葬儀費用を故人の貯金で支払える?口座引き出しの注意点や手続きを解説

小林憲行【記事監修】
小林憲行

記事監修小林憲行

葬儀費用を故人の貯金で支払える?口座引き出しの注意点や手続きを解説
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  • 葬儀費用の支払いに故人の貯金を活用することは可能
  • 故人の貯金で葬儀費用を支払うと口座凍結や相続放棄が不可になる可能性あり
  • トラブルが起きないよう、生前から葬儀費用の準備・対策をしておくのが大切

全国の葬儀費用の平均相場は118.5万円。(第6回お葬式に関する全国調査調べ)
内訳は、葬儀一式にかかる基本料金が75.7万円、会食やおもてなしの飲食費が20.7万円、会葬者へお渡しする返礼品費が22.0万円です。

決して少ない金額ではないため、葬儀費用の支払いに故人の貯金を活用したいと考える方も多いでしょう。この記事では、故人の貯金を葬儀費用に充てるための手続き方法や注意点、トラブルを防ぐポイントなどを解説します。

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葬儀費用を故人の貯金で支払うことは可能

結論からお伝えすると、葬儀費用を故人の貯金や預金で支払うことは可能です。故人の預貯金を葬儀費用に充てれば、遺族の経済的負担を軽減できます。

故人の預貯金を葬儀費用に活用するときは、故人の銀行口座からお金を引き出すための手続きが必要です。起こりうるトラブルや注意点をふまえて、故人の預貯金を活用しましょう。

葬儀費用に関する基礎知識

葬儀費用の負担方法や葬儀費用の相場について事前に知っておくと、葬儀費用の支払いがよりスムーズです。まずは、葬儀費用に関する基礎知識を2つ解説します。

葬儀費用の支払い方法は複数ある

  • 喪主が支払う
  • 施主が支払う
  • 香典を活用して支払う
  • 相続人の間で分担して支払う
  • 故人の相続財産を活用して支払う

葬儀費用を支払う方法は、大きく分けて5つ

一般的には、喪主が葬儀費用を支払うものだと考えられています。しかし、喪主が未成年または高齢で葬儀の実施が難しいと、施主を立てて葬儀費用を負担する場合も。また、香典を葬儀費用の支払いに充てることで、費用負担を軽減できます。

喪主が1人で葬儀費用を支払うのが難しいときは、相続人の間で分担して支払ったり、故人の預貯金を活用して支払ったりするのも方法のひとつです。

葬儀費用は葬儀の種類・規模によって異なる

葬儀種類別の葬儀費用
葬儀種類葬儀費用の総額最も多い価格帯
直葬・火葬式42.8万円20万円以上~40万円未満
一日葬87.5万円20万円以上~40万円未満
家族葬105.7万円60万円以上~80万円未満
一般葬161.3万円120万円以上~140万円未満
出典:第6回お葬式に関する全国調査(2024年/鎌倉新書)

葬儀費用は、直葬・火葬式一日葬家族葬、一般葬と、選択した葬儀の種類や規模によって大きく異なります

葬儀費用は、参列者を限定せず、広く招待する一般葬が最も高く、火葬のみを行う直葬・火葬式が最も安くなります。上記の通り、葬儀費用は葬儀の規模によって大きく異なることを念頭に入れて、葬儀プランを組みましょう。

葬儀費用を故人の貯金で支払うときの3つのポイント

  • 口座名義人の死亡が銀行に伝わると口座が凍結される
  • 葬儀費用の全てが相続税控除の対象になるわけではない
  • 相続放棄ができなくなる可能性がある

故人の貯金や預金で葬儀費用を支払えるといっても、無条件にお金を引き出せるわけではありません。故人の預貯金を郵便貯金や銀行口座から引き出して葬儀費用を支払う場合は、この3点を事前に把握しておきましょう。

口座名義人の死亡が銀行に伝わると口座が凍結される

故人が亡くなったときに口座が凍結する仕組み

口座名義人の死亡後、銀行口座が凍結される可能性があります。銀行などの金融機関は、故人の相続人や遺族からの申告、新聞のお悔やみ欄、残高証明取得申請などを通じて名義人が亡くなったことを把握すると、故人の口座を凍結します。口座が凍結されると、遺族が故人の口座から貯金や預金を引き出すことはできません

口座凍結後に故人の口座からお金を引き出すためには、仮払い申請や相続手続きを進める必要があります。しかし、手続きが完了してお金を引き出せるようになるまで、1週間から1ヶ月以上かかるケースは少なくありません。

