初めて家族葬を執り行う場合、一般葬とどう違うのかわからない人も多いでしょう。
喪主による挨拶もそのひとつ。家族葬は親しい身内のみで行う葬儀のため、そもそも挨拶をする必要があるのか、不要なのか疑問に思う人もいるようです。
また実際に挨拶する場合は、何を話せば良いか不安という人も。この記事では、家族葬での挨拶やそのまま使える例文、挨拶のポイントなどについて解説します。
目次
家族葬で喪主の挨拶は必要?

家族葬は家族によってそれぞれの意向や形態の違いがあり、参列者の人数や葬儀の規模も異なります。そのため喪主による挨拶をするかどうかについても、その家族の意向で決めるか、もしくは参列者との関係性や人数によって判断します。
ごく少数の会葬者のみの家族葬ならば、喪主による挨拶は不要だと判断します。親や子などの近しい関係のみの葬儀において、改まった挨拶はむしろ不自然と言えます。
それに対して遠方の親戚や、故人と親しい友人などが参列する場合には、挨拶をするのが一般的です。やはり儀礼の節目において、きちんと挨拶や感謝を述べるのがふさわしいと思われます。葬儀に参列してくれたお礼や故人を偲ぶ言葉を述べます。
挨拶の必要性はその状況にもよるため、葬儀社の担当者に相談して決めても良いでしょう。
家族葬の喪主の挨拶のタイミング
家族葬で喪主の挨拶が必要になる場面は、主に4つあります。通夜の後、通夜振る舞いの席、出棺の前、精進落としの席です。地域の習わしによってお葬式の流れも異なりますので、詳しくは葬儀社に確認をしておくと良いでしょう。
また、家族葬の場合は必ずしもすべてのタイミングで挨拶をする必要なく、省略される場合もあります。
挨拶をするまでの流れは、司会者や葬儀社のスタッフが喪主の挨拶の案内をします。それに続いて挨拶を行いましょう。
通夜終了時の挨拶
お通夜が終了した時には、参列者への感謝を述べる挨拶をします。可能な範囲で故人が亡くなった時の状況に触れてもかまいません。
この後に通夜振る舞いの会食がある場合はその案内をします。それに加えて翌日の葬儀への参列願いを添えて、あまり長くならない内容にまとめます。
通夜振る舞いでの挨拶
通夜振る舞いでの喪主の挨拶は、通夜での挨拶をしなかったときに行われることが多いようです。
このときの挨拶には明確な決まりはなく、通夜振る舞いの前に親族控室で行う場合や、会食の席についたときに挨拶をする場合もあります。会食の席での挨拶は着席のときのみで、立食スタイルの通夜振る舞いで挨拶をすることは多くありません。
会食の席での挨拶は料理が冷めてしまうこともあり、短めに終わらせます。
出棺時の挨拶
通夜の翌日に行われる葬儀・告別式では、火葬場へ出棺する際に喪主からの挨拶をします。一般的な葬儀では、参列者と故人のお別れになります。家族葬の場合は親族がそのまま火葬場に同行することもあり、省略されることもあります。
改めて参列者への感謝の言葉を述べます。故人を偲ぶ思いを伝え、今後も家族同士あるいは参列者と遺族との縁が続くことを願う言葉を添えて、まとめると良いでしょう。
精進落としでの挨拶
火葬が終わった後に行われる会食を精進落としと言います。その席でも喪主による挨拶が行われます。
場合によっては精進落としの開始と締めの2回行うことも。締めの挨拶は「解散の挨拶」でもあります。ここでの挨拶は葬儀を終えたことのねぎらいの気持ちを述べます。
家族葬での挨拶の例文

葬儀の場でそのまま使える挨拶の例文をご紹介します。改まった場で挨拶をするのはそれなりに緊張するものです。事前にある程度、挨拶文を考えておくことをおすすめします。
通夜での挨拶例文
本日は皆様お忙しい中、亡き〇〇(故人)の通夜に参列くださり、心より感謝を申し上げます。故人も、生前親しくさせていただいた皆様にこのように見守られて、喜んでいることと思います。
