葬儀におけるお花代には、「供花の代金」として渡すお花代と、「香典代わり」として渡すお花代があります。それぞれ意味が違い、相場金額や渡し方が変わってくるので注意が必要です。
この記事では、葬儀におけるお花代の相場や封筒の書き方、渡し方のマナーなどを解説します。
目次
葬儀のお花代とは?2種類の意味
葬儀におけるお花代には、「供花の代金」と「香典代わりの金銭」2つの意味があります。
供花の代金としてのお花代は、通夜・葬儀に供える供花を自分で手配せず、喪家にまかせる場合に包むお金です。香典代わりとしてのお花代は、四十九日後の弔問や香典辞退されている喪家など、香典として金銭を渡すのが難しい場合に包むお金です。
まずは、それぞれの意味の違いを確認しましょう。
葬儀・通夜で供える供花の代金
お花代の1つ目の意味は、通夜・葬儀の祭壇にお供えする供花の代金です。喪家が供花の注文を取りまとめていたり、手配が間に合わなかったりした場合は、「お花代」としてお金を包んで渡します。
そもそも供花とは、故人に弔意を示すための生花や花輪(花環)を指し、故人の親族や職場関係者、友人などが送るのが一般的です。葬儀社や花屋に直接手配した場合は、お花代を用意する必要はなく、そのまま依頼先に支払って問題ありません。
香典代わりの金銭
お花代の2つ目の意味は、香典代わりに渡す金銭です。香典代わりのお花代には、金銭を包む香典袋の「表書き」の違いが関係しています。表書きは、喪家の宗派や故人が亡くなってからの日数にあわせて変えるのがマナーです。
喪家の宗派がわからなかったり、四十九日を過ぎてから弔問に伺ったりするときは、「香典」としてお金を渡すのはふさわしくありません。そのため、香典の代わりとして表書きに「お花代」と書いて渡します。また、喪家が香典を辞退しているとき、「お花代」としてお渡しする方もいるようです。
キリスト教では「御花料」と呼ぶ
お花代とよく似た言葉に「御花料」があります。「御花料」とはキリスト教における香典を指し、故人の追悼や遺族への配慮を目的に渡す金銭です。
ちなみに、プロテスタントでもカトリックでも「御花料」と呼びます。キリスト教信者の方が亡くなって葬儀に招かれたときは、御花料を用意して参列しましょう。
葬儀で渡すお花代の相場金額
供花の代金として渡すお花代の相場金額
供花の代金として渡すお花代の相場金額は、5千円〜3万円。
供花は、花籠や生け花、花輪などのタイプによって値段が違うため、金額に幅が出ています。花籠は5千円〜1万5千円、生け花は1万5千円〜3万円、花輪は1基1万5千円が相場なので、考慮して包むようにしてください。
香典の代わりとして渡すお花代の相場金額
香典の代わりとして渡すお花代の相場金額は、一般的な香典の相場と同じ。故人との関係性が深かったり、本人の年齢が高かったりするほど高額になります。
- 親の香典の相場金額:3万円~10万円以上
- 祖父母の香典の相場金額:1万円~5万円以上
- 兄弟・姉妹の香典の相場金額:3万円~5万円
- おじ・おばの香典の相場金額:5千円~3万円
- 職場関係者の香典の相場金額:5千円~1万円
- 友人・知人の香典の相場金額:5千円~1万円
「家族・親族」「会社・職場関係者」「友人・知人・ご近所の方」といった関係性ごとの香典の相場金額を確認しておきましょう。
香典とお花代をそれぞれ用意する場合
香典とは別にお花代を渡す場合は、香典と封筒を分けて包みます。金額は5千円〜3万円が相場で、花籠や生花、花輪など発注する供花の種類にあわせて用意しましょう。
お花代の相場金額は、喪家がお花を手配する方法や地域によっても異なるため、事前に確認した上で準備してください。
お花代の封筒の書き方のマナー
封筒は不祝儀袋か白無地封筒を使用する

お花代には、不祝儀袋か白い無地の封筒を用意します。水引のついた不祝儀袋を利用する場合は、黒白の結び切りを選んでください。結び切りの水引には、「一度きり」「二度と繰り返さない」という意味があるからです。
また、水引は包む金額に応じて選びましょう。3万円以上を包む場合は双銀の水引がふさわしいので、白無地の封筒は避けてください。
薄墨の筆か筆ペンを使用する
