【終活映画】誰かがそばにいるということで力が湧いてくる『僕たちのラストステージ』

ハリウッドの人気お笑いコンビが織りなす、愛情にあふれた映画でした。

映画がサイレントだった時代からハリウッドで活躍をした伝説のお笑いコンビ、ローレル&ハーディの、晩年の実話に基づいた映画です。さてこの名前にはなかなか記憶がないのですが、インターネットで検索をするととてもなじみのあるアニメキャラクターが登場しました。「極楽コンビ」の画像の記憶はかすかに残っている気がします。また、主演映画は100本を超えるそうで、今回の映画をきっかけにして改めて観たい映画にリストアップしたくなるような。

映画はこの二人の活躍を尊敬するようにシンプルですが、とても暖かく心に残る作品に仕上がっていました。

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過去の人からの復活

人気の絶頂から年齢を経て、イギリスでステージツアーに出た二人ですがその時はすでに過去の人。小さな会場でも空席がありました。それでも二人は楽しそうにステージを務めているのがわかります。それは、行く先々で出会うファンの存在や温かい言葉。

「ああ、こいつと一緒にいるとこんなにたくさんの幸せがあるんだな」

映画の中では存在しないセリフですが、二人の表情からそんな言葉が感じられる思いがします。

ツアーは回を重ねるごとにファンを呼び、会場も大きくなりチケットは売切れるようになってきます。ローレルにはこのツアーの収益でもう一度映画を作りたいという思いがありました。またその思いはハーディも同じで、年老いた二人にとっては体力のいるツアーの一つのモチベーションでもあったのです。ところが、ツアーの途中で映画の企画が採用されないことを悟ったローレルは落胆をしながらもそのことを伝えないまま、ハーディとのツアーを続けます。確かに映画は目標ではありましたが、それよりもやはり二人でステージに立つことの意味が大きかったのでしょう。

 

互いの不満は妻の存在から発覚

そんなにも仲のいい二人でしたが、そのツアーにそれぞれ妻が帯同するようにアメリカからやってきます。妻の到着にはすでにマスコミにも取り上げられるほどの話題でした。まさに時の人になっていたのです。そんな二人の丁丁発止は大人気であり、ある日パーティ会場でのほんの少しの言葉の違いが、言い合いになります。しかし大勢の前でののしりあうような喧嘩のやり取りまでが、二人のコントのように周りには受け止められます。まさに人気と円熟味のある二人だったのでしょう。

喧嘩の原因は、二人がそれぞれに妻に漏らした愚痴のような他愛もないものだったのですが、その場の話題になりその真意を確かめ合う事から、過去のすれ違いまでが今に至ったようです。二人が愛したローレル&ハーディというコンビは形だけのものになり、そのストレスからハーディが倒れてしまいいます。

友情と愛情、この事に気が付くのに時間はかかりませんでした。ハーディは医者から静養の時間を指示されると同時に引退を勧められていました。

ハーディの体力の回復まで待とうというローレルと、すでに引退を決意したハーディでしたが、それを伝え合う会話は互いの言葉を飲み込むようにして、丁寧に慎重に大切なものを壊さないようにという雰囲気でいっぱいです。そんな会話で喧嘩は本心ではなかったことを伝えあうのです。ハーディの復帰をあきらめたローレルは別のコンビでステージに挑戦しようとするのですが、これもあきらめステージを去ろうと決意します。そんなローレルを心配したハーディは、病気の体を心配する妻の反対を押し切って残りのツアーステージに立つのです。

「人はひとりでは生きてゆけない」

ステージの上ではやはり躍動感にあふれるローレル&ハーディ。ハーディの体を気遣いながらのローレル、そんな心配を感じながら気丈にふるまうハーディのステージ、実に楽しそうな二人です。

そんな毎日でふとローレルが隠していた映画の企画が無くなったことを伝え謝ります。ところがハーディはそのことを「知っていたさ」と答えるのです。このシーンで面白いのは、本来映画のためにと思っていたツアーでしたが、二人は何よりも二人で演じている時間が楽しかったということです。そして映画の中ではハーディがそれを知るシーンもなく、ハーディがローレルのためにとっさについた小さなうそだったかもしれないということでした。

そして、ラストステージの幕は上がります。

 

「人はひとりでは生きてゆけない」

私もそんな風に、終活セミナーの中で話をすることがあります。もちろん生きていけないわけではないでしょうが、そこに誰かがいるということでいくつもの力が湧いてくることがあるはずです。それは家族とは限りません、親しい友人もあれば、暮らしの中の隣人もあるでしょう。施設からくる担当の人かもしれません。ほんの少し、いつもよりその会話や関係を感じてみるのもいいのかもしれません。

たった一人という言葉で孤独を感じるよりも、「ああ楽しいね」「おいしいね」と言ってうなずいてくれる人がいると少し元気になれそうな。それが「もしかしたらとても大切な人かもしれないですよね」と伝えます。

今回ご紹介した『僕たちのラストステージ』。「ああ、本当に活躍をしていた二人なのだ」という、胸いっぱいの感動で映画鑑賞の満足感にひたれるお勧めの作品です。

今回ご紹介した映画『僕たちのラストステージ』

監督:ジョン・S・ベアード

出演:スティーヴ・クーガン、ジョン・C・ライリー ほか

2018年/イギリス・カナダ・アメリカ/英語/カラー/スコープ/DCP5.1ch/98分

原題:Stan&Ollie 日本語字幕:堀上香

配給:HIGH BROW CINEMA

公開:2019年4月19日(金)より 新宿ピカデリー他全国順次ロードショー

© eOne Features (S&O) Limited, British Broadcasting Corporation 2018

この記事を書いた人

尾上正幸

(終活映画・ナビゲーター / 自分史活用推進協議会認定自分史アドバイザー / 株式会社東京葬祭取締役部長)

葬儀社に勤務する傍ら、終活ブーム以前よりエンディングノート活用や、後悔をしないための葬儀の知識などの講演を行う。終活の意義を、「自分自身の力になるためのライフデザイン」と再定義し、そのヒントは自分史にありと、終活関連、自分史関連の講演活動を積極的に展開。講演では終活映画・ナビゲーターとして、終活に関連する映画の紹介も必ず行っている。

著書:『実践エンディングノート』(共同通信社 2010年)、『本当に役立つ終活50問50答』(翔泳社 2015)

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