通夜・葬儀へ参列することを「会葬」と呼びます。会葬礼状は、通夜・葬儀当日に参列者へ渡す感謝の手紙。忌引きの証明になるため、遺族以外が参列するなら作成してお渡しするのが基本です。また、会葬礼状の書き方には決まったルールがあるので、自作する場合は確認しておきましょう。
この記事では、会葬礼状を作成する方法や書き方のマナー、例文などを紹介します。
目次
会葬礼状とは?通夜・葬儀で参列者に渡す礼状
会葬礼状とは、通夜・葬儀当日に参列者に渡す礼状で、ハガキや封書などといった文書で準備するのが基本です。なお、近年はDVDをはじめとする映像形式の会葬御礼もあり、時代とともに形式が変化しています。
会葬礼状の目的は、参列や弔電に対する感謝の気持ちを伝えること。そのため、香典を受け取ったかどうかにかかわらず、全ての参列者に渡します。後日弔問に来る方にも渡すので、会葬礼状は多めに用意しておくと安心です。
会葬礼状は必要?遺族以外が参列するなら準備
会葬礼状が必要になる場面
- 職場や学校への忌引き申請
- 地方自治体や健康保険の給付金制度などへの申請
通夜・葬儀で渡す会葬礼状は、必ず用意すべきものではありません。家族葬や直葬など、参列者を限定する小規模な葬儀だと、会葬礼状を用意しないご家庭も多いです。
ただ、会葬礼状には故人や喪主の名前、通夜・葬儀の日付が記載されているため、葬儀に参列したことの証明になります。忌引き申請や給付金制度の申し込みをするときに、会葬礼状を求められることがあるので、準備しておくと便利です。とくに遺族以外が参列するなら、用意してあげたほうが丁寧でしょう。
会葬礼状の作成方法
会葬礼状を作成する方法は、葬儀会社・専門業者に依頼するか、自分で作成するかの2通りです。それぞれの特徴を把握し、自分にあう方法で礼状を用意してください。
葬儀会社・専門業者に依頼する
会葬礼状の作成は、葬儀会社や専門業者に依頼できます。葬儀会社に作成を依頼する際は、葬儀の打ち合わせで会葬礼状について確認してください。会葬礼状がプランに含まれていれば、自分で会葬礼状を作る必要はありません。
故人の人柄を反映したオリジナルの会葬礼状を作成したいなら、会葬礼状の作成を専門業者に発注することも可能です。専門のライターがご遺族から故人の人柄や思い出を聞き取り、文章にしてくれます。
会葬礼状の専門業者に依頼した場合、電話によるヒアリングと文章作成で15,000円前後が相場です。依頼費用は、注文する礼状の枚数によって異なります。予想外の費用がかからないよう、事前に枚数ごとの値段を確認しておきましょう。
自分で文章を作成して印刷する
年賀状のように会葬礼状の文章を自作して、印刷することも可能です。マナーを守っていれば、オリジナルの会葬礼状を自分で作り、参列者に渡しても問題ありません。最近はメールで送る会葬礼状も増えており、形式にかかわらず自身の言葉で想いを伝えられます。
なお、一般参列者には通夜・葬儀当日に会葬礼状を渡し、故人と縁が深かった参列者には会葬礼状を自作して、後日改めて送ることもあります。
会葬礼状の書き方と文例

記載内容①:故人の氏名・続柄
故〇〇 〇儀 (故 亡父〇〇 〇 儀) 告別式に際しましては
会葬礼状では、最初に故人の氏名を書きます。「故 亡(続柄)〇〇〇 儀」か「故 〇〇 〇 儀」のどちらかを選んで記入してください。なお、「儀」は「〇〇にかかわる」という意味です。
また、故人の氏名とあわせて喪主を基準とした続柄を記載します。自身の立場に合わせて、以下のように使い分けましょう。
喪主との続柄 | 記載方法 |
---|---|
父 | 父・実父・亡父 |
母 | 母・実母・亡母 |
義理の父 | 義父・岳父・父 |
義理の母 | 義母・岳母・母 |
夫 | 夫・主人 |
妻 | 妻・家内 |
息子 | 息子・長男・次男・末子 |
娘 | 娘・長女・次女・末子 |
兄弟 | 兄・弟・長兄・次兄・義兄・義弟 |
姉妹 | 姉・妹・長姉・次姉・義姉・義妹 |
記載内容②:通夜・葬儀の参列に対するお礼
御多用中にもかかわらずご会葬くださり
ご丁重なるご芳志を賜りまして
まことにありがたく厚く御礼申し上げます
早速拝眉の上ご挨拶申し上げるべきところ
略儀ながら書中をもって謹んで御礼申し上げます
続いて、通夜・葬儀に参列してくれたことへのお礼を述べます。多くの場合、以下のように「御多用中にもかかわらず」から始め、「厚く御礼申し上げます」と結びます。
結びの言葉では、「拝眉」「拝顔」「拝趨」などの表現で、感謝の気持ちを伝えます。ちなみに、拝眉・拝顔は「会う」、拝趨は「出向く」という謙譲語。通常の手紙とは異なる表現なので、注意してください。
記載内容③:通夜・葬儀の日付
〇年〇月〇日 (通夜)
〇年〇月〇日 (葬儀・告別式)
お礼の文章を書き終えたら、行を変えて通夜・葬儀の日付を記入します。日付には和暦を使用し、通夜と葬儀どちらの日付も添えてください。複数のパターンを準備する場合は、記載する日付を統一します。
