形見・形見分けとは?タイミングとマナー、注意点を解説

小林憲行【記事監修】
小林憲行

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  • 形見とは、遺品のなかでも故人の思い入れが深い品物
  • 形見分けは、形見を思い出の品として故人の関係者で分けること
  • アクセサリーや小物類、衣服、収集品などが形見分けの品の定番

形見とは、故人の思い出の品。形見分けは、形見を故人の近親者で分けることです。故人が身に着けたり、大切に保管したりしていた品物を受け継ぐことで、故人を偲び、供養するのが目的。やみくもに配ったり欲しがったりせず、故人の気持ちを第一に考えて行いましょう。

この記事では、形見分けのタイミングやマナー、注意点を解説します。

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形見の品とは?意味と遺品との違い

形見の品は、故人の思い入れが深い品物のこと。故人が所有していた遺品のなかでも、長く愛用していたり、忘れられない思い出があったりする品物が形見になります。アクセサリーや衣服、家具、故人が収集していたコレクションなどが多いです。

一方の遺品は、故人が所有していた品物すべてを指します。日用品や消耗品なども含まれ、価値の低い品物がほとんどです。

形見は何がいい?形見に適した品物

形見に適した品物形見に適さない品物
アクセサリー
小物類
衣服
収集品
家具
家電
利用できない品物
用途がわからない品物
現金・金券
生き物

形見に適しているのは、故人が日常的に愛用していたり、長い間大切にしていたりする品物

指輪やネックレス、ブローチなどのアクセサリーが代表的で、メガネや文房具などの小物類、着物や礼服などの衣服もよく選ばれています。その他、絵画や骨董品、レコード、古本などが趣味だった場合、コレクションを形見として残す故人も。家具や家電も、形見の品にして問題ありません。

一方で、傷んでいたり故障していたりして利用できない品物や、そもそも使い道がわからない品物は形見の品では避けるべき。現金・金券は財産分与に該当するため、生き物は受け取る人の許可が必要になるため、形見の品にはふさわしくありません。

形見分けとは?故人の近親者で形見をわけること

形見分けとは、故人が残した形見の品を、思い出の品として遺族や親族、故人と親しかった方でわけること。残された側の心の拠り所となるだけでなく、形見を通して故人を偲ぶことで供養にもつながります。

そもそも形見分けは、仏教を開いたお釈迦様が、弟子に自分の遺品を渡したという言い伝えからはじまったんだそう。その他、「身につけていたものには魂がこもっている」という思想から故人の形見分けが慣習化し、今に受け継がれているとも言われています。

形見分けは、故人から見て目上の人には贈らないのが通例です。ただ故人や相手から希望があって、約束したうえで渡すのであれば失礼にはあたりません。

形見分けと遺品整理の違い

前述したとおり、形見分けは、故人の思い入れが深い品物を血族や近しい人に贈ること。一方の遺品整理は、故人が残した品物をすべて整理し、故人の暮らしていた家や部屋をきれいにすることです。

遺品整理では、故人が大切にしていた品物だけでなく、日用品や消耗品など、日常的に使っていた品物も整理しなければなりません。故人の遺品を残すか処分するか判断して整理したあと、残した遺品のなかから形見の品を選び、形見分けをするご遺族が多いです。

形見分けと遺産分割の違い

遺産分割とは、相続人全員で遺産の分け方を話し合い、分配すること。形見は原則、財産的価値の低い品物を指していて、遺産分割の対象にはなりません

ただ形見の品が高額な場合は、形見分けの範囲を超えるとされ、相続財産とみなされます。遺産分割の対象になり、遺産分割までは相続人全員の共有財産となるため、注意してください。

宗教別!形見分けのタイミング

形見分けは、故人が信仰していた宗教によってタイミングが異なります。仏教、神道、キリスト教、宗教別の形見分けのタイミングはこちらです。

仏教:四十九日法要

仏教では、最後の忌日法要である四十九日法要を終えたあと、形見分けするのが一般的です。四十九日は忌明けにあたるため、遺族が喪に服す期間が終わり、日常生活にもどるタイミングで形見分けを行います。

神道:三十日祭または五十日祭

仏教における忌明けは、神道では「三十日祭」もしくは「五十日祭」にあたります。神道では、三十日祭もしくは五十日祭に形見分けするのが一般的です。

キリスト教(カトリック):追悼ミサ

キリスト教には形見分けの習慣がないため、明確な決まりはありません。ただ形見分けをする場合は、追悼ミサの場が選ばれることが多い様子。とくに30日目の追悼ミサで、形見分けがよく行われているようです。

喜ばれる形見分けに!形見分けのマナー

形見の品は、故人が愛用していた思い出深い品物がほとんど。日常的に使っていたり長く保管していたりすると、品物に劣化や故障があるかもしれません。強い思い入れがあるといっても、劣化や故障のある品物を渡すのは避けた方が無難です。

ここでは、形見分けをする前に配慮しておきたいマナーを解説します。

品物の手入れをしてから渡す

形見の品物は、渡す前に手入れをして、キレイな状態にしておきましょう。衣服やメガネ、アクセサリーなどは、身に着ける機会が多いぶん汚れやすいです。衣服はクリーニングに出し、メガネやアクセサリーはよく磨いて贈るようにしてください。