葬儀代の支払い期限は、葬儀後1週間から10日で設定している葬儀社が多く、支払い期限に間に合わない可能性があるので注意が必要です。

葬儀費用の全てが相続税控除の対象になるわけではない

遺産相続は、相続した金額に応じて相続税を支払う仕組みとなっています。そのため、葬儀費用を遺産から差し引くことで相続税として支払う金銭的な負担を軽減できます。

ですが、葬儀費用の全てが控除対象になるわけではありません。控除対象にならない費用を申告すると、不正だと捉えられる危険性があるため、事前に相続税控除の対象となる項目・ならない項目を把握しておきましょう。

葬儀費用の中で相続税控除の対象となる項目

  • 遺体の回送費用
  • 宗教者への謝礼
  • 葬儀での飲食接待費
  • 死亡診断書の発行費用
  • 火葬料・埋葬料・納骨費用
  • お通夜や告別式を実施する費用

葬儀費用の中で、相続税控除の対象となるのはこちらの6つです。葬儀を実施する際に必要な費用であると判断されるため、相続税控除の対象となります。

葬儀費用の中で相続税控除の対象とならない項目

  • 喪服代
  • 遠方の親族の宿泊費
  • お墓や仏壇などの費用
  • 裁判に必要な解剖費用
  • 香典返しの品物にかかる費用
  • 初七日や四十九日など葬儀以外の法要にかかる費用

こちらの6つは、葬儀とは直接関係のない費用、葬儀に必ずしも必要ではない費用と判断されるため、相続税控除の対象にはなりません。

注意:香典は相続の対象外

参列者が遺族に贈った香典は、相続の対象外となります。なぜなら、香典は参列者が故人を偲び、葬儀費用を補填してもらうために遺族に渡す金銭だと考えられているからです。

一般的には喪主が葬儀費用を支払うため、喪主が香典を受け取り、葬儀費用の支払いに活用する事例がよく見られます。しかし、香典の使い道は相続トラブルになる可能性もあるため、香典をどのように扱うかは相続人の間で話し合っておくようにしてください。

相続放棄ができなくなる可能性がある

故人の預貯金を葬儀費用に充てると、相続放棄ができなくなる可能性があります。相続放棄とは、相続人が本来相続するはずだった故人の遺産を全て受け取らないと意思表示すること。

相続するのは預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金のようなマイナスの財産も含まれるため、故人が借金を抱えている場合、相続放棄を検討するご遺族が多いです。

法律上、相続放棄をしても、故人の預貯金を葬儀費用の支払いに活用することは認められています。しかし、あまりにも高額な葬儀を実施したり、葬儀費用の支払い以外で故人の貯金や預金を使用したりすると、相続放棄ができなくなることがあるので注意が必要です。

口座凍結後に故人の口座から葬儀費用を引き出す方法

  • 仮払い制度を活用して故人の預金や貯金を引き出す
  • 裁判所に「預貯金債権の仮分割の仮処分」を申請する
  • 故人の貯金と預金だけ先に遺産分割協議を進める
  • 相続手続きを完了して故人の口座の凍結を解除する

故人の口座が凍結された後、お金を引き出す方法は大きく分けて4つあります。

口座凍結を解除する手続きは、必要書類が多く複雑なので、弁護士や行政書士などの専門家に依頼するのがおすすめです。ひとつずつ詳しく解説していきます。

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仮払い制度を活用して故人の預金や貯金を引き出す

民法改正によって、2019年7月1日から「遺産分割前の相続預金の払い戻し」(仮払い制度)が施行され、遺産分割協議前であっても故人の口座から預貯金を引き出せるようになりました。

出典民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」(法務省)(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00222.html)(2024年8月6日に利用)

仮払いの申請には他の相続人の同意が必要ないので、葬儀費用を支払うために故人の預金や貯金の一部だけを払い戻す場合に便利です。

それぞれの相続人が引き出せる金額は以下のように決まっています。

  • ひとつの金融機関で150万円を上限に引き出しが可能
  • 相続開始時の預金額×1/3×払い戻しを行う相続人の法定相続分

上記のうち、少ないほうの金額が適用されます。

「遺産分割前の相続預金の払い戻し」(仮払い制度)で故人の口座から現金を引き出す流れ

仮払い制度を活用できるのは、亡くなった人の預金や貯金を引き出す時点で家庭裁判所において遺産分割の審判や調停の申立がされていないことが条件となります。遺産分割の審判や調停申立がすでにされていると、家庭裁判所の判断なしに故人の預金や貯金を引き出せないので注意しましょう。

