2016年4月30日に急逝した、プロデューサーで東京バレエ団、公益財団法人日本舞台芸術振興会(NBS)の創設者、佐々木忠次さんを偲んで、10月13日、新国立劇場で「佐々木忠次追悼記念公演」が開催されました。
演目はモーリス・ベジャール振付による「ザ・カブキ」。
「ザ・カブキ」の振り付けを、20世紀を代表する振付家、モーリス・ベジャールに付けてもらったことは、NBS/東京バレエ団代表であった佐々木忠次の最大の功績のひとつともいわれているほど。そんな故人の業績を物語る作品です。
今回はこの追悼公演の模様をお伝えします。
東京バレエ団として初の新国立劇場での公演
「ザ・カブキ」の公演に先立ち、メモリアル・ガラと銘打って、佐々木さんを偲び「ザ・カブキ」の制作に深くかかわった花柳壽應さん、初代由良之助の夏山周久さん、おかるを演じた藤堂眞子さんがトークショーを開き、初演当時のエピソードを語りました。
トークショーの前には生前の故佐々木忠次氏の映像が映し出され、その残した功績を改めて振り返りました。
これまでに海外公演だけでも30カ国、153都市において747公演を達成し、東京バレエ団、いや日本のバレエ界を世界レベルに押し上げた功労者のひとりと言えるでしょう。
客席には多くの関係者の皆様もみえていて、懐かしそうにその映像や、トークショーでの思い出話に聞き入っていたのが印象的です。
佐々木さんが多くの方々に愛されていたのがわります。
トークショーのあとは本編の「ザ・カブキ」
由良之助をプリンシパルの柄本弾さん、顔世御前をプリンシパルの上野水香さん、定九郎には初演でも演じた東京バレエ団の団長である飯田宗孝氏が演じるこの日だけの特別キャスト。
1986年初演の「ザ・カブキ」の由良之助役を受け継ぎ、今や貫禄さえ感じさせるようになった柄本さんの演技や、ひと際美しい上野さんの踊りにはこの30年の重みを感じました。
飯田氏の味のある定九郎には旧来のファンも大満足の舞台となり、特に討ち入りから切腹へと続くクライマックスシーンでは観ているこちらも舞台に引き込まれるような錯覚に陥るほどの迫力でした。
カーテンコールでは主演の柄本さんだけでなく飯田氏や高師直役の木村和夫氏にも割れんばかりの拍手がいつまでも鳴りやまず、東京バレエ団は多くのファンに愛されているのだと感じました。
学生のための【ササキ・シート】
ファンを大切にし、これからバレエダンサーを目指す若者たちにも観劇の機会を設けたいという故人の遺志をついで、今回、学生向けには特別に【ササキ・シート】も用意されました。この日だけ、なんと税込み500円!!
未来を背負って立つ学生たちも大きな刺激を受けていたようでした。
故佐々木さんの思いは確実に受け継がれていると感じる公演でした。
故佐々木忠次氏のご冥福と東京バレエ団の今後益々のご発展をお祈り申し上げます。
(取材・文 梨木 清孝)