また時計や万年筆など、メンテナンスが必要な品物は正常に使えるか確認しておきましょう。時計は電池を、万年筆はインクを入れて動作確認します。

品物をリメイクする

渡す相手の好みやサイズが違う場合、品物をリメイクして贈るのもおすすめ。衣服を手提げや小物入れに縫いなおしたり、指輪のサイズを変更したりと、日頃使えるようリメイクする方が多いようです。

生き物・現金・金券は避ける

生前飼っていたペットを形見分けするのは、受け取った相手が困るかもしれません。事前に約束するのはもちろん、相手がペット可の物件に住んでいるか、ペットを飼える状況なのか確認してください。

また、現金や金券、それに準ずる品物は、財産分与に相当するため形見分けでは贈れません。

事前に価値を調べ、高価な品物は避ける

高額な品物は、相続税や贈与税の対象になる可能性があります。また贈られた側が負担に感じたり、金銭トラブルに発展したりするかもしれません。

形見を決めたら事前に価値を調べ、相手の負担にならない金額の品物を贈りましょう。

品物はそのままか、半紙に包む

形見の品を贈るときは、包装せず、そのまま品物を渡すのがマナーとされています。品物を裸で渡すのに抵抗があるなら、半紙で軽く包むのがよいでしょう。仏教の方は「遺品」、神道の方は「偲ぶ草」と表書きに書くと、より丁寧です。

形見分けに贈与税・相続税はかかるの?

家族が亡くなると、不動産や預貯金など資産価値のある遺産は分割され、相続人に相続されます。一方、遺産分割で資産価値がないと判断された品物は、相続人全員の同意を得たうえで形見分けします。

つまり形見分けは、資産価値のない品物が対象になるため、本来は贈与税・相続税がかかりません

ただし、形見分けした品物に資産価値があった場合は、贈与税・相続税が発生する可能性があります。宝石や貴金属はもちろん、絵画や骨董品、盆栽、着物など、一見して価値がわからない品物が意外と高額かもしれません。資産価値があるか判断できない品物は、安易に形見分けせず、一度専門家に鑑定してもらった方が安心です。

死んでいない・生前の形見分けはどうする?

亡くなる前に認知症になったり、病気で入院してしまったりすると、思い通りに形見分けできないかもしれません。そのため最近は、終活の一環として、生前に形見分けをする方が増えています。

生きている間に形見分けすることで、誰にどの品物を贈るのか、自分の意思を尊重できます。また、本人が渡すのですから、形見をめぐるトラブルが起こりにくいのもメリットです。さらに、受け取る側も品物を選択する余地が生まれ、形見に対する思い入れが強くなります。

トラブル・迷惑を防ぐ!形見分けの注意点

遺産分割協議のあと形見分けする

遺産分割協議とは、故人の相続人全員で遺産の分割について協議・合意すること。形見分けは、遺産分割協議で品物の価値を判断し、相続人全員の同意を得たうえで行わなければなりません。

遺産分割協議の前に形見分けすると、本来遺産として扱うべき品物を渡してしまい、トラブルに発展する可能性があります。形見分けは、必ず遺産分割協議のあとに行いましょう

相続人全員が納得できる形見分けにする

形見分けで一番多いのは、「誰が何をもらうのか」で揉めるトラブルです。
とくに宝石や貴金属など、金銭的な価値のある形見は注意が必要。故人が1つの品物を、複数の方に贈ると口約束していた事例も存在します。

価値の高い形見の品は、故人と血縁関係が深い人から順番に贈ると納得してもらいやすいかもしれません。また、誰もが欲しがっていて不満の種になりそうな形見は、棺に入れてしまうのもひとつの手。故人と一緒に形見を旅立たせるという名目で、事態を納められます。

品物の価値を明確にしておく

資産価値の高い品物は、相続税や贈与税の対象になるかもしれません
故人が趣味で集めていたコレクション品は、コレクターでないと価値がわからない可能性大。また、価値の高い美術品や絵画は、形見ではなく財産として分与する必要があります。

気づかぬうちに税金の支払いが生じたり、高額な財産を引き継いで周囲とトラブルになったりしないよう、事前に専門家に依頼して価値を明確にしておきましょう

形見分けは譲る相手のことを考えて

家族に不幸があると、訃報連絡や葬儀の手配、役所や銀行への届け出など、さまざまな手続きが発生します。心身ともに落ち着かない状況で、適切に形見分けするのは難しいかもしれません。とくに高額な形見分けの品は、贈与税や相続税が発生する場合があります。遺族だけで対処するのは手に余ったり、トラブルに発展したりする可能性もあるので注意が必要です。

形見分けをはじめ、遺産整理や相続に関してお悩みなら、専門家に相談してみるのがおすすめ。弁護士や税理士、行政書士などの専門家にまかせれば、安心して相続手続きを進められます。いい葬儀の姉妹サイト「いい相続」では、全国の士業探しをサポートしています。相談は無料で受け付けていますので、ぜひ一度ご利用ください。

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