裁判所に「預貯金債権の仮分割の仮処分」を申請する

葬儀費用の支払いに、「遺産分割前の相続預金の払い戻し」制度で支給される150万円以上のお金が必要となる場合は、裁判所に「預貯金債権の仮分割の仮処分」を申請できます。仮処分を許可してもらうことで、故人の預貯金の全額または一部を引き出せます。

ただし、仮処分を受けるためには、複数の条件があるため事前に確認しておきましょう。

  • 他の相続人らの利益を害さないこと
  • 相続債務の弁済や相続人の生活費を捻出する必要があること
  • 家庭裁判所での遺産分割に関する調停や審判の申し立てがされていること

故人の預貯金払い戻しが妥当であると認められた場合のみ、仮処分が許可されます。遺産分割に関しての調停や審判の申し立てなどが必要になるため、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

故人の貯金と預金だけ先に遺産分割協議を進める

葬儀費用の支払いに仮払い制度の限度額150万円以上が必要な場合や、相続人同士で話し合いができる場合は、故人の貯金や預金について先に遺産分割協議を進めておくとよいです。

故人の預貯金を相続する手続きでは、主に以下の書類の提出が必要となります。

  • 戸籍謄本
  • 印鑑証明
  • 遺産分割協議書のコピー

遺産分割協議書とは、遺産分割協議にて相続人の間で合意した内容をまとめた書類です。金融機関によっては、遺産分割協議書の代わりとして相続同意書で対応する場合もあります。金融機関ごとに対応が異なるため、事前に確認しておきましょう。

故人の預貯金だけ先に遺産分割協議を進めた場合は、預貯金以外の他の遺産について後日協議する必要があるので注意が必要です。

相続手続きを完了して故人の口座の凍結を解除する

相続手続きが完了すると、口座凍結を解除できるようになります。しかし、「誰が何をどれくらい相続するのか」について遺産分割協議にて決定した後でないと、口座凍結解除の手続きはできません。相続手続きが完了しても、口座凍結の解除には時間がかかると念頭に入れておいてください。

口座凍結解除のために必要とされることが多いのは以下の書類です。

  • 戸籍・除籍謄本(出生から死亡まで)
  • 死亡を確認する書類(住民票の除票・死亡診断書など)
  • 通帳やキャッシュカード
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 遺言書または遺産分割協議書

口座凍結を解除するために必要な書類は、金融機関や遺産の分割方法によって異なるため、事前に確認をしておきましょう。通常、口座凍結が解除されてお金が払い戻されるまでには、必要書類の提出後約1週間から2週間かかります。

葬儀費用を故人の貯金で支払うと相続放棄できない?4つの事例

  • 豪華な葬儀を行った場合
  • 預貯金の仮払い制度を利用した場合
  • 葬儀と関連がないことに利用した場合
  • 財産的な価値があるものを処分した場合

葬儀費用の支払いに故人の貯金・預金を充てることは法的に認められています。しかし、お金の使い方によっては「故人の財産を無条件で相続した(単純承認)」とみなされ、相続放棄ができなくなるかもしれません。

故人の預金や貯金で葬儀費用を支払うと、相続放棄ができなくなる事例を4つ紹介します。

豪華な葬儀を行った場合

豪華な葬儀や大規模な葬儀を行うと、相続放棄が認められないかもしれません。故人が借金を抱えていた場合、債権者の債権を減らしてまで高額な葬儀を行うのは常識的でないと考えられているためです。葬儀プランを検討するときは身の丈にあった必要最小限の内容に留めておくようにしてください。

実施する葬儀が豪華なのかどうか、自身で判断が難しい場合は、専門家に相談してみましょう。

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預貯金の仮払い制度を利用した場合

仮払い制度を利用して葬儀費用を支払っても、必ずしも相続放棄ができなくなるわけではありません。ですが、引き出したお金の使い道によっては単純承認とみなされる可能性があります。たとえば仮払いで引き出した預貯金を、自身の生活費に使用したり自分の口座に入れたりすると単純承認と判断されかねません。

故人の借金や生前の医療費、葬儀費用の支払いに充てるのは問題ありませんが、相続放棄を考えている場合は、預貯金の仮払い制度の利用や預貯金の使い道に注意してください。

葬儀と関連がないことに利用した場合

葬儀と直接関係しないことに故人の貯金や預金を利用すると、相続放棄ができないかもしれません。葬儀費用として認められているのは、葬儀を実施するための金額に限定されています。

