ?初盆との違いは?

初盆施餓鬼
時期没後、初めてのお盆決まりはない
対象特定の故人の霊魂餓鬼や無縁仏などの霊魂
目的故人の冥福を祈り、供養すること飢えに苦しむ餓鬼や無縁仏など、あらゆる霊魂を供養すること

お盆は、毎年夏にご先祖様の霊を自宅にお迎えして供養する仏教行事です。ご先祖様の供養に焦点を当てるお盆に対して、施餓鬼は苦しんでいるすべての霊魂が対象になります。お盆に施餓鬼をすれば、ご先祖様だけでなくより多くの霊魂を供養できるため、あわせて行うことが多いようです。

また、施餓鬼と混同しやすい仏教行事に初盆があります。初盆は「故人が亡くなってから初めて迎えるお盆」で、施餓鬼は「特定の時期に限らず、飢えに苦しむ餓鬼や無縁仏を供養する行事」です。

初盆は、故人にとって初めてのお盆なので、通常のお盆よりも手厚く供養が行われます。故人と縁のあった人々が集まり、故人の冥福を祈る特別な法要を営むのが一般的です。一方で施餓鬼は、お盆に行われることが多いものの、必要に応じていつでも実施できます。

宗派によって施餓鬼に違いはある?

浄土真宗の施餓鬼

仏教の宗派によって考え方が異なり、浄土真宗では施餓鬼が行われません

なぜなら浄土真宗の教えでは、故人は亡くなるとすぐに阿弥陀如来の力によって極楽浄土へ導かれるとされているからです。そもそも霊魂が餓鬼になって苦しむという概念がなく、施餓鬼供養は必要ないと考えられています。

曹洞宗の施餓鬼

曹洞宗の施餓鬼は、飢えに苦しむ霊魂へ食べ物を施すという点では同じですが、呼び名が違います。曹洞宗では「施餓鬼」ではなく、「施食会(せじきえ)」と呼ばれるのが一般的です。

施食会を用いるのは、施す者と施される者に上下関係や身分の違いがあってはならないという、曹洞宗の平等思想に基づいています。餓鬼と呼ぶことで差別が生じ、すべての存在は平等であるという教えに反するため、「施食会」と呼ばれるようです。

真言宗の施餓鬼

真言宗の施餓鬼は、護摩(ごま)を焚いて祈祷するのが特徴で、夕方から供養を行うことが多いです。また、餓鬼への施しは毎日でもよいという教えに基づき、他の宗派に比べて頻繁に執り行われる傾向があります。

日蓮宗の施餓鬼

日蓮宗の施餓鬼では、開祖である日蓮聖人の伝承に基づいた「川施餓鬼(かわせがき)」が有名です。

川施餓鬼とは水辺で行われる施餓鬼で、日蓮聖人が亡霊となった鵜飼の老人を三日三晩にわたる供養で成仏させたという故事に由来しています。この伝承をもとに、現在も各地で川施餓鬼が執り行われています。

浄土宗の施餓鬼

浄土宗で施餓鬼は重要視されており、多くのお寺で大規模に行われています。

浄土宗には、阿弥陀如来の慈悲の力によって、餓鬼を含むあらゆる霊魂が救われるという教えがあります。そのため施餓鬼を通して、ご先祖様だけでなく、すべての衆生の供養を行うことが大切な善行とされています。とくにお盆の時期には、施餓鬼法要が盛大に執り行われるのが一般的です。

施餓鬼法要では何をする?流れと参列のマナー

施餓鬼法要の流れ

施餓鬼法要は、お寺で実施される場合と自宅で行う場合があります。地域やお寺によって違いますが、ここでは一般的な流れを解説します。

お寺の施餓鬼法要の流れ

  1. 受付:お寺に到着後、受付でお供え物やお布施をお渡しします
  2. 会食:会食がふるまわれたり、お弁当が配られたりします
  3. 法話:僧侶の法話(説法)を聴聞します
  4. 読経・焼香:僧侶による読経が行われ、参列者は順にお焼香します
  5. 卒塔婆受け取り・お墓参り:卒塔婆を受け取り、お墓参りをする場合もあります

自宅の施餓鬼法要の流れ

  1. 僧侶のお迎え:僧侶に挨拶し、お布施をおお渡しします
  2. 法話・読経:僧侶による法話のあと、読経が行われます
  3. お焼香:参列者が順番にお焼香します
  4. お墓参り:参列者全員でお墓参りをします
  5. 会食:僧侶や参列者と会食をします