四十九日までに渡す不祝儀袋は、薄墨の筆か筆ペンを使って記入するのがマナー。薄墨には「悲しみの涙で墨が薄れてしまった」「訃報を聞いて墨をする間もなく急いで駆けつけた」という意味があるからです。
封筒にボールペンや鉛筆で記入するのはマナー違反なので、毛筆または筆ペンで丁寧に記入してください。地域によっては薄墨を使用しない場合もあるので、事前に確認した上で記入しましょう。
表書きには「お花代」と書く
封筒表面の上部中央に、表書きとして「お花代」と記入してください。お花代は仏教の宗派に関わらず使用でき、漢字で「御花代」と記入しても問題ありません。
表書きの下部中央には、フルネームまたは名字を書きます。参列者が多い場合は、送り主が誰か遺族にわかりやすいよう、フルネームで記入してください。
送り主の氏名は表書きより小さく記入する
名前を記入する際は、表書きの「お花代」より大きくならないように注意してください。数人でお花代を包む場合はフルネームを連名で、法人として送る場合は部署名を記入します。
なお、あらかじめ「お花代」と印刷されている封筒を使用する場合は、名前を書き忘れやすいので必ず確認しましょう。
連名の場合は右から詰めて書く
複数名で葬儀のお花代を渡す場合は、一番右側を上席として右から左に連名で記入します。
お花代を4名以上で包む場合は、部署名や「〇〇一同」と記入して、全員の名前を記した紙を別に封入してください。法人としてお花代を出す場合は、封筒表面の中央下部に会社名、左側に部署名を記入しましょう。
お花代のお札の入れ方・包み方のマナー
お札は新札ではなく古札を使う
お花代には、新札ではなく古札を使います。新札は通常手元にないとされているため、新札を包むと「不幸を予期していた」と捉えられかねません。
ある程度のシワは問題ありませんが、汚れやヨレがひどかったり、破れていたりするお札は避けてください。丁度良い古札が見つからない場合は、新札を折り曲げて包みます。
封筒にお札を入れる際には表側を出す
お花代のお金は、封筒の表面に対して、肖像画を裏側・下向きに入れます。お札を引き出したとき、封筒の表面から人物の顔が見えないようにしましょう。
肖像画を裏側・下向きにしてお金を包むのは、故人の逝去を悼み、お悔やみの気持ちを表すためです。お札を封筒に入れる際は、向きに注意して入れてください。
偶数ではなく奇数の金額を包む
お花代を包むときは、香典と同様、包む金額やお札の枚数を奇数にするのが正式なマナーです。割り切れる偶数は、故人との縁を切ることを意味し、葬儀の場では不適切だとされています。
また、仏教で死や苦しみを連想させる4や9の数字も避けましょう。5千円、1万円、3万円など割り切れない奇数の金額を包みます。
葬儀でお花代を渡すときのマナー
書き方や包み方と同様に、お花代の渡し方にもマナーがあります。お花代の渡し方は、故人と自分の関係性によって異なるため、関係性別にお花代の渡し方を解説します。
自分が故人の家族
通夜・葬儀で使用する供花などのお花の準備は、多くの場合、葬儀社が提供するプランに組み込まれています。喪主が葬儀社でお花を手配する場合、故人の家族が別途お花代を包む必要はありません。
ただし、お花代として渡したいなら、喪主に直接お花代を渡すことも可能です。また、お花を葬儀社経由ではなく別の方法で手配をしたいときは、喪主・葬儀社に相談してみましょう。
自分が故人の親族
故人の親族としてお花代を渡す方法は、遺族との交流の深さによって異なります。
遺族と親しいなら、封筒に包まず直接手渡ししても問題ありません。一方で、故人・遺族との付き合いが薄いなら、不祝儀袋にお花代を包んで渡してください。
自分が故人の友人や同僚
故人の友人や同僚など、一般参列者としてお花代を渡す場合は、会場入り口で受付担当者に手渡しましょう。お花代の受付場所を限定するご遺族もいるため、受付場所や渡すタイミングがわからないときは、受付担当者やスタッフに確認するとよいです。
遺族に直接お花代を手渡す場合は、通夜・葬儀前後など遺族の負担にならないタイミングで渡してください。
葬儀でお花代を渡すときの注意点
香典とお花代は別々に包む
通夜・葬儀でお花代と香典をどちらも渡す場合は、それぞれ別の封筒に包んでください。香典とお花代を別々に渡すなら、発注予定だった供花と同じくらいの金額を包みましょう。