故人に対し生前賜りましたご厚誼に、深く感謝申し上げます。
なお、明朝午前〇時〇分よりこちらの斎場にて葬儀(告別式)を執り行います。よろしければぜひご参列いください。
本日は誠にありがとうございました。
以下の例文では故人の具体的なエピソードを入れています。
本日はお足元の悪いなか、通夜へのご参列を賜りまして誠にありがとうございました。〇〇の妻の△△と申します。
夫は5年前よりに胃がんを患い一度は寛解したものの、昨年よりまた調子を崩し、余命半年と告げられました。ですが最後まで病と戦い、いつも笑顔を絶やさず穏やかな表情が今も印象に残っています。
大学のゴルフサークルの方々とは仲も良く、「またみんなでゴルフがしたい」といつも申しておりました。
なお、別室にて、心ばかりのお食事をご用意しております。故人の思い出話など、もうしばらくお付き合いいただければ幸いです。また、葬式・告別式は、翌1月15日、〇時より当斎場で行います。本日は誠にありがとうございました。
通夜振る舞いでの挨拶例文
開式の挨拶
ささやかではありますが、どうぞお召し上がりください。故人の生前の思い出話などで楽しいひと時を過ごせればと存じます。
閉式(締め)の挨拶
夜も更けて参りましたので、本日はこれでお開きとさせてください。翌1月15日の〇時より当斎場にて葬式・告別式を行う予定でございます。お時間がございましたら、お見送りをいただけると幸いです。
本日はお忙しい中、故◯◯の通夜にご参列くださいまして誠にありがとうございました。皆様のおかげをもちまして、滞りなく通夜を済ませることができました。
また、たくさんの偲ぶお話の数々本当にありがとうございます。皆様に大変親しくお付き合いいただいたこと、改めてお礼申し上げます。
まだまだ積もる話はございますが、夜も更けて参りましたので、本日はお開きとさせていただきます。 なお、明日の葬儀・告別式は午後◯時より当斎場にて予定しております。お時間が許すようでしたらお見送り頂ければと存じます。 どうぞ足もとにお気を付けください。
告別式の出棺時の挨拶
故〇〇の葬式並びに告別式にご参列くださり、ありがとうございます。
遺族を代表して、皆様に一言ご挨拶を申し上げます。
故人は昨年、胃がんの再発が見つかって以来、この半年間懸命に闘病生活を続けておりましたが、本人と家族の願いも虚しく、〇月〇日〇時〇分入院先にて息を引き取りました。
生前〇〇に対しいただいた多くのご厚誼につきましては、家族一同、〇〇に代わりまして厚く御礼を申し上げます。これからも家族一同力を合わせて頑張っていきたいと思っております。
今後とも〇〇の生前と変わりないご厚誼をくださいますようよろしくお願いいたします。本日は誠にありがとうございました。
遺族を代表して、皆様に一言ご挨拶を申し上げます。
本日は何かとご多用の中、亡き〇〇(故人)の葬儀に参列くださり、心より感謝申し上げます。
故人は昨年、癌の再発が見つかって以来、この半年間懸命に闘病生活を続けておりましたが、本人と家族の願いも虚しく、〇月〇日〇時〇分入院先にて息を引き取りました、幸い最後は苦しむこともなく、眠るような旅立ちであったことがせめてもの救いです。
生前〇〇に対しいただいた多くのご厚誼につきましては、家族一同、〇〇に代わりまして厚く御礼を申し上げます。
これからも家族一同力を合わせて頑張っていきたいと思っております。今後とも〇〇の生前と変わりないご厚誼をくださいますようよろしくお願いいたします。
本日は誠にありがとうございました。精進落としでの挨拶
開式の挨拶
本日は誠にありがとうございました。おかげさまで滞りなく葬儀、火葬までを終えることができました。皆様のご厚情に深く感謝いたします。
