白骨の御文とは

小林憲行【記事監修】
小林憲行

記事監修小林憲行

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「白骨の御文(おふみ)」とは、浄土真宗において、葬儀をはじめ、初七日、四十九日、一周忌などで読まれる重要な文章です。

浄土真宗の中興の祖ともいわれる第八世蓮如上人は、「御文章(ごぶんしょう)」または「御文」といわれる浄土真宗の教えをわかりやすく信者に伝えるために簡単な文章で書き示した手紙を80通ほど残しています。
蓮如上人が布教のために簡単な言葉で書いた「御文」の中でも、この「白骨の御文」は教義ではなく世の無常について書かれています。「朝には紅顔あって夕には白骨となれる身なり」などの名文としても名高いこともあり、宗派を超えて多くの人々に親しまれています。

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浄土真宗について

浄土真宗は、仏教の流派のうち浄土教の一つです。浄土宗の開祖である法然の弟子の親鸞聖人が浄土真宗を開きました。その教義は、阿弥陀如来に帰依すると決めた時点で、誰でも仏になることが約束されると説きます。したがって、他流派とは次のような点が違ってきます。

他の流派では、仏門に入るときに戒律を授ける授戒などの儀式を行うことがありますが、浄土真宗では在俗のものがその宗門に入り、仏の弟子となるための誓いの儀式として帰敬式(ききょうしき)を行います。信心の決意が大事になるためです。
また、他の流派では、基本的に僧侶は肉を食べることや妻を持つことができないのに対し、浄土真宗では「肉食妻帯」が許されています。浄土真宗の場合は阿弥陀仏によりすべての人が救済されると考えられているので、読経や修行を経なくても信心さえあればすぐ成仏できるとされるからです。

>>浄土真宗の帰敬式とは

御文の制作者、蓮如上人とは?

蓮如上人は本願寺第7世存如上人の長子として生まれました。

当時は戦国時代で、本願寺は経済的に非常に厳しく寂れた状態にあり、上人はそんな貧しい生活の中、苦労しながら親鸞、覚如などの教学を修学しました。
本願寺8世を承継したのちは、積極的に布教活動を行いました。上人の布教方法は独自で、この中でも教義をわかりやすい手紙の形で書き記した「御文」が有名です。御文は大谷派の呼び方で、本願寺派では「御文章(ごぶんしょう)」、興正派では人に読むことを勧めることから「御勧章(ごかんしょう)」と呼んでいますが、80通5巻にも上ります。仮名を用いて簡単な言葉で書かれているにも関わらず、名文であるために門徒以外の一般の人にも知られています。のちに圓如により編纂されました。
この御文は、識字率が低かった当時の庶民の間に浄土真宗の教義を広め、本願寺が全国的な教団となるのに大きく寄与したことから、蓮如上人は今日では「浄土真宗開立の祖」と呼ばれています。

白骨の御文

白骨の御文は、浄土真宗の葬儀や通夜において必ずといってよいほど読まれる重要なものです。
「それ、人間の浮生なる相をつらつら観ずるに、おほよそはかなきものはこの世の始中終、まぼろしのごとくなる一期なり。」という文章から始まり、「朝には紅顔ありて、夕には白骨となれる」などのフレーズが有名な、5帖目16通の御文です。5帖ある御文のうち4帖までは時系列で編纂されていますが、5帖目は年代が不明なものを集めていて、この白骨の御文は書かれた年代がわかっていません。

その内容は、人の世の無情であること、今は血色の良い「紅顔」であってもわずかな時間のうちに死んで白骨となってしまうほどに命がはかないものであること、そのときに嘆き悲しんでももはや意味がないこと、命の大切さに気づいて阿弥陀如来を頼り、念仏を唱えるべきことが書き記されています。他の御文が教義についてのものであるのに対し、白骨の御文だけは世の無常をうたうものとなっています。

蓮如上人はわずか1年半の間に5人の家族を失いました。白骨の御文は、蓮如上人の娘の見玉尼が25歳で若くして亡くなった時に書かれたものと言われています。このような説がある一方で、突然の不幸に見舞われた海老名五郎左衛門に向けて書かれたものであるという説もあります。このように制作の背景については諸説あり、いずれも真偽が明らかになっていません。とはいえ、その無常観に心を打たれ、浄土真宗の門徒だけでなく他の宗派の人々にも広く知られ、親しまれてきました。

浄土真宗の葬儀

浄土真宗の葬儀の基本的な形式は、蓮如上人の時代に制定されたといわれています。

浄土真宗の葬儀の特徴は、葬儀の際、仏教の葬儀で一般的に読まれる「般若心経」を読まず、法話とともに上記の「白骨の御文」を拝読するという点があります。また、「冥福を祈る」という言葉を使わない、お焼香をおしいただかないなど、一般的な仏教のお葬式のマナーとは異なる部分も多いので、浄土真宗の葬儀に出席の際には留意が必要です。

>>浄土真宗本願寺派の葬儀の特徴 – 流れ・マナー

>>真宗大谷派の葬儀の特徴 – 流れ・マナー

まとめ

白骨の御文は、浄土真宗の葬儀やお通夜の際に拝読される特別な文章です。浄土真宗の葬儀では一般的な仏式の葬儀とは異なり般若心経を読まないこと、焼香をおしいただかないこと、「冥福を祈る」という言葉を使わないことなどの特別な作法があります。
葬儀について詳しく知りたいまたは相談したいという方、見積もりだけでも欲しいという方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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