記載内容④:喪主の氏名・住所
- 郵便番号・住所
- 喪主の氏名
- 外 親族一同
日付の次は、喪主の氏名と住所を記入します。「外 親族一同」とは、喪主以外の親族のこと。「外」と「親族」の間にスペースを空けて、喪主の氏名の横に添えましょう。なお、プライバシー保護の観点から住所の記載を避けたい場合は、省略しても問題ありません。
会葬礼状を書くときの注意点
文章中に句読点を使わない
会葬礼状では、通夜・葬儀が滞りなく済むようにという思いを込め、句読点を用いずに書くのがマナーです。句読点の代わりに行を変えたり、スペースを空けたりと、相手が読みやすいように工夫しましょう。
ちなみに、句読点はもともと日本語に存在せず、文章を読みやすくするための補助として後から生まれました。筆で文章を書いていたころは句読点を使用していなかったので、その名残で会葬礼状では句読点を使用しないという説があるようです。訃報や喪中ハガキ、結婚式の案内状なども、句読点を使わないのがマナーとされています。
時候のあいさつは書かない
頭語 | 結語 |
---|---|
拝啓 | 敬具 |
拝呈 | 敬白 |
啓上 | 拝具 |
会葬礼状には、時候や季節の挨拶を記載しません。「拝啓」や「敬具」などの挨拶も入れなくて良いと考えられていますが、書く場合は頭語と結語をセットにしてください。
忌み言葉や重ね言葉を使わない
忌み言葉・重ね言葉の種類 | 具体例 |
---|---|
離別を表す言葉 | 放す・降りる・去る・消える・終える・迷う・浮かばれない |
不幸が続く言葉 | わざわざ・たまたま・ますます・重ね重ね・なお・くれぐれも・また |
不幸を連想させる言葉 | 涙・梨・忙しい・亡くなる・冷める・流す・シクラメン※・4・9※言葉の中に4(死)9(苦)が含まれているため |
ネガティブなイメージを持つ言葉 | 頼りない・頑固・口うるさい |
会葬礼状では、不幸を繰り返さないようにという想いを込めて、忌み言葉や重ね言葉を使わないのがマナーです。会葬礼状の文言をはじめ、喪主の挨拶や香典返しなどでも使わないよう注意しましょう。
»忌み言葉とは?葬儀で避けたいNGワードと言い換え、挨拶例文
薄墨で礼状を書く
会葬礼状は、薄墨を使用して書くのが正式なマナーです。薄墨は「訃報を聞いて急いで墨を擦って駆けつけた」「悲しみの涙で墨が薄くなった」など、故人を偲ぶ気持ちを表現しています。現代では筆を使用する方は少ないため、グレーカラーのボールペンや万年筆などを代わりに用いても大丈夫です。
なお、会葬礼状だけでなく、通夜・葬儀の案内や香典の表書きなども薄墨を使用します。
会葬礼状の渡し方
会葬礼状を渡すタイミング
会葬礼状を渡すタイミングは、通夜・葬儀の当日です。受付で渡すか、帰り際に会葬御礼の品物と一緒に渡すのが一般的です。
通夜・葬儀の当日であれば、どちらでも構いません。時間を割いて通夜・葬儀に参列してくれたお礼を込めて、参列者に渡しましょう。
会葬御礼の品と一緒に渡す
渡すもの | 詳細 |
---|---|
会葬礼状 | 通夜や葬儀への参列の感謝を伝える 礼状宗派にかかわらず準備する |
会葬御礼品 | 「会葬返礼品」や「粗供養品」とも呼ばれる 白黒または黄白ののし紙で用意する |
清めの塩 | 参列者が帰宅時に家の前でかけて身を清める |
会葬礼状は、「会葬御礼品」と呼ばれるお礼の品と「清めの塩」とセットで渡すのが基本です。簡素化した葬儀では御礼の品をなしにして、会葬礼状のみで済ませる場合もあります。
なお、キリスト教や浄土真宗では、死を「穢れ」と捉えていないため、清めの塩は不要です。宗派や地域によって準備するものは異なるので、不安な場合は葬儀社に相談してください。
会葬御礼と香典返しの違い

会葬御礼と混同されやすいものとして香典返しがあります。会葬御礼は、香典の有無に関係なく、通夜・葬儀の参列者全員に渡す礼状や品物です。参列に対するお礼を伝えるものなので、すべての参列者に500円〜1,000円程度の品物を渡します。
一方、香典返しは香典をくれた方に感謝を伝える返礼品です。渡すタイミングは、通夜・葬儀当日の「即日返し」か、忌明け(四十九日後)の「忌明け返し」です。香典返しの相場は受け取った香典の半額程度(半返し)が一般的ですが、即日返しでは一律3,000円程度の品を用意して渡します。高額な香典を受け取った場合は、即日返しの差額を考慮した上で後日改めて香典返しの品物を送ります。
マナーを守って会葬礼状を準備しよう
会葬礼状は、参列者に感謝の気持ちを伝えるだけでなく、忌引きや給付金制度の申請にも用いられます。家族葬でも、参列者が困らないよう通夜・葬儀でお渡ししましょう。会葬礼状を自分で用意するときは、参列者に失礼がないようにマナーを守って作成してください。
通夜・葬儀までの時間が限られている場合は、会葬御礼品の手配と一緒に葬儀社に作成をお願いするのがおすすめです。通夜・葬儀の準備で忙しかったり戸惑ったりしている場合でも、葬儀会社が丁寧にサポートしてくれるでしょう。