ささやかではございますが、感謝の気持ちを込めてお料理を用意させていただきました。故人のことを偲びながらゆっくりとお過ごしいただきますようお願いいたします。
閉式(締め)の挨拶
本日はお忙しいなか、最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。もう少し故人の思い出話を伺いたく思いますが、本日はこのくらいで終了とさせていただければと存じます。
至らぬところもあったかと存じますが、皆様のご厚意に無事に終えられたこと、心より感謝申し上げます。本日はありがとうございました。
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家族葬の喪主の挨拶でのポイント
慣れない喪主の挨拶に戸惑う人は多いでしょう。参列者に失礼のないよう、スムーズに挨拶を終えるのが望ましいです。
故人を見送る大切な場ですから、きちんとした挨拶となるよう心掛けましょう。以下のいくつかのポイントに沿って事前に挨拶文を作成しておくと良いでしょう。
家族葬の挨拶に入れたほうが良い内容
喪主からの挨拶文には、次の4つの内容を含めると気持ちの込もった挨拶になるでしょう。また故人とのエピソードや思い出なども入れると、会場の良い雰囲気につながります。
- 故人と喪主との関係
- 通夜や葬儀へ参列してくれたことへの感謝
- 故人と生前親しくしてくれたことへの感謝
- 今後も遺族に心を向けてもらうことを願う言葉
この時、「弔問」は自宅やお通夜へ訪れることを示し、「会葬」は葬儀(告別式)への参列を示す言葉になります。「参列」は、お通夜・葬儀どちらの場合にも使えます。
話をする時間は2~3分程度
喪主の挨拶は長すぎず短すぎず、そして簡潔でわかりやすい文章にしましょう。時間にすると2~3分程度、長くても5分以内には終えるようにします。特に会食の前の挨拶は出された料理が冷めてしまうため、短くするのが好ましいです。
大きな声ではっきりと話す
参列者全員に聞こえるよう、大きな声ではっきりと話すのが基本。葬儀では高齢の遺族もいるため、配慮しておきたいポイントです。マイクが設置されている会場では、できるだけマイクに口を近づけて話すようにします。
原稿を見ながら話すのは大丈夫?
喪主の挨拶の際、原稿を見ながら話すのは問題ありません。どうしても緊張する場ですから、原稿を持っておくと安心でしょう。
また、話の途中でつっかえてしまったり、言葉が出てこないことも。ですが、そんなに気負いすぎる必要はなく、故人への気持ちや参列者への感謝をきちんと伝えることが大切です。
家族葬の喪主の挨拶でタブーとされる言葉

通夜・葬儀の挨拶では、使わないほうが良い言葉や言い回しが存在します。会葬者を不快にさせる可能性もあるため気を付けましょう。
また挨拶中だけでなく、葬儀中は発言に注意し、以下の言葉は使用しないようにします。
- 「忌み言葉」(浮かばれない、死亡、生存中など)
- 「重ね言葉」(ますます、次々、いろいろ、わざわざなど)
- 「続き言葉」(引き続き、繰り返し、重ねて、今一度など)
- 「不吉な言葉」(消える、落ちる、終わりに、4や9などの数字など)
- 「直接的な表現」(死ぬ、急死、自殺、生きている時など)
忌み言葉
忌みを含む言葉として、不吉だと考えられている言葉です。親類や参列者を不安にさせる恐れがあるため、使わないほうが良いでしょう。
忌み言葉の例としては、「浮かばれない」「死亡」「生存中」などです。日常ではよく使う言葉ですが、葬儀中や挨拶で言うと不幸が続いてしまうと考えられています。
重ね言葉