施餓鬼法要の服装と持ち物

施餓鬼法要の服装は、基本的に略喪服(平服)で問題ありません黒・グレー・紺といった落ち着いた色合いを選び、男性はスーツとシャツ、女性はワンピースやセットアップなどを着るのが適切です。

白・黒・グレー・ブラウンなどといった色合いのシンプルな普段着でよいお寺もあるため、事前に確認しておくと安心でしょう。なお、派手な洋服やアクセサリー、マニキュアなどは控えてください。

施餓鬼法要の持ち物としては、数珠とお布施を必ず持参します。お寺によっては、御塔婆料や施餓鬼米といったお供え物が必要になるので用意しておきましょう。

施餓鬼法要に行かない場合

施餓鬼法要の参加は任意であり、出席しなくても問題ありません。都合がつかず参加できなくても、失礼にはあたらないので安心してください。施餓鬼に急遽参加できなくなったり、出欠の返事が必要だったりする場合は、早めに寺院へ連絡するようにしましょう。

施餓鬼を欠席するなら、基本的にお布施は不要です。ただ、御塔婆料や会費が必要なケースもあるので、寺院の案内をよく確認するようにしてください。不明点があれば、寺院や檀家総代、世話人に問い合わせてみましょう。

施餓鬼のお布施のマナーは?相場や書き方、包み方

施餓鬼のお布施袋には「御布施」と書きます。寺院によっては施餓鬼料、施餓鬼供養料などと書くこともあります。

施餓鬼のお布施の相場

  • 施餓鬼法要のお布施:3千円~1万円
  • 初盆法要のお布施:3万円~5万円
  • 塔婆料:3千円~1万円
  • 御車代:5千円~1万円

施餓鬼法要で包むお布施の相場金額は、3千円~1万円。あわせて初盆法要をする場合は、別途3万円~5万円のお布施をお渡しします。

また、卒塔婆をお願いする場合は塔婆料が必要で、相場金額は3千円~1万円。自宅にお坊さんを招く場合は、御車代として5千円~1万円ほど包むのがマナーです。

お布施の目安はお寺や地域によって違うので、不安な場合は菩提寺に確認しましょう。

施餓鬼のお布施を入れる封筒の選び方と包み方

施餓鬼のお布施は、奉書紙(ほうしょし)と呼ばれる和紙か、白地の封筒に入れてお渡しします。奉書紙を使って包む方法が一番丁寧ですが、封筒でも構いません。ただし、不祝儀袋(香典袋)は通夜・葬儀など不幸があったときにだけ使うものなので避けてください。同様の理由から、お札は古札ではなく新札を包みます

奉書紙を使う場合は、中包みとして半紙でお札を包んでから奉書紙で包むのがマナーです。奉書紙には裏表があり、ツルツルした面が表、ザラザラした面が裏になります。包むときは上包みで折りましょう。

封筒の場合は、郵便欄のない白色で無地の封筒を選びます。お札を入れるときは肖像画を表書きの方に向け、封筒の口の近くに来るように入れましょう。

施餓鬼のお布施の表書き・裏書きの書き方

施餓鬼で渡すお布施の表書きは、白地の封筒の上部に「御布施」と書くのが通例です。お寺によっては「施餓鬼料」「施餓鬼供養料」と書くこともあるので、確認しておきましょう。「御布施」と書いた下のスペースには、自分のフルネームまたは「◯◯家」と書きます。

中袋がある場合は、表面中央に金額、裏面左下に住所と名前を記載。ない場合は、外袋の裏面右側に金額、裏面左下に住所と名前を記載します。金額は頭に金、末尾に也をつけ、旧字体の漢数字を使って書きましょう。たとえば3千円なら「金参仟圓也」、1万円なら「金壱萬圓也」と書きます。

なお、表書き・裏書きを書くときは毛筆や筆ペンなどを使用します。通夜・葬儀で用いる香典袋は薄墨ですが、お布施は僧侶への感謝の印なので濃墨を使います。薄墨には悲しみの涙で墨が薄くなったという意味合いがあり、施餓鬼は身内に不幸があったわけではないので使用する必要はありません。使う筆は筆ペンや筆タッチのサインペンなどを使っても問題ありませんが、薄墨用と濃墨用があるので注意しましょう。

マナーを守って施餓鬼法要に参加しよう

先祖供養と餓鬼供養をあわせて行うことで徳を積めるとして、お盆の時期には施餓鬼法要がよく行われます。ただ、お寺の施餓鬼会に着ていく服装やマナー、お布施の相場などには、葬儀ほど明確な決まりがありません。地域やお寺によっても違うので、気になる場合は菩提寺に確認するのがおすすめです。

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