以下のような費用は、葬儀と直接関係しないとみなされる可能性が大きいです。

  • 喪服代
  • 葬儀の宿泊代
  • 仏壇仏具の費用
  • 墓地や墓石の費用
  • 初七日や四十九日の法要
  • 香典返しにかかった費用

葬儀費用の支払いだと認められる項目は限られているため、事前にしっかりと確認しておくことが大切。故人の貯金や預金を生活費など私的な用途にはもちろん、葬儀と直接関係のないことに使わないようにしましょう。

財産的な価値があるものを処分した場合

遺産の中でもブランド品や貴金属、車といった財産的な価値がある品物を処分すると、相続放棄が認められないかもしれません。なぜなら、相続放棄をしていても他の相続人が遺品を引き取らないと、自分の財産と同じように遺品を保管し、管理する義務が生じるからです。

遺産を売却するだけでなく、相続する段階で原型を留めていない場合も、遺産を「処分」したとみなされます。例えば、火葬の際に故人が使っていたブランド物のバッグや時計などを副葬品として納めた場合は、遺産を処分したと判断されてしまうので注意が必要です。

遺産を隠したり処分したりすると、財産を無条件で相続したとみなされて相続放棄が無効になります。

生前からできる葬儀費用の支払いに備えた対策

  • 葬儀費用を預金口座から事前に引き出しておく
  • 自治体の葬祭サポートについて調べておく
  • 葬儀保険や生命保険に加入しておく
  • 葬儀信託や互助会へ加入しておく

葬儀費用の支払いでは少なくとも数十万円必要になるため、遺族にとって大きな負担となりかねません。葬儀費用の支払いを心配しなくて済むように、生前からの準備が大切です。

生前からできる葬儀費用の準備として4つの対策を紹介します。

葬儀費用を預金口座から事前に引き出しておく

故人の預貯金を葬儀費用として活用するなら、生前に本人の口座から葬儀代を引き出しておくとよいです。事前に葬儀費用を引き出しておくことで、名義人が亡くなった後に遺族が預金を引き出す必要がなく、スムーズに葬儀費用を支払えます。

本人以外の方が葬儀費用として預金引き出しをするときは、将来トラブルの元とならないよう、名義人や相続人の承認を必ず得てください

口座から引き出して自宅に保管している現金は手許現金と呼ばれ、相続財産として計上されます。名義人が亡くなった後に、葬儀費用が二重に相続税の対象から控除されることがないよう、生前に葬儀費用として引き出した金額を漏れなく申告してください。

また、手元にまとまった現金を持っておくことは、盗難などの危険を伴います。安全に保管するために、保管方法を工夫したり家族と相談したりしてトラブルが起きないように配慮するのも大切です。

自治体の葬祭サポートについて調べておく

  • 市民葬・区民葬
  • 葬祭補助金制度
  • 福祉葬

葬儀費用の支払いが難しい場合は、公的サポートを活用するのもおすすめ。

市民葬や区民葬は、自治体が住民向けに提供している葬祭サービスです。葬儀会社と自治体が提携することで葬儀費用をおさえ、葬儀プランには祭壇や霊柩車での遺体の搬送、火葬といった最低限の葬儀費用が含まれています。

葬祭補助金制度とは、国民健康保険社会保険の加入者が亡くなった際に、葬儀・埋葬を実施する方に支給する制度。葬儀が終わった後に、居住する自治体や加入先に葬儀費用を申請すると支給されます。

福祉葬とは、生活保護世帯の方が亡くなって葬儀費用を出すのが難しい場合、葬祭扶助の範囲で自治体が実施する葬儀です。葬儀の内容は自治体によって異なりますが、多くの場合火葬のみとなります。

サポートの対象や葬祭サービスの内容、手続きの方法は自治体によって異なるため、利用を検討している場合は、事前に条件を確認しておきましょう。

葬儀保険や生命保険に加入しておく

一般的な生命保険葬儀費用に特化した葬儀保険に加入するのもひとつの方法。葬儀費用を積み立てておくことで、生前から葬儀費用を準備できます。

葬儀保険は少額短期保険のひとつで、死亡保険金は100万円から200万円程度と、葬儀費用の支払いには十分です。加入時の年齢制限が高めに設定されているほか医師の診断書が必要ないため、加入者が高齢であったり、持病を抱えていたりする場合は、葬儀保険への加入をおすすめします。多くの保険会社が、保険金の申請から1週間ほどで保険金を支払ってくれます