重ね言葉とは、不幸が度重なると連想させる言葉です。「ますます」「次々」「いろいろ」「わざわざ」などの言葉は、葬儀中に使うと不吉なことが重なる表現とされています。
続き言葉
続き言葉は重ね言葉と似ていますが、不幸が続くと連想させる言葉を言います。「引き続き」「繰り返し」「重ねて」「今一度」などの言葉は、これからも不吉が続くという意味となります。
不吉な言葉
不吉な言葉ももちろん避けるようにします。たとえば「消える」「落ちる」「終わりに」などのほか、4や9などの数字も不吉とされています。
4は「死」、9は「苦」を連想させるため、できる限り使用を避けます。
直接的な表現
死や苦しみ、生存に関係する直接的な言葉もNG。例として「死ぬ」「急死」「自殺」「生きている時」などがあげられます。このような言葉は故人に対して失礼だと考えらています。また、参列者にも不快な思いをさせる可能性があります。
僧侶への挨拶

仏教式で葬儀を執り行う場合は僧侶の方、他の宗教式で行う場合でもそれぞれ宗教儀礼を取り仕切る立場の人がいる場合は、葬儀場に到着した時にまず喪主から挨拶に行くのがマナーです。
仏式の葬儀の場合、僧侶・お坊さんに挨拶に行くタイミングは、次の3回が多いようです。
- 枕経をお願いするとき
- 告別式で僧侶を迎えるとき
- 告別式を終えて僧侶を送るとき
また、挨拶のタイミングがよくわからない場合は、葬儀社の担当者に聞いてもかまいません。
一般的に菩提寺の僧侶に葬儀の読経をお願いしますが、菩提寺がない、遠いなどの場合は「お坊さん手配サービス」などを利用します。
枕経をお願いするとき
枕経とは遺体を安置場所に移動させた後に最初に読んでもらうお経のことです。枕経のために僧侶が訪れたときに挨拶を行い、控室に案内します。
枕経をあげるタイミングは、亡くなった後すぐ、通夜の前など、地域によっても異なります。時間帯などを決めてあげるものではないので、亡くなってからできるだけ早いタイミングで行われます。また、最近では枕経をお願いしない場合もあります。
挨拶例は以下のとおりです。
本日はお忙しいところ御足労いただき、誠にありがとうございます。
ご指導のほどよろしくお願いいたします。
告別式で僧侶を迎えるとき
告別式が始まる前、遺族と僧侶の顔合わせの場で挨拶をします。葬儀社が挨拶の時間を設けてくれることがほとんどです。特に初めて僧侶と会う場合は、これからお世話になるためきちんと挨拶をしましょう。
また、お布施を渡すタイミングでもあります。もしこのときに渡せなければ、告別式後の挨拶のときに渡します。
挨拶例は以下のとおりです。
本日はご多忙のなか御足労いただき、誠にありがとうございます。
何分にも不慣れでございますので、ご指導のほどよろしくお願いいたします。
些少ではありますが、お納めください。
告別式を終えて僧侶を送るとき
告別式の後、葬儀が滞りなく終えられたことの感謝を伝えます。また、今後も納骨や法要でお世話になる場合は、今後の付き合いについてもお願いしておきましょう。
挨拶の例は以下のとおりです。
本日はご多忙のところ、大変ご丁寧なお勤めをたまわりありがとうございました。
おかげさまで無事に葬儀を執り行うことができました。
葬儀の担当者へ挨拶は必要?

これから葬儀でお世話になるから…と葬儀社の担当に挨拶が必要と思うかもしれません。しかし担当者への挨拶は必須ではありません。
また、挨拶の際に菓子折りや現金を手渡すのはNGです。そのような金銭は心づけと呼ばれ、地域によってはそのような風習が残るところもあるようですが、通常心づけは必要ありません。
逆に現金を受け取ってしまうようであれば、その葬儀社は信頼できません。ほとんどの葬儀社では金銭を受け取らないよう指導されているからです。「心づけは受け取らない」と示されている葬儀社に依頼するようにします。