死後離婚とは?相続年金はそのまま、姻族を解消する手続き

小林憲行【記事監修】
小林憲行

記事監修小林憲行

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【連載】シニアライフのリアル
この連載では、シニアライフにまつわる、人間関係、経済問題について、実際の生活者の方にヒアリングした結果を、個人の事情がわからないよう脚色し、ルポ形式でお伝えします。

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夫が死んだ

それは突然でした。いつもは朝食前に散歩に出る夫が起きてこなかったのです。
7時半をまわっても起きてこないので寝室を見に行くと、素人目にも既に息をしていませんでした。慌てて救急車を呼びましたが、時既に遅し、その後、警察の対応や子供達への連絡、葬儀の手配など、悲しむ間はもちろん、息つく間もありませんでした。

お墓、どうしよう

どうしよう、と言ったものの、主人は長男で継いだお墓がありますので、そちらへ主人の両親、ご先祖様とともに入りました。
これでホッと一息。といきたいところですが、私のお墓、どうしよう。

お墓に入りたくない

まさか夫がこんなに突然逝ってしまうなんて思っていませんでした。
こんなことならもっとちゃんとお墓について話しておくべきだった、と今更ですが後悔しています。
もっといろんな話をしておけば良かった、子供達も独立したのでもっといろんな場所へでかければ良かった、なんて後悔よりも今の私にはお墓の問題が一大事です。

どこにでもいる普通の夫婦

私は特段夫と仲が悪くも良くもない、どこにでもいる普通の中年夫婦だと思います。
不平不満はありつつも、それなりに夫婦として三十数年やってきました。
子供達も独立して立派にやっています。
愛しているなんて言葉はちょっとしっくりきませんが、夫のことは大切に思っていました。
それでも、私は夫のいるお墓には入りたくないのです。

私は姑からされたことを忘れない

二十歳そこそこで嫁いだ時、私たち夫婦は夫の両親と同居していました。
若く至らぬ点が私にもあったのかと思いますが、まぁひどい嫁いびり。
お出汁の取り方から、料理の味付け、洗濯物の干し方、たたみ方、もう典型的なものは一通り経験したと思います。
マイホームを持つまでの我慢と言い聞かせてなんとか耐え忍んだ4年間でした。
二人目の子供をストレスからか流産してしまったことをきっかけに、なんとか夫を説得し、マイホームを持つより先に実家を出ました。
そこからは夫も気を遣ってくれ、付かず離れず、長男の嫁としては失格だったかもしれませんが、ほどよい距離で過ごさせていただきました。
正直、姑の体が衰え入院している時には、嫁いだ頃の行いについて遠回しですがお詫びをされたこともありました。
しかし、そのお詫びさえも姑が気持ちよく死にたいためだけの自己満足のお詫びで、私への気遣いや謝罪の気持ちなんてなかったんだと思います。
例えあったとしても、私は受け入れることはできません。

死後離婚という選択

夫が亡くなったことで、自分のお墓の問題が現実味を帯びてきました。
やはり、どう考えても私は姑と一緒のお墓には入りたくありません。
夫が亡くなった今、もうこの家に未練はありません。
私だけ別に個人のお墓を設けることも考えましたが、いっそこの家から籍を抜きたいという気持ちがどうしてもおさえられなくなりました。
死後離婚と言うのだそうですね。こんなことになって初めて知りました。
それくらいまだ馴染みのないものなのかもしれません。
夫に不満はありません。感謝もしています。それでも、私は死後離婚という選択をすることを決めました。

先に死んでくれて良かった

気持ちが決まれば手続きを済ませるのみです。
夫の親族とは特に話し合いはしませんでした。
お墓も何もかも、もうあちらのお家でいいようにやっていただければと思います。
子供達も最初は驚いていましたが、お母さんが決めたことならと、反対はしませんでした。
とにかく私は籍を抜き、清々しています。
不謹慎な話ですが、夫が先に亡くなってくれて良かったと思います。
もし自分が先に死んでしまい、あのお墓に入れられていたかと思うとゾッとします。
夫には感謝してもしきれません。
変な話ですが、籍を抜いて、夫への感謝は増したように思います。
夫婦という形ではなくなりましたが、籍を抜いてやっと本当の意味で夫を慈しみ送ってあげることが心からできた気がします。

私のお墓はというと、実家のお墓に入るか、私のお墓を準備するかはまだ決めていません。
これを機にしっかり自分のお墓についても考えてみようと思います。

死後離婚とは

結婚は個人同士の関係なので、本来は片方が死んでしまったら、離婚届などを出すことは出来ません。しかし、もし死んだ相手の親が生きているなど、義理の関係があったときには、扶養の義務などが残ります。そういった関係を望まない場合、「姻族関係終了届」を出すことで、それらの関係を解消することが出来ます。離婚したことと同じ効果があるので、死後離婚と呼ばれています。一方で、離婚ではありませんので、故人の遺産はそのまま相続できますし、自身の年金なども従来通り受け取ることができます。もちろん、義理の親の遺産を相続することはできなくなります。

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