年齢や加入条件と照らし合わせて、本人にあった保険を選ぶようにしてください。

保険金の申請には以下の書類の提出が必要になります。

  • 保険証券
  • 死亡診断書
  • 受取人の本人確認書類
  • 死亡を確認できる被保険者(故人)の住民票や、戸籍証明

故人が亡くなった後スムーズに保険金を請求できるよう、事前に必要書類を確認しておいてください。

葬儀信託や互助会へ加入しておく

葬儀会社の互助会への加入や葬儀信託を利用するのも、生前の準備として有効です。

互助会の加入は、葬儀会社の互助会に加入して毎月一定の金額を積み立て、葬儀費用を準備する方法です。ただし、葬儀プランが限定的であったり、途中で解約すると解約手数料がかかったりするので注意が必要です。なお、故人が互助会で葬儀費用を積み立てていると知らずに、遺族が別の葬儀会社で葬儀を行うと、積み立てたお金は返却されません。互助会は、家族に伝えた上で加入するようにしましょう。

一方、葬儀信託とは葬儀費用を銀行に信託し、葬儀後に葬儀会社が銀行から葬儀代を受け取る方法です。葬儀費用を銀行に預けているため、葬儀会社の倒産などで保険金が戻らないといったリスクがなく、生前に希望の葬儀プランを作成することも可能です。契約には将来喪主を務める方も同席するため、遺族が別の葬儀会社で葬儀をあげる心配もありません

互助会への加入と葬儀信託の利用のどちらが自身に向いているのか、加入の条件などを比較した上で利用するようにしてください。

トラブルを回避!葬儀費用を故人の貯金で支払うときの注意点

  • 故人の口座が凍結される前にお金を引き出さない
  • 何にどれだけ使ったか領収書や明細書を残しておく
  • 引き出した貯金を葬儀費用の支払い以外で使用しない

葬儀費用の支払いには少なくとも数十万単位の金額が必要となるため、葬儀費用の支払いをめぐって家族間で揉めることも少なくありません。

故人の預貯金を葬儀費用の支払いに活用する際に起こりうるトラブルを防ぐポイントを3つ紹介します。

故人の口座が凍結される前にお金を引き出さない

金融機関が名義人の逝去の事実を知るまでは、口座は凍結されません。しかし、口座が凍結される前に預貯金を不用意に引き出すとトラブルにつながりかねないため、口座凍結前にお金を引き出さないようにしてください。なぜなら、他の相続人から「葬儀費用の支払い以外に、故人の預貯金を使い込んでいるのではないか」と、疑われるきっかけを作ってしまうからです。

家族がキャッシュカードの暗証番号を知っていれば、名義人の死亡後も口座凍結まではお金を引き出せますが、他の相続人から遺産の横領を疑われたり、相続放棄ができなくなったりする可能性もあります。故人の貯金や預金を引き出す場合は、事前に必ず相続人全員の了承を得るようにしてください。

何にどれだけ使ったか領収書や明細書を残しておく

葬儀費用に故人の貯金を使ったとわかるように、領収書や明細書は必ず残しておくようにしてください。領収書や明細書は、故人の遺産が私的に利用されていないことの証明です。また、相続税控除の金額の明細としてだけでなく、「財産の利用」には当たらないことの証明にもなります。

領収書や明細書をとっておくと故人の預貯金の使い道を他の相続人に伝えられるため、葬儀費用をめぐる相続人同士の揉め事を防ぎやすいです。万が一、領収書や明細書が手に入らない場合は、支払った金額や日付、目的などをメモに残しておくようにしてください。

引き出した貯金を葬儀費用の支払い以外で使用しない

故人の預貯金を生活費など、葬儀費用以外で使用しないようにするのもトラブル防止になります。故人の預貯金を葬儀費用の支払い以外で使用した場合、「故人の財産を使用した(単純承認)」とみなされて相続放棄ができない可能性があるため、注意が必要です。

なお以下の場合は、単純承認とみなされません。

  • 故人の医療費の支払い
  • 死亡保険金の受け取り
  • 金銭的な価値を伴わない形見分け

こちらの目的で故人の預貯金を使うなら、費用を支払ったり物品を受け取ったりした後でも相続放棄ができます。この目的以外で故人の貯金や預金を使用すると、財産を無条件で相続したとみなされ、相続放棄できなくなる可能性があるので注意しましょう。

葬儀費用は故人の貯金で支払えるが事前の準備を忘れずに

故人の貯金や預金を葬儀費用に充てることはできますが、口座凍結されたり相続放棄ができなくなったりする可能性があります。口座凍結後に葬儀費用を引き出すにはさまざまな手続きが必要なうえ、時間もかかります。

そのため、葬儀が決まってから慌てないよう、生前から準備しておくのが大切です。葬儀費用の支払いは決して少ない金額ではないため、生前からできる準備を少しずつ進めましょう。

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