家紋とは、日本で古来から伝わる、家系・家柄・血統などを表す紋章のことです。家ごとに代々伝わっていることが多く、その種類は、日本全国で、4,000以上とも5,000以上とも言われています。
現代では家紋を意識する機会はあまりありませんが、葬儀の際には、喪服の着物だけでなく、仏壇、お墓、参列者への返礼品など、必要になる場面も多くあります。
目次
喪服に入れる、五つ紋の意味とは?
和装の喪服を作る際には、一般的に、「五つ紋」と言って、5ヵ所に白抜きの家紋を入ます。背中に一つ(背紋)、両胸に一つずつ(抱き紋)、両袖の外側に一つずつ(袖紋)の合計5つです。この五つ紋が入っているのは、着物の中で最も格が高い第一礼装です。
五つの紋にはそれぞれ意味があり、背紋はご先祖様、抱き紋が両親、袖紋が兄弟姉妹・親戚を表しています。それぞれ自分の血筋を表していることから、自分がどういう者か紹介する意味でも、喪服に家紋を入れると考えられます。また、先祖から守られるという「お守り」の意味も込められているそうです。
女性の喪服にはどの家紋を入れる?
では、喪服にはどの家紋を入れたらよいのでしょうか?
一般的に、結婚前の女性が嫁入り道具として喪服を仕立てる場合は、実家の家紋を入れます。「実家で作って持たせてもらいました」という意味を込められますし、縁起のよい話ではありませんが、葬儀で親族が並んだ際、誰が血縁で、誰が嫁かが一目で分かるという意味合いがあると言われています。また、離婚した場合でもそのまま着用することが可能です。
結婚してから喪服を仕立てる場合は、嫁ぎ先、つまり夫の家の家紋を入れるのが一般的です。ただし、これらに明確な決まりがあるわけではありません。どの家紋をつけるかは、地域の風習などによっても変わってきます。実家や嫁ぎ先などとよく相談して、皆が納得のいく家紋を入れるとよいでしょう。
西日本に多く伝わる、女紋とは?
どの家紋をつけるかは地域によるとお伝えしましたが、特に「女紋」のある地域では注意が必要です。家によっては、家紋が一つではなく、複数の家紋が伝わっていることもあります。その中でも、母から娘へ、女性のみに代々受け継がれるのが女紋です。女紋は、所属する家の家紋とは全く別物であることも多いようです。女紋の風習は、関西・瀬戸内海沿岸など西日本の地域で多く残っています。これは、西日本ではかつて婿取りも盛んだったこと、女性の権利が強く主張されていたことなどが理由だと言われています。関東をはじめとした東日本では女紋の風習はあまりありません。
喪服の家紋は、入れ替えも可能!
一度喪服に家紋を入れてしまったら、入れ替えることはできないのでしょうか?
喪服の家紋は、専門業者等に依頼すれば、入れ替えることが可能です。喪服は度々着るものではなく、一度仕立てれば長く使えるものですから、母から娘へ喪服を受け継ぎたい、実家の家紋から嫁ぎ先の家紋に変えたいなどという時に便利です。現在入っている家紋を消して、新しい家紋を入れるという作業になるので、数千円から数万円の費用が発生します。入れ替える際にも、親族などとよく相談して、慎重に行いましょう。
家紋は黒字に白抜きなので、長く保管しているうちに、湿気などで茶色く変色してしまうこともあります。人目に付きやすい部分ですので、汚れてしまった家紋を消してもう一度同じ家紋を入れなおすということも、同様のサービスで可能です。
家紋が分からない場合の喪服は?
いざ喪服を作ろうとした時に、家紋が分からないというケースもあります。
墓石や仏壇、袱紗などに描かれていれば分かりますが、それらがないと調べることが難しくなります。また、代々キリスト教の家系などでは、家紋自体がないこともあります。
家紋は戸籍などの法律に縛られているものではないので、どうしても分からない場合は、新しく決めることも可能です。また、同じ苗字の方から家紋を調べるという方法もあります。特にこだわりがなければ、「五三の桐」のような、全国的に共通と言われている家紋を入れるケースも多いようです。
レンタル喪服の家紋は?
喪服をわざわざ仕立てず、レンタルで済ませたいという方は家紋をどうしたらよいのでしょうか?よくあるのは、全国的に共通とご紹介した「五三の桐」を入れるケースです。レンタルショップには、既にこの家紋が入った喪服が用意されていることが多いです。また、「貼り紋」と言って、強力なシール状になった家紋を喪服に貼ることができる商品もあります。珍しい家紋の場合は、いざという時にすぐに調達できないこともあるので、あらかじめ貼り紋を用意しておくと安心です。
まとめ
喪服は一生に一度の高額な買い物でもあることから、家紋も間違いのないものを選びたいものです。これといった決まりはなく、地域や家柄によっても異なるものなので、実家や嫁ぎ先の年長者とよく相談して決めるようにしましょう。家族で相談しても決まらない、喪服の家紋について分からないことがあるなど、お悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。