稲荷神社とは?お稲荷さんは何の神様?由来とご利益を解説

小林憲行【記事監修】
小林憲行

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  • お稲荷様の語源は「稲が生る=いなり」で稲の豊作を願って祀られた神様
  • 五穀豊穣や豊作祈願に加え、商売繁盛や縁結びなどご利益が幅広い
  • 狐はお稲荷様の祭神ではなく、稲荷神の御遣いとなる神使

稲荷神社とは、日本の各地に見られる神社で、赤い鳥居を構え、境内に狛狐があることでも知られています。その数は3万社とも4万社とも言われており、江戸時代にはその多さから「伊勢屋、稲荷に、犬の糞」と言われていたほどです。お稲荷様として古くから多くの日本人に慕われてきたお稲荷様。この記事では、稲荷神社の由来やご利益、狐との関係などを詳しくご紹介します。

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お稲荷さん(稲荷神)は渡来系の秦氏が奉じた神様

お稲荷様は、その名の通り稲に関する神様です。そもそも稲とは「命の根」を意味します。その稲が生る=いなり、ということから、お稲荷様と名づけられました。

この神様は稲の豊作にご利益があると崇敬されていますが、稲作自体が大陸から伝わって来た技術です。そのため、お稲荷様のルーツも、大陸に由来しているとされます。もともとは渡来系の部族である秦氏が氏神として奉る神様でしたが、それが日本に伝わって土着の神道と融合し、今の形となったといわれています。

稲荷神社・お稲荷さんは日本で1300年の歴史を持つ

日本の歴史上、初めてお稲荷様が登場するのは西暦711年の2月。『山城国風土記(やましろのくにふどき)』に、秦伊呂具がお餅で作った的に弓を当てたところ、そこに宿っていた神霊がお餅を白鳥に変化させ、近くの伊奈利山に飛び、降り立った所に稲が実ったという「もちと白鳥の伝説」が残っています。

秦氏はこの神霊を祀るために、山に神社を創建し、それが今につながる稲荷神社の総本社、伏見稲荷大社の由来です。この風土記には、「伊奈利(いなり)」と書かれていますが、892年に菅原道真によって編纂された史書には「稲荷」という文字が記されています。このほか「稲成」「稲生」と書いて「いなり」と読む神社もあります。

伏見稲荷大社では、五穀を司るとされる宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)を主な祭神としています。それ以外にも、佐田彦大神(さたひこのおおかみ)、大宮能売大神(おおみやのめのおおかみ)、田中大神(たなかのおおかみ)、四大神(しのおおかみ)を祀っており、合わせて「五柱の神」と称されています。

全国にある稲荷神社は3万社とも4万社ともいわれていますが、その多くが伏見稲荷大社からこれらの神様が勧請(かんじょう)されているのです。

仏教系の稲荷神社・お稲荷さんも存在する

全国のお稲荷様は、神道系と仏教系に大きく分けることができます。

神道系は伏見稲荷大社をはじめ、茨城県の笠間稲荷神社、佐賀県の祐徳稲荷神社などがあります。一方、仏教系のお稲荷様は、愛知県の豊川稲荷(圓福山妙厳寺)や、岡山県の最上稲荷(最上稲荷山妙教寺)があります。

豊川稲荷では、豐川吒枳尼眞天(とよかわだきにしんてん)という神様を祀っています。吒枳尼眞天はもともとはインドの鬼神でしたが、仏教に帰依して、仏法を守る神様になったと言われています。この吒枳尼眞天が稲穂を担って白い狐にまたがっていることから、豊川稲荷として広まったそうです。
最上稲荷では、本尊に左肩に稲を担って、右手に鎌を持ち、白い狐に乗った姿であらわされた、最上位経王大菩薩を祀っています。

稲荷神社・お稲荷さんが庶民に広まったのは江戸時代

お稲荷様の信仰が大きく広まったのは、江戸時代です。それまでは穀物の豊作を願って祀る神様でしたが、幕府の改革などで名高い田沼意次が自分の屋敷にお社を祀ったことで運が開けたという評判が広まったといわれています。そこから、ほかの武士たちもそれを真似て祀りはじめました。さらに、庶民である商人たちもそれにならい、商売繁盛や家内安全の神様として信仰の対象としたのです。木造建築が密集した江戸では火事も多かったため、家屋やお店を、そうした災害から守ってくれる神様としても祀られました。

これらの様子が参勤交代で江戸に来ていた各地の大名の目に留まり、稲荷信仰は全国に広がっていったのです。そのうえ、伏見稲荷大社の稲荷大明神は、以前から朝廷より神階のひとつである正一位の位を受けていました。その神霊を勧請する各地の稲荷神社もまた、同じ格式を得られることが普及の後押しになったと考えられています。

お稲荷さん(稲荷神)は狐の姿ではない

お稲荷様には狐の像がつきものですが、祭神は狐の姿をしていません。狐は稲荷神の御遣いとなる神使なのです。

狐には昔から人の寿命や作物の収穫量などの未来が分かり、人の精気を奪う、あるいは人を化かすなど、神秘的な動物として扱われてきました。たれ下がった稲穂が尻尾に似ていることや、米を食べるネズミを退治すること、また、稲荷神社の祭神である宇迦之御魂大神の別名が御饌津神(みけつかみ)と言い、これが漢字で「三狐神」と書けることなど、お稲荷様の御遣いが狐となった理由には、諸説あります。

また、狐は春になると山から人里に降りてきますが、秋になるとまた山に戻ります。同様にお稲荷様も田植えの時期に現れて、秋の収穫が終わると山に戻って行くと言われ、その類似性から、お稲荷様と狐を結びつけられました。

いずれにしても、狐は昔から人間の暮らしや稲作と関わりが深く、信仰の対象でもあったため、お稲荷様の御遣いに選ばれたのでしょう。

お稲荷さん(稲荷神)のご利益とは

お稲荷様のもたらすご利益は、歴史の流れとともに非常に幅広いものとなりました。もともとの言われである五穀豊穣や豊作祈願に加え、現在では祀る人や場所により、さまざまなご利益が得られると言われています。

中でも代表的なものが商売繁盛です。伏見稲荷大社では、鳥居に多くの企業の名前が刻まれており、今でもデパートなどの商業施設の屋上にある神社は、ほとんどが稲荷神社です。さらに、芸事や縁結び、衣食住や家内安全、所願成就など、多くのお願い事が叶うとされています。

また、神社によって境内にある狛狐が咥えているものに違いがあり、その種類によって授かるご利益も異なります。例えば、巻き物を咥えている場合は知恵や学業を、丸い珠の場合は五穀豊穣を、稲穂やカギは稲そのものや稲倉のカギを表すため、稲の豊作にご利益があります。

稲荷神社・お稲荷さんは日本中で親しまれている神様

お稲荷様は日本中で親しまれている神様ですが、あらためて由来を辿っていくと、その魅力は尽きません。五穀豊穣はもちろん、仕事や家族に関することでもお願いできます。全国にたくさんあって、いろいろなお願いを叶えてくれる、いつでも頼れる身近な神様として信仰を集めています。

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