ちなみに、一般的な通夜・葬儀で香典を準備せず、お花代のみを渡すのはマナー違反とみなされかねません。通夜・葬儀当日に参列するときは香典を必ず持参し、必要に応じて別途お花代を用意します。
お花代を渡すのは遺族の意向に沿う
葬儀でお花代を渡したいときは、事前に遺族の意向を確認します。小規模な家族葬や自宅で執り行う自宅葬だと、会場で供花を飾るスペースが限られるからです。
またお花代を渡すと、遺族は返礼品を準備する必要があるため、負担をかけてしまうかもしれません。お花代の受け取りを辞退されたら、遺族の意向を尊重して渡すのは控えましょう。
参列できないときは現金書留で後日郵送する
通夜・葬儀に参列できないときは、後日現金書留でお花代を郵送することもできます。お花代を不祝儀袋に入れて現金書留専用の封筒に包み、葬儀後1週間〜1ヶ月で到着するよう手配してください。
また、お悔やみや故人との思い出、遺族を気遣う言葉など、一言メッセージを添えるとよいでしょう。遺族に哀悼の気持ちが伝わるよう、心を込めたメッセージを書いてください。
お花代ではなく供花を贈っても良い
通夜・葬儀で準備する4つのお花 | |
供花 | 祭壇にお供えするお花 造花ではなく生花が用いられることが多い |
花輪 | 通夜や葬儀会場の入り口に飾るリング上のお花 白と黒を基調とした造花が用いられることが多い |
枕花(まくらばな) | 故人の自宅に送るお花 場所を取らないフラワーアレンジメントが多い |
献花 | 参列者が故人に贈るお花 参列者ではなく喪家が用意する |
通夜・葬儀では、お花代を渡すのではなく供花を送っても問題ありません。事前に遺族の確認・許可をとって、供花を用意しましょう。遺族が供花を辞退している場合は、遺族に負担をかけてしまう可能性があるため、無理に供花を送らないでください。
供花は以下の3つの方法で発注できます。
- 葬儀社・葬儀会場に依頼する
- 花屋に依頼する(外部からの注文を受け付けていない場合もあるので要注意)
- インターネット依頼する

【遺族向け】葬儀のお花代のお礼・お返しマナー
お花代やお花を受け取ったら、遺族はお礼や返礼品で送り主に感謝を伝えるのがマナーです。ここからは、遺族向けにお花代のお返しで大切なマナーを4つ紹介します。
お礼状を添えて返礼品を渡す
お花代や供花へのお返しには、お礼状を添えて感謝の気持ちを伝えましょう。お礼状は、ハガキや手紙でも差し支えありませんが、目上の方や会社関係者に送る場合は、形式的な方法でお礼状を送るのがおすすめです。
金額の目安は受け取った金額の半額
返礼品には、受け取った金額の半額ほどの品を選びましょう。香典とお花代を一緒に受け取った場合、両方に返礼をするか香典のみに返礼するかは、地域によって異なります。返礼の対象については、事前に確認しておくと安心です。
香典とお花代の両方に対してお返しをする場合は、合計金額の3分の1から半額を目安にして返礼品を決定しましょう。極端に高額な返礼品を送ると、気を遣わせてしまう可能性があるため注意が必要です。
連名でお花代をいただいた場合は菓子折りが定番
お花代や供花を職場・サークルなどから連名でもらった場合は、返礼品として菓子折りを送るのが定番です。全員に行き渡るように数を確認した上で、個別包装された菓子折りを選んでください。
なお、故人の上司や同僚から個人的にお花代や供花を受け取ったら、個別に返礼品を準備して感謝を伝えましょう。
お花代への返礼品を渡す必要がない場合もある
お花代の送り主が返礼を不要としている場合は、意向に従って返礼品を渡す必要はありません。ただし、お返しを辞退している方にも、電話や手紙やハガキ、メールなどで丁寧に感謝を伝えてください。
葬儀のお花代はマナーを守って渡しましょう
通夜・葬儀のお花代、遺族の意向を確認した上で迅速に準備するのが大切です。お花代を渡す目的を理解した上でふさわしい金額を包み、マナーを守って渡すようにしてください。
またお花代ではなく、供花を送ることも可能です。供花を送るときは遺族・葬儀社に相談して、葬儀社・花屋・インターネットサービスなどから手配しましょう。
