御詠歌(ごえいか)とは

2018年11月4日

御詠歌とは、僧侶ではない一般の信者が寺院や霊場巡礼の際に唱える歌のことです。御詠歌の多くは三十一文字からなる和歌に節をつけたもので、一般的に鈴(れい)や鉦(かね)を鳴らしながら詠唱します。旋律は一節のみと単調で、哀愁を帯びたものが多いです。四国八十八所や西国三十三所をはじめとする各巡礼地の霊場には、それぞれのご本尊を讃えるなどの意味を持つ御詠歌があります。

ここではその御詠歌についてご紹介します。

御詠歌とは、インドにはじまり、中国を経由して日本に伝わったといわれています。サンスクリット語の「凡讃」(ぼんさん)や漢語の「漢讃」(かんさん)と関係があります。どちらも仏様やその教えを伝え導いた師を讃美する詩句で、日本ではこれらにならって奈良時代に日本の言葉でつづった「和讃」が生まれました。

平安時代中期になると、僧など限られた身分の人のみでなく、広く民衆に教えを伝えるための和讃も作られるようになりました。そして、教化(きょうげ)や法会(ほうえ)の際に、七五調の連句である和讃に旋律をつけて詠唱します。これが後の時代に承継され、今日の御詠歌に通じています。

西国三十三所のものが最古?

和讃がたくさんの人の手によって作られて流行していた平安時代、時を同じくして花山法皇が西国三十三所巡礼を再興しました。この時に花山法皇が各札所で詠んだ和歌に、後世の巡礼者が節をつけて巡礼歌としたのが御詠歌の起源とされています。

現代では三十一文字の和歌に節をつけたもののみを御詠歌という場合と、和讃も併せて御詠歌という場合があるようです。和歌である御詠歌のほとんどは詠み人知らずで、広く庶民にもわかりやすい歌詞であり、歌詞から仏様に寄せる人々の願いを読み取ることができます。

それぞれの流派の御詠歌

現在は多くの宗派や宗派内の流派ごとに御詠歌が存在し、今もなお作られ続けています。代表的な流派に「大和流」がありますが、これは大正時代に各地で伝わる御詠歌の節を集め、編集したことを契機に成立しました。大和流の成立は、近代的な理論に基づく仏教音楽の発展にも寄与しています。

真言宗の御詠歌

ちなみに大和流は真言宗系の流派に属しているとされていますが、実際は特定の宗派には属さない組織です。大和流の成立後、真言宗の流派として高野山真言宗の金剛流、智山派の密厳流、豊山派の豊山流、東寺派の東寺流、以上4つの流派があります。宗祖空海の教えや、それぞれの本尊の徳について歌います。特に金剛流は、西洋音楽でいう長調の曲が多いという特徴を持っています。

臨済宗の御詠歌

また臨済宗系には妙心寺派の花園流、南禅寺派の独秀流、臨済宗東福寺派の慧日流、円覚寺派の鎌倉流、建長寺派による鎌倉流があります。こちらの各宗派・流派には御詠歌を通じて禅の教えに親しむという目的があり、南禅寺派の独秀流には詠唱とともに琴と尺八を奏でるという光景が見られます。

そのほかの宗派の御詠歌

そして浄土宗では吉水流と西山流、天台宗では叡山流、曹洞宗では梅花流があります。梅花流は異なる宗派でありながら、宗風に適しているという理由から真言宗の智山派密厳流の流れを汲んでいます。これらの流派のほとんどが昭和初期から戦後間もない時期に立ち上がりました。

ほかにも日蓮宗や浄土真宗などにも、それぞれの御詠歌があります。いずれの流派においても御詠歌は仏様への願いをあらわしていたり、宗祖など高僧の教えに思いを馳せたりした歌詞となっています。

葬儀で御詠歌を歌う慣習

御詠歌は多くの場合、霊場巡礼やさまざまな法会で歌われます。どのような法会で御詠歌を歌うかは宗派や慣習にもよりますが、近畿地方などでは死者の弔いに際しても御詠歌を歌う慣習があります。

親族が葬儀から四十九日まで毎夜御詠歌を唱え、お盆になると法要の参加者が皆で詠唱します。近年はこの慣習もずいぶん見られなくなりましたが、福井県内では一部寺院や農村部で「講」に所属する女性たちが葬儀の際に御詠歌を詠唱するしきたりが、現在も残っています。

「講」とは「念仏講」など、同じ仏教宗派に所属する地域住民の集まりです。葬儀で御詠歌を耳にする機会は確実に減ってきていますが、近畿地方あるいは福井県での葬儀に際しては、この慣習が残っていることを心に留めておくとよいでしょう。

 

また、近年は四国八十八所をはじめ、日本各地で盛んに霊場巡礼が行われています。ご自身が霊場巡礼をしていなくても、何かの折に触れて寺院に立ち寄った際に、巡礼者たちが御詠歌を詠唱する場に居合わせるかも知れません。そうした機会があれば、節回しや歌詞に耳を澄ませてみると御詠歌の風情を楽しめることでしょう。

まとめ

御詠歌は一般の信者が寺院や霊場巡礼の際に唱える歌ですが、近畿一円や福井県では葬儀の際にも歌われることがあります。しかし、こうした慣習は、現代ではあまり見られなくなってきたため、葬儀の際の扱い方に悩んでしまう方もいるかと思います。このように全国各地の慣習についてお悩みの方や、葬儀に関するお悩みがある方は、是非一度お問い合わせください。

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